【本編完結】特技媚びる!の 底辺無能おっさんは1000年後の未来で自分の元奴隷に会うが……えっ?どういう事??

バナナ男さん

文字の大きさ
上 下
5 / 70
真実の表側

4 【 腐色病 】

しおりを挟む
パーティーが依頼を受けた時の俺の役割は《 荷物持ち 》

依頼を終了するまでの全員分の荷物持ちと、討伐したモンスターの解体やその他全ての雑用は俺の仕事。

この仕事、まぁ正直言えば非常にキツイのだが────その分手に入るモノも多く、端金にしかならないモンスターの素材は全て俺のモノにしてよいと言われているため、持って帰れるだけ持って帰り、ギルドで換金する事が許されているのだ。


「 ゴブリンなら< 魔力核 >は小さくて売れないからって、ヒュード達は捨ててくからな。

数を集めれば、結構な稼ぎになるぞ! 」



< 魔力核 >

人間で言う心臓部分の様な器官

強いモンスター程強い魔力を含んでいるため、冒険者ギルドで買い取って貰える


< 魔力 >

主に魔法を使う際に使われる動力源の事

他にも特殊能力を使う際も必要となる



馬車に乗り込んだ俺達パーティーメンバーと依頼主である商会の男は、目撃情報に従い森の奥地へと向かったが、攻撃スキルを持たない俺と商会の男は、ある程度の所で止めた馬車の横で待機することに。

討伐するためゴブリンの気配を探りながら更に森の奥へ潜っていったヒュード達を見送り、俺は緊張を解いて、んん~!と背中を伸ばした。


そしていつヒュード達が戻ってきてもいいように、直ぐに焚き火を燃やし暖かいスープを作ると、商会の男性が貴重な胡椒をそれに振りかけてくれて、そのまま二人でスープを飲みながら話し込む。


「 ゴブリンの襲撃とは、ついてなかったですね~。 」


「 本当に最悪ですよ。

他国で仕入れた珍しい宝石類だけでも回収できればいいのですが……。

戦闘奴隷として売り出そうと買った犯罪者達も、根こそぎ殺されました。

ゴブリンは、強そうな人間の雄は真っ先に殺しますからね。

まぁ、元々かなりの安値で買い取ったので、大して損はしてませんし、それにそいつ等が餌になってくれたからこそ無事に逃げれたので、結果的に良かったですけど。 」


ヤレヤレと肩をすくめる男性の話しに少々ゾッとするモノが背中を走る。

この男性は依頼を出した商会の会長さんで、商品の回収をしっかり確認するためにと依頼についてきた変わり者。

馬車の中でも色々な話を聞かせてもらったが、悪い人ではない極一般的な感性を持つ人だと思う。

そんな人にとっても奴隷は人ではない扱いで、その死に対しなんにも思っていないという事実に少しだけ恐怖を抱いた。


「 ……へ、へぇ~!奴隷も買っていたのですか!

犯罪者というと……盗賊か何かですか? 」


「 えぇ、たまたま他国からの帰り道によった街で、人身売買をしようとしていた大規模な盗賊団が捕まったんですよ。

そいつらはその前に村を一つ滅ぼして、女子供を全て奴隷として売り出そうとしたようですが、欲を掻きすぎて見つかってしまったようですね。

自分が奴隷になって、最後はゴブリンのおもちゃになっちゃうなんて……随分皮肉な話ですよね~。 」


男はペラペラと笑いながら話したが、突然笑いを止めて「 そういえば……。 」と何かを思い出したかの様に話し始める。


「 その奴隷達の中に、一人だけ【 腐色病 】を患っている青年がいたんですよ。

話は聞いた事がありましたが、実際に見たのは初めてでした。


なんでも街の近くの森でフラフラしていた所を守衛が捕まえたそうで……犯罪者達を安く譲る条件で、恐ろしいからソレも持っていってくれと頼まれたのです。


だから一応隷属魔法を掛けて一緒に運んでいましたが、多分彼もゴブリンに……。

……少し可哀想ですが、病気で苦しみながら短い人生を終えるはずだったでしょうし、一瞬で死ねたなら幸運だったといえるでしょう。 」



しみじみと語る男は、そのまま俺が差し出したお茶を飲みながらフゥ~……と息を吐き出した。


【 腐色病 】

原因は詳しくは分かっていないが、ある日突然発病する奇病だと言われていて、発病すれば致死率は100%。

体の一部がジワジワと腐っていき、最後は苦痛と共に死ぬ。


遅効性の病気であるため、初期は痺れる様な痛みと共に生活を強いられ、末期は酷い痛みと共に腐っていく体を見続けなければならない。


その壮絶な症状から誰が言ったか《 神罰の証明痕 》


生まれる前、天のお空にいた時に神の怒りに触れた大罪人が患う病気ではないか?

……な~んて、囁かれているこの病気は、一般的には恐怖や差別の対象となり、見つかれば罵倒され石を投げられる。

伝染ったりしない事は分かっているのだが、近づけば穢れると言われ即座に殺すべきだとされていた時代もあったそうだが────不思議な事になかなか殺す事ができないのだとか。


更に滅多にお目に掛かれない奇病であるため、かつて見世物小屋で買い取った事例もあるが、そいつがいるだけで周りに不幸が訪れると噂が広がり、直ぐに破棄したと聞いた事がある。


そんな非常に珍しい【 腐色病 】という恐ろしい病を患った青年。

病の所為でいつ死ぬかもしれないという不安と恐怖の中、周りからは迫害されて……その孤独は一体如何程のものなのだろう。


……辛いよなぁ。


ズキッと痛む胸を誤魔化す様にパンパンと叩きながら、自分の夢である ” 奴隷を買って八つ当たり ” が思い浮かんだ。


すると、何だか自分が恥ずかしい存在の様に感じ、心は重ダルくなったが、直ぐにハッ!とする。


いいじゃん、いいじゃん!

それが ” 普通 ” だもんな!皆やってる事なんだから!


両頬をバチンッ!と叩くと、頭を振って暗くなりそうだった考えを散らした。


運が良いか悪いかで人生は決まって、それに従って生きていくしかないんだから、俺のやろうとしている事だって全然間違ってないんだ!


勢いよくフンッ!と鼻息を吹き出す俺を見て、商会の会長さんはキョトンとしたが、俺はそれからも沢山の質問をし、和気あいあいとおしゃべりを続ける。


しかしそれから直ぐに離れた所から依頼終了の煙柱が上がったので、俺達は喋るのをやめて馬車に乗り込み、その場所まで馬を走らせていった。

しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

急に運命の番と言われても。夜会で永遠の愛を誓われ駆け落ちし、数年後ぽい捨てされた母を持つ平民娘は、氷の騎士の甘い求婚を冷たく拒む。

石河 翠
恋愛
ルビーの花屋に、隣国の氷の騎士ディランが現れた。 雪豹の獣人である彼は番の匂いを追いかけていたらしい。ところが花屋に着いたとたんに、手がかりを失ってしまったというのだ。 一時的に鼻が詰まった人間並みの嗅覚になったディランだが、番が見つかるまでは帰らないと言い張る始末。ルビーは彼の世話をする羽目に。 ルビーと喧嘩をしつつ、人間についての理解を深めていくディラン。 その後嗅覚を取り戻したディランは番の正体に歓喜し、公衆の面前で結婚を申し込むが冷たく拒まれる。ルビーが求婚を断ったのには理由があって……。 愛されることが怖い臆病なヒロインと、彼女のためならすべてを捨てる一途でだだ甘なヒーローの恋物語。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACより、チョコラテさまの作品(ID25481643)をお借りしています。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。

婚約破棄を傍観していた令息は、部外者なのにキーパーソンでした

Cleyera
BL
貴族学院の交流の場である大広間で、一人の女子生徒を囲む四人の男子生徒たち その中に第一王子が含まれていることが周囲を不安にさせ、王子の婚約者である令嬢は「その娼婦を側に置くことをおやめ下さい!」と訴える……ところを見ていた傍観者の話 :注意: 作者は素人です 傍観者視点の話 人(?)×人 安心安全の全年齢!だよ(´∀`*)

処理中です...