【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん

文字の大きさ
上 下
13 / 17

13 嫁取り当日

しおりを挟む
~嫁取り当日~


とうとう本日で嫁取りはおしまい。

もうすぐ白いドレスとベールを羽織った女性参加者達が、ここへと集団でやってくる。


そしてこの未開拓地を見て回るのだが、その間、俺達男性参加者達は自分の建てた家と皿の上の貢物を必死にアピールするのだ。


それに興味を惹かれると、女性参加者達は立ち止まってくれるので、今度は自分の皿の中のモノを差し出すのだが、ここで受け取ってもらえれば仮婚約成立。

そのまま皿の上のモノを次々と差し出しては、それを受け取ってもらい、その後は家へとご招待する。

そして、女性が家に入ってくれれば正式な婚約が成立だ。


そのまま卵下ろしの儀式に突入して朝を迎えれば、結婚成立となる。


その後は愛の証である赤ちゃんが入った卵が玄関に置かれているので、卵は女性がその家で育て、男性は家に食料や資源を生涯届け続けるというわけだ。


周りの皆はソワソワしながら、髪をとかしたり服の埃を丹念にとったりと、少しでもよく見せる様に努力していた。


俺も勿論最低限綺麗に……と、髪を撫で付けたが────直ぐ近くにアレンという圧倒的存在が側にいるため、その手も止まる。


……いっそ今までの仕返しに、ドドリアンの実を体に擦り付け、アレンの側に立ってやろうか。


< トドリアンの実 >

サッカーボールほどの大きさのトゲトゲしたフルーツ

中身はまろやかで美味しいが、とにかく外皮が臭く、近づくのすら嫌がる


フッ!と薄暗い気持ちが顔を出すが、そんな事をしてしまえば、意地悪アレンと同種になってしまう。

首を振って、自分を綺麗にする努力をし続けた。


「 これよりお嫁周回、開始しまーす!

男性参加者はアピール準備を開始してくださーい! 」


先に到着した教会の神官達が俺たちの居住場所に来て宣言をしたため、その場に緊張が走る。


とうとう来た!

この時が……。


ドキドキしながら、お嫁さんの到着を待つと……白いベールをはためかせ、それはそれは美しい女性の集団がゾロゾロと到着した。


「 おおー…… 」


「 う、美しすぎる~! 」


男性参加者は、全員ポケ~としながら白いドレスの集団を見つめ、勿論俺もそのあまりの美しさに見惚れてしまう。


その中でも先頭を歩く女性は特に神がかりな美しさを持っていて、歩く姿はまるで女神の様に神々しい。

しかもその外見にふさわしく、仕草の一つ一つも洗練された上品さを感じる。


お嫁候補ナンバーワンのアンジェ様だ。


まさに高嶺の花……いや、天上の女神様の様。


「 ……うわぁ~……。 」


これを見れただけでも参加して良かった。

そう思うほど煌びやかな女性集団を見つめていたが、他の皆んなは直ぐに独自のアピールを直ぐに開始する。


「 俺は手先が器用でーす!

アクセサリーなどなら、誰もが羨むモノを作れまーす! 」


「 俺は火属性魔法が得意なので~お肉の焼き具合は誰にも負けませーん!

レア、ミディアム、なんでもあれ! 」


キラキラ光るアクセサリーをこれでもかと女性集団に見せたり、お肉を焼いて目を惹こうとする参加者。

他にも、それぞれの強みを全面に出してくる参加者達だったが、女性達の目は真っ直ぐアレンを見つめていた。


それに伴って、当然真隣……というか、穴である俺の家はアレンの家にめり込んでいる形で存在するため、注目を集めるが……。


「 えぇー……ここ、アレンさんの家のゴミ穴じゃない? 」


「 変な匂いする~。カビ臭~い!早く行こ! 」


サササー!と足早に去っていくお嫁候補達を見て……見事にトドメを刺された俺は、その場に崩れ落ちた。


清々しい程の完敗……。

男としてダントツ最底辺……。


ここまで完璧な敗北を知れば、もはやアレンがどんなにキラキラしててもどうでもいい。


こうして人生って、一つ一つ自分ってモノを受け入れていくんだろうな……。


人生を悟り、俺はゆっくり顔を上げてアレンが立っている場所を見た。

するとアレンは、作業台の様な机の上の前に巨大な霜降り肉をデンっ!と置く。


「 あの大きさ……光沢……脂身の形……。

間違いないわ。ドラゴンの肉よ! 」


キラっ!とお嫁候補者達の目が光る。


ドラゴンと言えば、見たら終わりと言われるほどのすごく強い厄災レベルのモンスターなのだが……アレンは、まるでそこら辺の虫を払う様に倒してしまう。

以前、邪魔だと言う理由で倒した時など、その死骸はこの国で一番偉い王様に献上され、お城にご招待されたのだが……アレンは無視した。

激怒した王様は、なにやらおっかない報復をすべく兵士を差し向けたのだが、それもまさに虫を払うかの様にアレンによって全滅。

真っ白になって立ち尽くす王様やお偉いさんに向かい、アレンは淡々と言葉を掛けた。



「 邪魔。消えろ。二度と顔を見せるな。 」



それから一切の音沙汰がないため、王様達は忠実にアレンのお願いという名の命令を聞いている様だ。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アルファな俺が最推しを救う話〜どうして俺が受けなんだ?!〜

車不
BL
5歳の誕生日に階段から落ちて頭を打った主人公は、自身がオメガバースの世界を舞台にしたBLゲームに転生したことに気づく。「よりにもよってレオンハルトに転生なんて…悪役じゃねぇか!!待てよ、もしかしたらゲームで死んだ最推しの異母兄を助けられるかもしれない…」これは第二の性により人々の人生や生活が左右される世界に疑問を持った主人公が、最推しの死を阻止するために奮闘する物語である。

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする

拍羅
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。 前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち… でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ… 優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。

彼はオレを推しているらしい

まと
BL
クラスのイケメン男子が、なぜか平凡男子のオレに視線を向けてくる。 どうせ絶対に嫌われているのだと思っていたんだけど...? きっかけは突然の雨。 ほのぼのした世界観が書きたくて。 4話で完結です(執筆済み) 需要がありそうでしたら続編も書いていこうかなと思っておいます(*^^*) もし良ければコメントお待ちしております。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

【完結】トルーマン男爵家の四兄弟

谷絵 ちぐり
BL
コラソン王国屈指の貧乏男爵家四兄弟のお話。 全四話+後日談 登場人物全てハッピーエンド保証。

楽な片恋

藍川 東
BL
 蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。  ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。  それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……  早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。  ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。  平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。  高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。  優一朗のひとことさえなければ…………

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...