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「けれど……婚約破棄などしてしまって、大丈夫なのですか……?」
マリアンヌは、控えめにそう尋ねます。
もともとこの婚約も、二人が何かしらの情を抱いて結んでいたものではありません。
上級貴族同士の婚約は家のしがらみなども強く反映されるものです。
つまりお互いの家に有益なことがあるからこそ、婚約を結ぶことになっているということ。
そのためマリアンヌとしては、素直にその気持ちを口に出したのですが……
婚約破棄を口にしたのは自分のほうなのに、それを引き止めるでもなく了承するようなマリアンヌの口調に、ビートは苦々しく唇を歪めます。
「はっ、やはり君の本性などこんなものか……僕たちの婚約などどうでもよかったと」
「え……?」
今、自分は婚約破棄を申し渡されたはず。
だからこそこの先の懸念を話したというのに、ビートから返ってきた言葉は、マリアンヌの気持ちを邪推するものでした。
話がかみ合わないような気がしたため、一瞬言葉を失うマリアンヌ。
けれど、憎々し気なビートの表情を見て、伝えなければいけないことを伝えるのみに留めることにしたようです。
「いえ……あなたの家の……侯爵家の事情は、存じているつもりでしたので……」
差し出口となりますが……と、目を伏せるマリアンヌ。
事業を興すにあたって、そして運営していくのにも必要な大量の資金。
侯爵家が欲しがっているその用立てを、伯爵家にも求めていることは、マリアンヌも聞いていました。
自分とビートとの婚約がなくなることで、伯爵家からの融資の話も厳しくなったり、立ち消えたりしてしまうかもしれません。
その侯爵家の資金繰りが上手くいかなくなってしまうのではないか……そう思って挟んだ口でしたが。
ビートから返ってきたのは、鼻で嗤うような返答でした。
マリアンヌは、控えめにそう尋ねます。
もともとこの婚約も、二人が何かしらの情を抱いて結んでいたものではありません。
上級貴族同士の婚約は家のしがらみなども強く反映されるものです。
つまりお互いの家に有益なことがあるからこそ、婚約を結ぶことになっているということ。
そのためマリアンヌとしては、素直にその気持ちを口に出したのですが……
婚約破棄を口にしたのは自分のほうなのに、それを引き止めるでもなく了承するようなマリアンヌの口調に、ビートは苦々しく唇を歪めます。
「はっ、やはり君の本性などこんなものか……僕たちの婚約などどうでもよかったと」
「え……?」
今、自分は婚約破棄を申し渡されたはず。
だからこそこの先の懸念を話したというのに、ビートから返ってきた言葉は、マリアンヌの気持ちを邪推するものでした。
話がかみ合わないような気がしたため、一瞬言葉を失うマリアンヌ。
けれど、憎々し気なビートの表情を見て、伝えなければいけないことを伝えるのみに留めることにしたようです。
「いえ……あなたの家の……侯爵家の事情は、存じているつもりでしたので……」
差し出口となりますが……と、目を伏せるマリアンヌ。
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自分とビートとの婚約がなくなることで、伯爵家からの融資の話も厳しくなったり、立ち消えたりしてしまうかもしれません。
その侯爵家の資金繰りが上手くいかなくなってしまうのではないか……そう思って挟んだ口でしたが。
ビートから返ってきたのは、鼻で嗤うような返答でした。
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