上 下
62 / 70
真実の裏側

61 グランの死

しおりを挟む
裏側編は、復讐がテーマになってますので、少しグロい&倫理的にちょっと……な表現がありますのでどうかご注意下さい_○/|_ 土下座!



( サン )


────1000年前。


ガチャガチャと大きな音を立てながら近づいてくる悪意ある集団と、空っぽになっているハウスの中、今俺がいる場所はグランのへそくりをいつも隠している場所だ。


「 …………。 」


そしてグラン様の切羽詰まった様子と煩いくらいに聞こえる "   声 "  から大体の事情を知り、ハァ……とため息をつく。


俺を売って逃げたのか……あのヒュードとかいう男は。


それを知って最初に思ったのは、目的は俺だからグランは助かるだろうという事。


そしてそれと同時に湧き上がるのは、今まで幸せだったという喜びの感情と ” ありがとう ” という感謝の気持ちだった。

それを感じながら、隷属魔法のせいで動きが鈍っている身体で笑みを溢す。


自分の命一つでグラン様が助かるなら嬉しい。

建物に残される時、そんな想いを持ちながら、俺は幸せだった思い出と共に最後を待ったのだが────……俺は一つ大きな思い違いをしてしまった。


心の ” 声 ” が聞こえなくても、一つしか答えは選べないと思ったから……自分の幸せな思い出を思い出す事を優先してしまったのだ。


だって自分の命を犠牲にしてまで、俺を助けようなんて誰が考えると思うのか?


寿命もいくばくかもない、こんな俺のために……。



でも、俺の代わりにグランは死んだ。


跡形もなく。




「  グラン様……? 」


隷属魔法の抵抗が弱まっていく。

更にグランの反応が徐々に弱くなり……そして消えたのを察知し血の気がひいた。



────ドキン……。



────────ドキン……ドキン……。




心臓の音が耳に響く中、俺は隷属魔法を完全に破り、隠されていた場所から直ぐに飛び出す。


嘘だ……。


嘘だ……嘘だ……。






嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!






「  ────グラン様っ!!!! 」



直ぐにいくつもの反応が集まっている場所へ走って走って……たどり着いた先に見えたのは────真っ黒に燃やされ灰になってしまったグランの姿と、それを笑いながら見ている知らない者達の姿であった。


「   ん?お前……腐色病の……?


────ククッ、な~んだ!やっぱりここに残されていたのか!

それは手間が省けて良かった。 」


一番楽しそうに笑っていた偉そうな男は、俺を見て目を輝かす。

そして────俺にはその男の心の声が聞こえた。


"   ドブネズミめ、嘘つきやがって。

もっと苦しめて殺してやれば良かった!! "


"   だがコレで今試したい新薬の実験が全部できるぞ!

最近騎士団の監視が強くなって実験体の調達が制限されてたからな。

────クソがっ。医術の貢献をしようとしている俺を理解しない無能集団め!! "


"   俺は歴史に名を残す偉大な男になる!

こいつを使って新薬をどんどん発明して────金、地位、名誉!!全てを手に入れてやる!


このレイケル様がな!! "



強く頭の中に入ってくる欲望だらけの汚らしい言葉の数々に、ガンガンと頭が痛くなる。


しかしそんな事は全く気にする事ができないくらい、俺は目の前でサラサラと黒い灰になって消えていくグランの体に大きな衝撃を受けていた。


「    あ、あ、う、あああ……あ………。


う……あぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁ────────!!!!!!!!! 」



まるで獣の様な声をあげて駆け出し、まだ残っている灰を必死にかき集める。


「 グラン!!グラン!!グラン!!! 」


そんな必死に泣き叫ぶ俺の姿は楽しいモノだったのだろう。

レイケルと周りの兵たちからは愉快と快楽の感情が伝わってくる。


そしてそんな俺に向かってレイケルは笑い混じりに言った。


「 さっきのドブネズミみたいな男は実に情けない男だったな。

殴られてもぺこぺこと頭を下げてプライドのカケラもない。

私だったら頭を下げるくらいだったら自害を選ぶがな。 」


そう言ってアハハッ!!と大笑いするレイケルだったが……俺が顔を上げないままグランの消えてしまった土の上を撫で続けている事に腹を立てたのか、剣を静かにぬく。


「 チッ!この醜い化け物が。

このゆくゆく歴史に残るであろう大貴族のレイケル様を無視するとは……。

これは調教が必要だな。

腐色病のやつらは、文献によると切っても燃やしても死なないらしいが……どれ、ここで少し試してやろう。


とりあえず手足を切って────……えっ? 」


レイケルは剣を持った手を軽くあげて、自身の光り輝く剣を見ようとしたのだが、それを見る事は叶わなかった。


剣を持っていたはずの手が地面に落ちていたから。



「   ぎ、ぎゃあああああぁぁぁぁぁ────!!!!!!! 」



……プシャっ────!!!


忘れていた様に突然、勢いよく吹き出る血に悲鳴をあげたレイケルは、直ぐに自分のスキルで止血をしたらしい。


斬られた腕の断面をグッとにぎり、血は止まった様だ。



「 き、き、き、貴様ぁぁぁぁぉ────!!!


一体何をしたぁぁぁぁぁぁぁ!! 」


                                     ・・・・
大声で怒鳴るレイケルの怒気に我に帰った兵達は、一斉に剣を抜き、いつの間にかレイケルの剣を持って立っている俺を睨みつける。

しかし一人だけズテン!と後ろにひっくり返ってしまった兵がいたため、周りの兵たちはどうしたのかと、直ぐに仰向けに倒れてキョトンとしている兵を見た。

すると────……。



「 ……なぁ、なんで俺、両足ねぇ……の……?? 」



ガタガタと震えながら、ひっくり返っていた男が周りにいる兵に尋ねると、そいつは自分の失くなっている足へ手を伸ばし……突然大きな悲鳴をあげた。


「 い、いてぇぇぇぇぇよぉぉぉぉ!!!!

あ、足、俺の足ぃぃぃぃぃぃ────俺の足がァァぁ゙ァァァ────!!!


ギャーギャーと泣き出す兵の男を見た後、全員が俺の方を見たが……あまりにも遅すぎて欠伸がでそうだ。

レイケルが馬鹿みたいにベラベラ喋っている間にその手に持つ剣を奪い、レイケルの手も煩く騒ぐ兵の足も斬ってやったのに、今頃気付いたの……?


驚愕と恐怖の表情が顔に浮かび始めた他の兵達が、攻撃を開始するその前に────今度はその横を通りながら、全員の足を切ってやった。


「 う、う、うぅ────ああああぁぁぁぁぁ!!! 」


「 ひ、ひぃひ、ひ、いてぇぇぇぇっ、いてぇよおぉぉぉぉ!!! 」


すると、真っ赤な絨毯を敷いた様に血だらけに染まった地に立っているのは、レイケルと俺だけに。

汚らしい血がついた剣を、ピッ!と振ってその血を飛ばすと、ゆっくりとレイケルへ視線を向けた。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

【書籍化進行中】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ  前世の記憶がうっすら残る私が転生したのは、貧乏伯爵家の長女。父親に頼まれ、公爵家の圧力と財力に負けた我が家は私を売った。  悲壮感漂う状況のようだが、契約婚は悪くない。実家の借金を返し、可愛い継子を愛でながら、旦那様は元気で留守が最高! と日常を謳歌する。旦那様に放置された妻ですが、息子や使用人と快適ライフを追求する。  逞しく生きる私に、旦那様が距離を詰めてきて? 本気の恋愛や溺愛はお断りです!!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2024/09/07……カクヨム、恋愛週間 4位 2024/09/02……小説家になろう、総合連載 2位 2024/09/02……小説家になろう、週間恋愛 2位 2024/08/28……小説家になろう、日間恋愛連載 1位 2024/08/24……アルファポリス 女性向けHOT 8位 2024/08/16……エブリスタ 恋愛ファンタジー 1位 2024/08/14……連載開始

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

「トリプルSの極上アルファと契約結婚、なぜか猫可愛がりされる話」

悠里
BL
Ωの凛太。オレには夢がある。その為に勉強しなきゃ。お金が必要。でもムカつく父のお金はできるだけ使いたくない。そういう店、もありだろうか……。父のお金を使うより、どんな方法だろうと自分で稼いだ方がマシ、でもなぁ、と悩んでいたΩ凛太の前に、何やらめちゃくちゃイケメンなαが現れた。 凛太はΩの要素が弱い。ヒートはあるけど不定期だし、三日こもればなんとかなる。αのフェロモンも感じないし、自身も弱い。 なんだろこのイケメン、と思っていたら、何やら話している間に、変な話になってきた。 契約結婚? 期間三年? その間は好きに勉強していい。その後も、生活の面倒は見る。デメリットは、戸籍にバツイチがつくこと。え、全然いいかも……。お願いします! トリプルエスランク、紫の瞳を持つスーパーαのエリートの瑛士さんの、超高級マンション。最上階の隣の部屋を貰う。もし番になりたい人が居たら一緒に暮らしてもいいよとか言うけど、一番勉強がしたいので! 恋とか分からないしと断る。たまに一緒にパーティーに出たり、表に夫夫アピールはするけど、それ以外は絡む必要もない、はずだったのに、なぜか瑛士さんは、オレの部屋を訪ねてくる。そんな豪華でもない普通のオレのご飯を一緒に食べるようになる。勉強してる横で、瑛士さんも仕事してる。「何でここに」「居心地よくて」「いいですけど」そんな日々が続く。ちょっと仲良くなってきたある時、久しぶりにヒート。三日間こもるんで来ないでください。この期間だけは一応Ωなんで、と言ったオレに、一緒に居る、と、意味の分からない瑛士さん。一応抑制剤はお互い打つけど、さすがにヒートは、無理。出てってと言ったら、一人でそんな辛そうにさせてたくない、という。もうヒートも相まって、血が上って、頭、良く分からなくなる。まあ二人とも、微かな理性で頑張って、本番まではいかなかったんだけど。――ヒートを乗り越えてから、瑛士さん、なんかやたら、距離が近い。何なのその目。そんな風に見つめるの、なんかよくないと思いますけど。というと、おかしそうに笑われる。そんな時、色んなツテで、薬を作る夢の話が盛り上がってくる。Ωの対応や治験に向けて活動を開始するようになる。夢に少しずつ近づくような。そんな中、従来の抑制剤の治験の闇やΩたちへの許されない行為を耳にする。少しずつ証拠をそろえていくと、それを良く思わない連中が居て――。瑛士さんは、契約結婚をしてでも身辺に煩わしいことをなくしたかったはずなのに、なぜかオレに関わってくる。仕事も忙しいのに、時間を見つけては、側に居る。なんだか初の感覚。でもオレ、勉強しなきゃ!瑛士さんと結婚できるわけないし勘違いはしないように! なのに……? と、αに翻弄されまくる話です。ぜひ✨ 表紙:クボキリツ(@kbk_Ritsu)さま 素敵なイラストをありがとう…🩷✨

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

悪役令嬢のペットは殿下に囲われ溺愛される

白霧雪。
BL
旧題:悪役令嬢のポチは第一王子に囲われて溺愛されてます!? 愛される喜びを知ってしまった―― 公爵令嬢ベアトリーチェの幼馴染兼従者として生まれ育ったヴィンセント。ベアトリーチェの婚約者が他の女に現を抜かすため、彼女が不幸な結婚をする前に何とか婚約を解消できないかと考えていると、彼女の婚約者の兄であり第一王子であるエドワードが現れる。「自分がベアトリーチェの婚約について、『ベアトリーチェにとって不幸な結末』にならないよう取り計らう」「その代わり、ヴィンセントが欲しい」と取引を持ち掛けられ、不審に思いつつも受け入れることに。警戒を解かないヴィンセントに対し、エドワードは甘く溺愛してきて…… ❁❀花籠の泥人形編 更新中✿ 残4話予定✾ ❀小話を番外編にまとめました❀ ✿背後注意話✿ ✾Twitter → @yuki_cat8 (作業過程や裏話など) ❀書籍化記念IFSSを番外編に追加しました!(23.1.11)❀

処理中です...