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まさか一方的に吐き捨てるだけで話を終えた気になるはずがない……
そうは思っていても、ビートのこの調子では、頭の中でどんな風に変換されているのか分かったものではありません。
マリアンヌはひとまず、自分の意志だけを伝えることにします。
「……心配せずとも、私の意向もビート様とお変わりはありません」
「何?どういう意味だ」
どうやら、反論も同意も、ビートの機嫌を損ねるようでした。
遠回りに伝えても、眉間に皺を寄せられてしまったがため。
声を抑えたままではあるけれど、マリアンヌはもう少し直接的に伝えることにします。
「……婚約を解消……破棄することに異論はない、ということです」
「何だと……!?」
マリアンヌとビートの間に、剣呑な雰囲気が生まれかけていたその時。
窓の方へと歩いて外を眺めていたロコが、おっとりと声を上げました。
「わ~、降ってきましたね~」
空模様はすっかりと暗く、水滴がいくつか落ちた後は、既に大きくザーザーと音がするほどになっています。
通り雨……とも思いたいのですが、空を覆う分厚く黒い雲を見る限り、雨はまだしばらく降り続けそうな雰囲気でした。
もたもたしていると更にひどい天候に見舞われるかもしれない……そう考えたビートは、とにかくこの場を離れることにしたようでした。
大きく嫌味なため息をついて、マリアンヌをじろりと見ました。
「……そうまで言うのなら後日に話す機会をくれてやろう」
正当な申し出を、まるで懇願したかのように言い換えられるのは、マリアンヌにとって不本意ではありましたが……
ここで口論を始めても仕方のないこと。
後日があるというなら、ということで目礼を送ります。
そうは思っていても、ビートのこの調子では、頭の中でどんな風に変換されているのか分かったものではありません。
マリアンヌはひとまず、自分の意志だけを伝えることにします。
「……心配せずとも、私の意向もビート様とお変わりはありません」
「何?どういう意味だ」
どうやら、反論も同意も、ビートの機嫌を損ねるようでした。
遠回りに伝えても、眉間に皺を寄せられてしまったがため。
声を抑えたままではあるけれど、マリアンヌはもう少し直接的に伝えることにします。
「……婚約を解消……破棄することに異論はない、ということです」
「何だと……!?」
マリアンヌとビートの間に、剣呑な雰囲気が生まれかけていたその時。
窓の方へと歩いて外を眺めていたロコが、おっとりと声を上げました。
「わ~、降ってきましたね~」
空模様はすっかりと暗く、水滴がいくつか落ちた後は、既に大きくザーザーと音がするほどになっています。
通り雨……とも思いたいのですが、空を覆う分厚く黒い雲を見る限り、雨はまだしばらく降り続けそうな雰囲気でした。
もたもたしていると更にひどい天候に見舞われるかもしれない……そう考えたビートは、とにかくこの場を離れることにしたようでした。
大きく嫌味なため息をついて、マリアンヌをじろりと見ました。
「……そうまで言うのなら後日に話す機会をくれてやろう」
正当な申し出を、まるで懇願したかのように言い換えられるのは、マリアンヌにとって不本意ではありましたが……
ここで口論を始めても仕方のないこと。
後日があるというなら、ということで目礼を送ります。
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