23 / 70
真実の表側
22 ここは?
しおりを挟む
サワサワ……。
顔を擽る感触に俺の意識は現実へと戻っていく。
重だるい瞼を必死に上にあげると……目の前にはもじゃもじゃと生い茂っている草達が見えた。
「 ……えっ??
────────あ、あれ??? 」
混乱したままノロノロと起き上がり、周りを見回したが、ここはただの草が生えているだけの森の中の様だった。
ここは……?
「 俺は……確かに、あの貴族に殺されて……? 」
はっきりしてくる意識が死の感覚を思い出させ、その場で激しく嘔吐してしまった。
そしてゲェゲェと全ての胃液をぶち撒けると、胃と共に頭はスッキリとし、直ぐに頭に浮かぶのはサンの事だ。
「 ────っサン!!! 」
俺はそのまま走って走って、先ほどとは違う様な気がする景色に違和感を覚えながら、ハウスがあった場所へと走った。
しかし、街の中心地からかなり外れていたハウスは確かに自然豊かな場所にあったが、今走っている景色はそれとは別物で……ここはまるで深い森の中の様だ。
「 ────ハァっハァっ!!サン、サン、サン!! 」
それでも頭の中は、隠したサンのことで一杯で……そんな変化も目に入らない。
そしてハウスがあったはずの場所へ着くと……目に映るモノが信じられなくて、呆然と立ち尽くした。
そこには建物……などはなく、殆ど腐っている柱や金属?の様なものが、申し訳ない程度に散らばっていただけだったからだ。
「 えっ……ハ、ハウスは……? 」
ヨロヨロしながら、更にその場所に近づいていくと、かなり古い建物の跡地であることは分かるが……何が建っていたのか分からないくらい朽ち果てている。
「 な……何でこんな……。サン……。 」
無駄だと分かっていても、俺はその跡地の土を掘ったり、そこら中に生えている草を引き抜いたりしてみたが、俺がいたハウスの何かに繋がるようなモノは出てこなかった。
もしかしてハウスごと焼かれてしまったのだろうか?
いや、そもそも何で俺は生きてる……?
殴られた場所をペタペタと触りながら混乱していると、最後に聞こえた時計の歯車の様な音と────そして、男だか女だか分からない " 声 " のことを思い出す。
《 ギフトの【 渡り鳥 】のスキル条件を満たしました。
これよりスキル< 時渡り( 未来 ) >を発動し、肉体を完全再生し1000年後の未来へ渡ります。 》
「 1000年……そ、そんな……バカな……。 」
あり得ないと笑い飛ばそうとしたが、今でもハッキリと覚えている死の感覚が、それを完全な笑い話にしてくれない。
しかし信じるには自分の中の常識が邪魔をする。
「 そ、そうだ……!街に行ってみれば何か分かるかも……!
サンの目撃情報もあるかもしれないし……。 」
フラッ……と立ち上がった俺は、そのまま街があった方角へとおぼつかない足取りで歩いて行った。
「 な……なんだ……?これ…… 」
街があったはずの場所に辿り着いた俺の目に写る景色。
それを前に、俺はガクンっと膝から崩れ落ちてしまう。
目の前に広がるのは街……ではなく巨大な湖だった。
海と間違えそうなくらい巨大なモノで、一日二日でできる様なモノではない。
震えながら透き通った湖を覗き込むと、そこは深くてどこまで続いているか分からず、まるで地獄まで繋がっているのでは?と思ってしまう程であった。
「 まさか本当にここは……1000年後の世界……なのか? 」
愕然としながら頭をぐるぐると回ったのは、これからどうしようとか、突然1000年後に飛んでしまった不安とかじゃなく……やっぱりサンの事だった。
「 ……アイツ、ちゃんとあの後逃げ切れたのかな……。
逃げ切れても、多分長くは生きられなかったと思うけどさ……。 」
サンの最後を想い、鼻の奥がツーン……と痛くなってきて、ポロポロと目から涙が落ちていく。
「 サンは……もういないのかぁ~……。 」
口に出すと余計にその事実は重く絶望としてのし掛かり、その場で突っ伏すと、わーんわーん!と大声で泣いた。
「 なんで1000年なんだよ!!
渡り人のバッカヤロォォォォ────!!!
普段役立たずのポンコツギフトォォォ────────!!! 」
クソみたいな人生の終わりに、更にクソみたいなこんなスキル!
本当に本当に酷すぎる!!
ギャーギャーと泣き叫んでいると、突然頭の中で大きな警戒音が鳴った。
《 警告!警告!
現在ある一定以上のステータスを持つ人型生物が接近中。
約90秒後にコチラに到着します。》
< 渡り人のギフトスキル >
【 危険察知( EX )】
ありとあらゆる自分の生命の危機を余裕を持ったタイミングで察知し、それを回避する事ができる行動を瞬時に頭の中で思いつく事ができる頭脳系スキル
────────えっ!!!??
またしても男だか女だか分からない声が頭の中に響き、ギョッとする。
どうしようどうしよう!
オタオタと焦っていると、突然自分の中にある力を感じ、それを自然に発動した。
< 渡り人のギフトスキル >
【 インビシブルスタイル( EX ) 】
自身の存在を透明にする特殊隠密スキル
何者にもこれを見破る事はできない
自分の体が透明になったのに驚いていると、突然蹄の音が直ぐそばまで聞こえ、なんと甲冑を着た騎士の様な男達がゾロゾロと到着した。
驚き、口を押さえて動かずにいると、その男達はキョロキョロと周囲を見渡した後、喋り始める。
「 ……確かに男の声がしたと思ったのだが……気のせいだったか? 」
「 ほら、やっぱり気のせいだろう。
ここは『 神罰の跡地 』
この罪深き場所にわざわざ入る者はおらんだろう。 」
神罰の跡地??
罪深き場所???
男達が何を言っているのか分からず、口元を押さえたまま首を傾げた。
そしてそのまま男達の様子を伺っていると、突然全員がその場に跪く。
顔を擽る感触に俺の意識は現実へと戻っていく。
重だるい瞼を必死に上にあげると……目の前にはもじゃもじゃと生い茂っている草達が見えた。
「 ……えっ??
────────あ、あれ??? 」
混乱したままノロノロと起き上がり、周りを見回したが、ここはただの草が生えているだけの森の中の様だった。
ここは……?
「 俺は……確かに、あの貴族に殺されて……? 」
はっきりしてくる意識が死の感覚を思い出させ、その場で激しく嘔吐してしまった。
そしてゲェゲェと全ての胃液をぶち撒けると、胃と共に頭はスッキリとし、直ぐに頭に浮かぶのはサンの事だ。
「 ────っサン!!! 」
俺はそのまま走って走って、先ほどとは違う様な気がする景色に違和感を覚えながら、ハウスがあった場所へと走った。
しかし、街の中心地からかなり外れていたハウスは確かに自然豊かな場所にあったが、今走っている景色はそれとは別物で……ここはまるで深い森の中の様だ。
「 ────ハァっハァっ!!サン、サン、サン!! 」
それでも頭の中は、隠したサンのことで一杯で……そんな変化も目に入らない。
そしてハウスがあったはずの場所へ着くと……目に映るモノが信じられなくて、呆然と立ち尽くした。
そこには建物……などはなく、殆ど腐っている柱や金属?の様なものが、申し訳ない程度に散らばっていただけだったからだ。
「 えっ……ハ、ハウスは……? 」
ヨロヨロしながら、更にその場所に近づいていくと、かなり古い建物の跡地であることは分かるが……何が建っていたのか分からないくらい朽ち果てている。
「 な……何でこんな……。サン……。 」
無駄だと分かっていても、俺はその跡地の土を掘ったり、そこら中に生えている草を引き抜いたりしてみたが、俺がいたハウスの何かに繋がるようなモノは出てこなかった。
もしかしてハウスごと焼かれてしまったのだろうか?
いや、そもそも何で俺は生きてる……?
殴られた場所をペタペタと触りながら混乱していると、最後に聞こえた時計の歯車の様な音と────そして、男だか女だか分からない " 声 " のことを思い出す。
《 ギフトの【 渡り鳥 】のスキル条件を満たしました。
これよりスキル< 時渡り( 未来 ) >を発動し、肉体を完全再生し1000年後の未来へ渡ります。 》
「 1000年……そ、そんな……バカな……。 」
あり得ないと笑い飛ばそうとしたが、今でもハッキリと覚えている死の感覚が、それを完全な笑い話にしてくれない。
しかし信じるには自分の中の常識が邪魔をする。
「 そ、そうだ……!街に行ってみれば何か分かるかも……!
サンの目撃情報もあるかもしれないし……。 」
フラッ……と立ち上がった俺は、そのまま街があった方角へとおぼつかない足取りで歩いて行った。
「 な……なんだ……?これ…… 」
街があったはずの場所に辿り着いた俺の目に写る景色。
それを前に、俺はガクンっと膝から崩れ落ちてしまう。
目の前に広がるのは街……ではなく巨大な湖だった。
海と間違えそうなくらい巨大なモノで、一日二日でできる様なモノではない。
震えながら透き通った湖を覗き込むと、そこは深くてどこまで続いているか分からず、まるで地獄まで繋がっているのでは?と思ってしまう程であった。
「 まさか本当にここは……1000年後の世界……なのか? 」
愕然としながら頭をぐるぐると回ったのは、これからどうしようとか、突然1000年後に飛んでしまった不安とかじゃなく……やっぱりサンの事だった。
「 ……アイツ、ちゃんとあの後逃げ切れたのかな……。
逃げ切れても、多分長くは生きられなかったと思うけどさ……。 」
サンの最後を想い、鼻の奥がツーン……と痛くなってきて、ポロポロと目から涙が落ちていく。
「 サンは……もういないのかぁ~……。 」
口に出すと余計にその事実は重く絶望としてのし掛かり、その場で突っ伏すと、わーんわーん!と大声で泣いた。
「 なんで1000年なんだよ!!
渡り人のバッカヤロォォォォ────!!!
普段役立たずのポンコツギフトォォォ────────!!! 」
クソみたいな人生の終わりに、更にクソみたいなこんなスキル!
本当に本当に酷すぎる!!
ギャーギャーと泣き叫んでいると、突然頭の中で大きな警戒音が鳴った。
《 警告!警告!
現在ある一定以上のステータスを持つ人型生物が接近中。
約90秒後にコチラに到着します。》
< 渡り人のギフトスキル >
【 危険察知( EX )】
ありとあらゆる自分の生命の危機を余裕を持ったタイミングで察知し、それを回避する事ができる行動を瞬時に頭の中で思いつく事ができる頭脳系スキル
────────えっ!!!??
またしても男だか女だか分からない声が頭の中に響き、ギョッとする。
どうしようどうしよう!
オタオタと焦っていると、突然自分の中にある力を感じ、それを自然に発動した。
< 渡り人のギフトスキル >
【 インビシブルスタイル( EX ) 】
自身の存在を透明にする特殊隠密スキル
何者にもこれを見破る事はできない
自分の体が透明になったのに驚いていると、突然蹄の音が直ぐそばまで聞こえ、なんと甲冑を着た騎士の様な男達がゾロゾロと到着した。
驚き、口を押さえて動かずにいると、その男達はキョロキョロと周囲を見渡した後、喋り始める。
「 ……確かに男の声がしたと思ったのだが……気のせいだったか? 」
「 ほら、やっぱり気のせいだろう。
ここは『 神罰の跡地 』
この罪深き場所にわざわざ入る者はおらんだろう。 」
神罰の跡地??
罪深き場所???
男達が何を言っているのか分からず、口元を押さえたまま首を傾げた。
そしてそのまま男達の様子を伺っていると、突然全員がその場に跪く。
79
お気に入りに追加
364
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
神子ですか? いいえ、GMです。でも聖王に溺愛されるのは想定外です!
楢山幕府
BL
ゲーム会社で働く主人公は、新しくNPCの中の人として仕事することに。
全ステータスMAXのチート仕様で、宗教国家の神子になったのはいいものの、迎えてくれた聖王は無愛想な上、威圧的で!?
なのに相手からの好感度はMAXって、どういうことですか!?
表示バグかと思ったら、バグでもないようで???
――気づいたときには、ログアウトできなくなっていた。
聖王派と王兄派の対立。
神子を取り巻く環境は、必ずしも平穏とは言い難く……。
それでも神子として生きることを決めた主人公と、彼を溺愛する聖王のあまあまなお話。
第8回BL小説大賞にエントリーしました。受賞された方々、おめでとうございます!そしてみなさま、お疲れ様でした。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる