【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん

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6 嫁取り

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◇◇◇◇


嫁取りの儀式の始まり。

開会式は朝の六時に、教会の前の集会場にて行われる。


────カラーンコロ~ン!


教会の鐘が、朝日と共に鳴らされ、俺はシュパッ!とベッドから飛び起きた。


「 よ~し!今日から半年!頑張るぞ────!! 」


窓を開けて ” えいえいおー! ” と叫び終わると、自作の畑へ走ってキノコをもぎ取り、そのまま台所へ向かう。

そしてちょうど起きてきた母さんとレアと共に、朝ご飯を作ると、全員で ” 頂きます ” をしたのだが、何だか二人は気まずそうな顔で俺をチラチラ見てきた。


「 なんだよ~俺の顔ジロジロ見て。

もっとキノコとってきてやろうか? 」


「 ううん。いらない。

それより、お兄ちゃん……本当に ” 嫁取り ” に参加するの? 」


レアはジト~とした目で言ってきたので、俺は大きく頷いて肯定する。


「 うん、勿論!俺、頑張るよ。

そんで、もしも俺なんかを選んでくれる女神みたいな子がいたら、一生その子のために頑張って働くんだ。

畑で。 」


「 ────いや~だからさ~……。 」


言い淀むレアが次第に口を閉ざすと、母さんがふぅ……とため息をついて言った。


「 あのね、ほら……。私はやっぱり< エデンフィールド >に行って欲しいのよ。

はっきり言うと、チリルは絶対お嫁さんを取れないわ。

そもそも戦闘能力がなくて、お嫁さんとのお目見えの日まで生き残る事も難しいと思う……。

母さん、チリルに死んでほしくないのよ。 」


しんみりしてしまった母さんを見て、俺も気分がガンっ!と下がったが……俺は視線をしっかりと上げたまま、母さんに頭を下げる。


「 親不孝な息子でごめん。

でも、俺、やっぱり頑張ってみたい。


きっとこのままエデンに行ったら、一生後悔すると思うから。 」


エデンは、確かに自分の好きな事を突き詰めて人生を楽しむ事ができるかもしれない。

でも俺は贅沢だと思うけど、そういう時に自分の唯一の人がいてほしいのだ。


お互い助け合って、補いあって、それで愛情を一緒に育てたい。


一人は本当に寂しいから、例え死ぬかもしれないと言われても、頑張って探し続けたいと思う。

フンッ!と勢いよく鼻息を吹く俺を見て、母さんは頭を抱えた。


「 全くもう~……。あんたは本当に変わり者なんだから。

女の私にとって嫁取りは、生きるための手段だったから、あんたの気持ちは分からないけど……まぁ、良いお嫁さん取れるといいわね。 」


「 ……うん。頑張るよ。 」


母さんはちなみに序列5位のハーレム嫁さん。

俺とリアの父親は、今はナンバー1と2のお嫁さん達の間をウロウロして、幸せに?暮らしているらしい。

勿論5位の母さんにも、毎月十分な給金と差し入れが父さんからは送られていて、生活に困った事はいままでない。


それもそのはず!

この生活が困窮する事になったら、その男の人は【 ヘルフィールド 】という強制労働所へと送られるので、自分の力量以上の嫁は取らないのが絶対ルールなのだ。


この世界での絶対価値観は、男性はどれだけ沢山のお嫁さんを取れるか、そして女性は如何に地位の高い強い男の嫁になれるかだ。


そんな価値観からはみ出るどころか飛び出している俺には、母さんの言う通り可能性はゼロだろうなと思う。

それに……ただでさえ今年はアレンという最強のライバルが参戦するため、マイナスに振り切れているはずだ。


アレンを思い出し、メラメラと怒りの炎を燃やす俺を見て、レアはハァ……と大きなため息をついた。


「 どうせ今年はアレンさんの一人勝ちだよ。

う~ん……。どれだけの規模のハーレムになるのかな~?

今までで最高人数は8人くらいだったけど、アレンさんなら100人は軽く行きそうよね~。

あぁ~私も入りた~い!来年追加のお嫁狙いで行くわ! 」


アレンの事を思い出しているのか、レアはうっとりとしながら顔を赤らめる。


100人……。

そんなにいては、毎日日替わりに会いに行っても100日かかってしまう……。


それってなんだかな……と思ってしまうのは、やっぱり俺が変わった考え方をしているからだろうか……?


「 取られる方のお嫁さんの方も、中々熾烈な戦いになりそうだな……。 」


「 そりゃそうよ~!ナンバー入りを賭けて、もう今からバチバチしてるから!

お嫁取りは、男も女も過酷な試練だからね。

これからお嫁候補達も、吐くほど厳しい嫁修行の毎日が始まるんだから。 」


「 そ、そっか~……。 」


取られる嫁にとってもお嫁取りは命掛け!

より良い男をゲットし、更にそんな優秀な男を公私ともに支えるための、それはそれは厳しい教育が始まる。


マナーや処世術、ご近所やハーレム仲間たちとのコミュニケーション能力に、財産管理のための算術や運営方法などなど……。


世知辛い世の中に、冷たい風がヒュルル~♬と通り抜けていった。


朝ごはんを食べ終わった俺は、母さんとレアにお別れを告げ、そのまま玄関の外へ。

そして門の前に立ち、これから始まるであろう過酷な日々を想う。


もしかしたら死んじゃうかもしれないし、多分お嫁さんには見向きもされない。


でもこの一歩は────俺の大事な未来への第一歩だ!


大きく足を前に出した、その瞬間────。


「 ────は?チリル、こんな日にどこに行くつもりなの? 」


底冷えする様な声が隣の家からして────俺は派手にずっこけた。
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