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真実の表側
25 1000年後の未来は……?
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無事門を潜った俺は、まず現状を知るため、歴史などの記録が残っている場所を探したのだが……街の中に入って初めに思うことは、やはり " 同じ " という違和感だ。
街並みも、チラチラと見える人々の生活レベルも全部特別変わった様には見えない。
更に文字も変わっていない様で、直ぐに教会が管理する図書資料室を見つけた。
図書資料室は、全国にある教会に集まるお布施を使って建てられる、誰でも入れる唯一の学習施設。
歴史書やあらゆる知識が書かれた本が置いてあって、俺も子供の頃はそこで死ぬ気で文字と数字の勘定の仕方を覚えたものだ。
「 ここもそのまんまだ……。
とりあえず、ここなら歴史に関しての本があるはず。 」
図書資料室を前に、俺はパンっ!と両頬を叩き、中へと入って行った。
教会近くに建っている図書資料室は、一軒家より少し大きいかな?くらいの大きさで、中にはカテゴリー別に並べられている本が入った本棚がズラリと並んでいる。
そして一角のスペースはその本を読む人のために机と椅子が数個置いてあって、俺は目につく歴史の本を手に取りその一つに座った。
「 誰もいないのか。
……未来もそんなに裕福じゃないんだな。 」
ちなみに現在この場所にいるのはどうやら俺だけ。
部屋の中はシン……と、静まり返っている。
その日を必死に生きる人々にとって、呑気に本をゆっくり読む時間が取れる人はほんの僅か。
俺だって今直ぐにでも眠りたい中、必死に勉強したものだ。
「 まぁ、俺も生きるのに精一杯で大した知識は学べなかったけど……その点サンはやっぱり凄かったよな~。
アイツも殆ど本なんて読んだことないって言ってたのに……。 」
" 俺の住んでいた街に図書資料室はありませんでした。
だから、嬉しいです。
ありがとうございます。 "
初めて図書資料室に連れて行くと、サンはすごく喜んで色んな本を手に取ってはペラペラと捲っていた。
結局連れて行けたのはその時と、もう一回だけだったが、サンは俺に気を遣ってか、" 全ての知識は手に入れたのでもう行かなくて大丈夫です。 " って言って、それからは行ってない。
しかし────多分それからだ。
サンがやたら難しい言葉や知識を持ち始めたのは。
「 ……サンは頭脳系のギフトを持ってたのかな?
病気さえなければ、きっと国のお偉いさんになれてたかも……。 」
またしんみりしてしまい、ハッ!と慌てて首を横に振ると、机に置いた歴史の本をペラッと捲った。
そして……ページが進むごとに俺の心は絶望に覆われていく。
「 人類が誕生したのは1000年前……?
” 神王様 ” が邪悪なる存在を倒し、世界を浄化した……?? 」
俄かに信じがたい言葉に、これは本当に歴史の本??と何度も表紙を見てしまったが、間違いないらしい。
そのほかにも、邪悪なる存在の同種に命を与えた?やら、偉大なる神王様に感謝を捧げよやら……サッパリ意味の分からない言葉が続く。
全てを理解する事は難しいが……ここが本当に自分の知っている場所ではない事、そしてもし本当にここが1000年後の未来だとしたら……俺のいた時代の存在が全て消されている事は理解できた。
「 ……嘘だろう?
でも────なんで歴史がなくなっちまってるんだ……?
だって俺が死ぬ時は全くの普通だったじゃねぇか。 」
ここで濃厚なのは、さっきも予想した他国による侵略だと思ったのだが、それにしてはこの時代の文化レベルが変わってない事はおかしい。
昔歴史に詳しい考古学者からの依頼を受けた際、その学者の人が言っていたのだ。
” 歴史は積み重なるモノ。
だから一日進む毎に自分を取り巻く文化のレベルは変わって行く ” って。
「 それに他国の侵略を受けたなら、その国の言葉や文化が大量に入ってきてもおかしくないのに……。
────って……えっ??? 」
ペラペラと本を捲っていくと、世界地図が載っているページに辿り着き────俺は絶句し、固まってしまう。
1000年前の世界地図には、この国と陸続きに沢山の国があり、また島国も沢山存在していた。
しかし、今目の前に描かれている世界地図には……国がこの国しかなかったからだ。
「 …………は??? 」
たっぷり5分くらいは固まっていたと思う。
遠のいていた意識がやっと戻ってきて、素っ頓狂な声を上げた。
「 なんで他の国がないんだ……?
だって国……沢山あったじゃねぇか! 」
動揺しすぎて声が大きくなってしまい、慌てて口を塞ぐ。
しかしとてもじゃないが落ち着いてられず、俺は手当たり次第に色々な本をかき集めては、端から目を通して行った。
邪悪なる存在は大地を、海を汚し、” 神王様 ” の怒りに触れた。
人類は生きているだけで罪。
慈悲深き ” 神王様 ” が穢れし末裔に命を与える。
どの本にも同じ様なことばかり書いてあって、” 神王様 ” を褒め称える内容しか書かれていない。
それと比例して人が悪者?みたいな書かれ方をしていて、更に頻繁に出てくるのは ” 命を与えてもらう ” という言葉。
「 ……もしかして、さっきの冒険者の三人が言ってた話と繋がってたりする? 」
直ぐに何か他に情報がないかと調べてみるものの、出てくるのは全部同じ内容ばかり。
神王様は、しゅごい!
人は悪者!
ウンザリするほどこれのみ。
「 本から得られるのはこれくらいか……。
とりあえず馴染みがある冒険者が集まる場所にいってみるか。
1000年前なら、 ” 情報が欲しいならまずココから! ” ……だったしな。
それに────……。 」
ぐぐぅ~……。
お腹が盛大に鳴ってしまい、お腹を押さえながら机におでこをつけた。
街並みも、チラチラと見える人々の生活レベルも全部特別変わった様には見えない。
更に文字も変わっていない様で、直ぐに教会が管理する図書資料室を見つけた。
図書資料室は、全国にある教会に集まるお布施を使って建てられる、誰でも入れる唯一の学習施設。
歴史書やあらゆる知識が書かれた本が置いてあって、俺も子供の頃はそこで死ぬ気で文字と数字の勘定の仕方を覚えたものだ。
「 ここもそのまんまだ……。
とりあえず、ここなら歴史に関しての本があるはず。 」
図書資料室を前に、俺はパンっ!と両頬を叩き、中へと入って行った。
教会近くに建っている図書資料室は、一軒家より少し大きいかな?くらいの大きさで、中にはカテゴリー別に並べられている本が入った本棚がズラリと並んでいる。
そして一角のスペースはその本を読む人のために机と椅子が数個置いてあって、俺は目につく歴史の本を手に取りその一つに座った。
「 誰もいないのか。
……未来もそんなに裕福じゃないんだな。 」
ちなみに現在この場所にいるのはどうやら俺だけ。
部屋の中はシン……と、静まり返っている。
その日を必死に生きる人々にとって、呑気に本をゆっくり読む時間が取れる人はほんの僅か。
俺だって今直ぐにでも眠りたい中、必死に勉強したものだ。
「 まぁ、俺も生きるのに精一杯で大した知識は学べなかったけど……その点サンはやっぱり凄かったよな~。
アイツも殆ど本なんて読んだことないって言ってたのに……。 」
" 俺の住んでいた街に図書資料室はありませんでした。
だから、嬉しいです。
ありがとうございます。 "
初めて図書資料室に連れて行くと、サンはすごく喜んで色んな本を手に取ってはペラペラと捲っていた。
結局連れて行けたのはその時と、もう一回だけだったが、サンは俺に気を遣ってか、" 全ての知識は手に入れたのでもう行かなくて大丈夫です。 " って言って、それからは行ってない。
しかし────多分それからだ。
サンがやたら難しい言葉や知識を持ち始めたのは。
「 ……サンは頭脳系のギフトを持ってたのかな?
病気さえなければ、きっと国のお偉いさんになれてたかも……。 」
またしんみりしてしまい、ハッ!と慌てて首を横に振ると、机に置いた歴史の本をペラッと捲った。
そして……ページが進むごとに俺の心は絶望に覆われていく。
「 人類が誕生したのは1000年前……?
” 神王様 ” が邪悪なる存在を倒し、世界を浄化した……?? 」
俄かに信じがたい言葉に、これは本当に歴史の本??と何度も表紙を見てしまったが、間違いないらしい。
そのほかにも、邪悪なる存在の同種に命を与えた?やら、偉大なる神王様に感謝を捧げよやら……サッパリ意味の分からない言葉が続く。
全てを理解する事は難しいが……ここが本当に自分の知っている場所ではない事、そしてもし本当にここが1000年後の未来だとしたら……俺のいた時代の存在が全て消されている事は理解できた。
「 ……嘘だろう?
でも────なんで歴史がなくなっちまってるんだ……?
だって俺が死ぬ時は全くの普通だったじゃねぇか。 」
ここで濃厚なのは、さっきも予想した他国による侵略だと思ったのだが、それにしてはこの時代の文化レベルが変わってない事はおかしい。
昔歴史に詳しい考古学者からの依頼を受けた際、その学者の人が言っていたのだ。
” 歴史は積み重なるモノ。
だから一日進む毎に自分を取り巻く文化のレベルは変わって行く ” って。
「 それに他国の侵略を受けたなら、その国の言葉や文化が大量に入ってきてもおかしくないのに……。
────って……えっ??? 」
ペラペラと本を捲っていくと、世界地図が載っているページに辿り着き────俺は絶句し、固まってしまう。
1000年前の世界地図には、この国と陸続きに沢山の国があり、また島国も沢山存在していた。
しかし、今目の前に描かれている世界地図には……国がこの国しかなかったからだ。
「 …………は??? 」
たっぷり5分くらいは固まっていたと思う。
遠のいていた意識がやっと戻ってきて、素っ頓狂な声を上げた。
「 なんで他の国がないんだ……?
だって国……沢山あったじゃねぇか! 」
動揺しすぎて声が大きくなってしまい、慌てて口を塞ぐ。
しかしとてもじゃないが落ち着いてられず、俺は手当たり次第に色々な本をかき集めては、端から目を通して行った。
邪悪なる存在は大地を、海を汚し、” 神王様 ” の怒りに触れた。
人類は生きているだけで罪。
慈悲深き ” 神王様 ” が穢れし末裔に命を与える。
どの本にも同じ様なことばかり書いてあって、” 神王様 ” を褒め称える内容しか書かれていない。
それと比例して人が悪者?みたいな書かれ方をしていて、更に頻繁に出てくるのは ” 命を与えてもらう ” という言葉。
「 ……もしかして、さっきの冒険者の三人が言ってた話と繋がってたりする? 」
直ぐに何か他に情報がないかと調べてみるものの、出てくるのは全部同じ内容ばかり。
神王様は、しゅごい!
人は悪者!
ウンザリするほどこれのみ。
「 本から得られるのはこれくらいか……。
とりあえず馴染みがある冒険者が集まる場所にいってみるか。
1000年前なら、 ” 情報が欲しいならまずココから! ” ……だったしな。
それに────……。 」
ぐぐぅ~……。
お腹が盛大に鳴ってしまい、お腹を押さえながら机におでこをつけた。
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