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真実の表側
33 今の現状は……
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◇◇◇◇
「 いや~!大量、大量! 」
一本の太い紐に麦ダンゴロ虫を五匹繋いで冒険者ギルドへ。
初めて向けられる驚く周りの目が気持ちよくて、わざとゆっくり歩いて受付に諸々の依頼書を提出する。
今回依頼達成したモノと別に、ついでに他にも出ていた同じ麦ダンゴロ虫の納入依頼をその場で受注、達成したので、なんと五万ゴールド✕5……つまり25万ゴールドにもなった。
ちょっと儲かっている平民の一ヶ月分の給料をたった一日で稼いでしまった……。
金を受け取る手が震え、ガタガタしながらその金を受け取ると、無意識に…… ” これで何個分のサンの薬が買える? ” なんて考えてしまい、なんだか冷静になる。
もうそんな事を考えずにパァ~!と使っちゃって良いんだ。
そう理解すると、お腹いっぱいご馳走を食べてみようという考えが浮かぶ。
「 なんたって毎日毎日ゴミか食いかけのどっちかだったもんな。
物凄くお高い食事っつーのを満喫してみっか! 」
ご機嫌に鼻歌を歌いながら、ギルドのお嬢さんにこの街で一番高い店を聞くと、此処からさほど遠くない場所に有名な高級料理店があるらしいのでそこへ行ってみることにした。
その名も ” 天上の故郷 ”
最高級の肉料理を堪能する事ができ、一口食べれば天国に来たのかと勘違いするほどの美味しさを味わえるらしい。
お値段もその名の通り天上レベルの、なんと一食10万!
それだけで震えそうになったが、心を奮い立たせ行ってみることにして歩いていった。
◇◇◇
────ドンっ!!
建っているだけで人を威圧するような、黄金色のキラキラした建物を前に、入り口でポカーンと立ち尽くす。
「 す、凄すぎる……。これが高級店……。 」
ボロっと薄汚れた格好が恥ずかしくなってきて、やっぱり辞めようかと気後れしたが、そこは流石プロ!
店員らしいイケメンに丁寧な言葉で声を掛けられ、気がつけば店の中にいた。
「 あ、あれ……?? 」
わけがわからぬまま、目の前には、まるで絵本で描かれる様な豪華絢爛な料理の数々があって、さぁどうぞ!と差し出される。
「「「 どうぞ心ゆくまでご堪能くださいませ~! 」」」
俺と他の沢山の着飾った客達に向かって、店員達は一斉に頭を下げ、その後は楽器演奏が始まった。
まさに上流階級!……な、その場にいる事にムズムズしたが、せっかく高い金を払っているのだと開き直り、目の前の美しい霜降りステーキにフォークを突き刺す。
そして────そのままかぶりついた!
「 う、う~……────……っ!うま~……っ!! 」
口の中で溶ける!が正確な表現の肉を味わい、飲んだことのない様な上質なワインに、デザートに……とにかく夢の様な体験をして、俺は帰路につく。
食べ過ぎで膨れた腹をポンポンと叩きながら、堪能した味を思い出そうとしたのだが、なぜか頭に浮かんできたのはサンと一緒に食べた屑肉や腐りかけの料理の数々であった。
「 ……なんだか不思議だな。
あんなに美味しい料理を食べたのに、幸せを上書きできないなんて……。
下僕生活が身に染みちゃったのかねぇ? 」
笑えない冗談にハハッと乾いた笑いを漏らすと、さっき雀の人の言葉が突然頭の中を通り過ぎた。
” 幸せ ” とは抽象的なモノで、定義は多視点によって決定が難しいモノです。
自分にとって幸せだろうと思う場面でも、それを幸せであると思わない人もいると言う事です。
逆もまた……。 ”
「 ……そっか。 」
ゆっくりと目を閉じると、瞼に浮かぶのはサンと一緒に食べたゴミみたいな食事の数々。
あれが俺の ” 幸せ ” だった。
「 …………。 」
全然寒くないのに何だか寒い様な気がして……俺は首を引っ込めて、宿屋へと帰った。
◇◇◇◇
一週間後────。
リンゴ~ン!リンゴ~~ン!!
朝の出発前、教会の大きな鐘の音で俺は飛び起きる。
「 ────わっ!!なんだ!?なんだ!? 」
寝ぼけながら飛び起きた後、直ぐに窓の外に出ると沢山の人が外に出ていて、暗い顔で教会へ視線を向けている。
" 罪償の日 "
本日は、神王様とやらが、俺たち " 人 " への審判を下す日だ。
簡単に言うと、お金を回収しにくる日って事。
《 現在の身分は大きく分けて三つ。
まずは単純に多くの金を納めた者に与えられる【 聖天人 】
神王に忠誠を誓った実力高き者達に与えられる【 聖華騎士団 】
そして毎月決まった献上金を納める【 平民 】です。
更に【 聖天人 】はその納めた金額から細かく分けられ、上の身分から順番に【 王族、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵 】と分けられてますね。
【 聖華騎士団 】は騎士団長をトップとして、副団長、副団長補佐、小隊長などに分かれます。》
あれから何度か雀の人をスキルで呼び出しては、禁句に触れない様な質問をした。
その中で聞いた話の中に身分などについての話があったのだが、【 聖天人 】は、要は1000年前の貴族と同じ存在。
そして【 聖華騎士団 】も、守護する人物が王や王族から神王に変わっただけの様だ。
「 で────確か、教会の前のデカい広場に朝の6時に集合。
神王様がご降臨するのをひたすら祈って待つと……。 」
腕を組みながら、はぁ~……と大きなため息をつく。
なんたって今まで最長12時間だもんな~……。
ブツブツと不満を漏らしながら空を見ると、本日は晴天なり。
なんと大豪雨だった日もあったそうなので、今日はラッキーデイに当たるらしい。
「 生きるための極意は、順応力。
如何に環境に慣れるかにあるからな。
…………。
やるっきゃねぇか。 」
この時代に来てからまだ一週間。
グラグラと精神は揺さぶられ、沢山の事を考えた。
これからの事も。
俺の幸せはサンがくれたモノである事。
だから、今の状況は俺にとって、まさに夢も希望もない状況だ。
「 いや~!大量、大量! 」
一本の太い紐に麦ダンゴロ虫を五匹繋いで冒険者ギルドへ。
初めて向けられる驚く周りの目が気持ちよくて、わざとゆっくり歩いて受付に諸々の依頼書を提出する。
今回依頼達成したモノと別に、ついでに他にも出ていた同じ麦ダンゴロ虫の納入依頼をその場で受注、達成したので、なんと五万ゴールド✕5……つまり25万ゴールドにもなった。
ちょっと儲かっている平民の一ヶ月分の給料をたった一日で稼いでしまった……。
金を受け取る手が震え、ガタガタしながらその金を受け取ると、無意識に…… ” これで何個分のサンの薬が買える? ” なんて考えてしまい、なんだか冷静になる。
もうそんな事を考えずにパァ~!と使っちゃって良いんだ。
そう理解すると、お腹いっぱいご馳走を食べてみようという考えが浮かぶ。
「 なんたって毎日毎日ゴミか食いかけのどっちかだったもんな。
物凄くお高い食事っつーのを満喫してみっか! 」
ご機嫌に鼻歌を歌いながら、ギルドのお嬢さんにこの街で一番高い店を聞くと、此処からさほど遠くない場所に有名な高級料理店があるらしいのでそこへ行ってみることにした。
その名も ” 天上の故郷 ”
最高級の肉料理を堪能する事ができ、一口食べれば天国に来たのかと勘違いするほどの美味しさを味わえるらしい。
お値段もその名の通り天上レベルの、なんと一食10万!
それだけで震えそうになったが、心を奮い立たせ行ってみることにして歩いていった。
◇◇◇
────ドンっ!!
建っているだけで人を威圧するような、黄金色のキラキラした建物を前に、入り口でポカーンと立ち尽くす。
「 す、凄すぎる……。これが高級店……。 」
ボロっと薄汚れた格好が恥ずかしくなってきて、やっぱり辞めようかと気後れしたが、そこは流石プロ!
店員らしいイケメンに丁寧な言葉で声を掛けられ、気がつけば店の中にいた。
「 あ、あれ……?? 」
わけがわからぬまま、目の前には、まるで絵本で描かれる様な豪華絢爛な料理の数々があって、さぁどうぞ!と差し出される。
「「「 どうぞ心ゆくまでご堪能くださいませ~! 」」」
俺と他の沢山の着飾った客達に向かって、店員達は一斉に頭を下げ、その後は楽器演奏が始まった。
まさに上流階級!……な、その場にいる事にムズムズしたが、せっかく高い金を払っているのだと開き直り、目の前の美しい霜降りステーキにフォークを突き刺す。
そして────そのままかぶりついた!
「 う、う~……────……っ!うま~……っ!! 」
口の中で溶ける!が正確な表現の肉を味わい、飲んだことのない様な上質なワインに、デザートに……とにかく夢の様な体験をして、俺は帰路につく。
食べ過ぎで膨れた腹をポンポンと叩きながら、堪能した味を思い出そうとしたのだが、なぜか頭に浮かんできたのはサンと一緒に食べた屑肉や腐りかけの料理の数々であった。
「 ……なんだか不思議だな。
あんなに美味しい料理を食べたのに、幸せを上書きできないなんて……。
下僕生活が身に染みちゃったのかねぇ? 」
笑えない冗談にハハッと乾いた笑いを漏らすと、さっき雀の人の言葉が突然頭の中を通り過ぎた。
” 幸せ ” とは抽象的なモノで、定義は多視点によって決定が難しいモノです。
自分にとって幸せだろうと思う場面でも、それを幸せであると思わない人もいると言う事です。
逆もまた……。 ”
「 ……そっか。 」
ゆっくりと目を閉じると、瞼に浮かぶのはサンと一緒に食べたゴミみたいな食事の数々。
あれが俺の ” 幸せ ” だった。
「 …………。 」
全然寒くないのに何だか寒い様な気がして……俺は首を引っ込めて、宿屋へと帰った。
◇◇◇◇
一週間後────。
リンゴ~ン!リンゴ~~ン!!
朝の出発前、教会の大きな鐘の音で俺は飛び起きる。
「 ────わっ!!なんだ!?なんだ!? 」
寝ぼけながら飛び起きた後、直ぐに窓の外に出ると沢山の人が外に出ていて、暗い顔で教会へ視線を向けている。
" 罪償の日 "
本日は、神王様とやらが、俺たち " 人 " への審判を下す日だ。
簡単に言うと、お金を回収しにくる日って事。
《 現在の身分は大きく分けて三つ。
まずは単純に多くの金を納めた者に与えられる【 聖天人 】
神王に忠誠を誓った実力高き者達に与えられる【 聖華騎士団 】
そして毎月決まった献上金を納める【 平民 】です。
更に【 聖天人 】はその納めた金額から細かく分けられ、上の身分から順番に【 王族、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵 】と分けられてますね。
【 聖華騎士団 】は騎士団長をトップとして、副団長、副団長補佐、小隊長などに分かれます。》
あれから何度か雀の人をスキルで呼び出しては、禁句に触れない様な質問をした。
その中で聞いた話の中に身分などについての話があったのだが、【 聖天人 】は、要は1000年前の貴族と同じ存在。
そして【 聖華騎士団 】も、守護する人物が王や王族から神王に変わっただけの様だ。
「 で────確か、教会の前のデカい広場に朝の6時に集合。
神王様がご降臨するのをひたすら祈って待つと……。 」
腕を組みながら、はぁ~……と大きなため息をつく。
なんたって今まで最長12時間だもんな~……。
ブツブツと不満を漏らしながら空を見ると、本日は晴天なり。
なんと大豪雨だった日もあったそうなので、今日はラッキーデイに当たるらしい。
「 生きるための極意は、順応力。
如何に環境に慣れるかにあるからな。
…………。
やるっきゃねぇか。 」
この時代に来てからまだ一週間。
グラグラと精神は揺さぶられ、沢山の事を考えた。
これからの事も。
俺の幸せはサンがくれたモノである事。
だから、今の状況は俺にとって、まさに夢も希望もない状況だ。
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