6 / 17
6 嫁取り
しおりを挟む
◇◇◇◇
嫁取りの儀式の始まり。
開会式は朝の六時に、教会の前の集会場にて行われる。
────カラーンコロ~ン!
教会の鐘が、朝日と共に鳴らされ、俺はシュパッ!とベッドから飛び起きた。
「 よ~し!今日から半年!頑張るぞ────!! 」
窓を開けて ” えいえいおー! ” と叫び終わると、自作の畑へ走ってキノコをもぎ取り、そのまま台所へ向かう。
そしてちょうど起きてきた母さんとレアと共に、朝ご飯を作ると、全員で ” 頂きます ” をしたのだが、何だか二人は気まずそうな顔で俺をチラチラ見てきた。
「 なんだよ~俺の顔ジロジロ見て。
もっとキノコとってきてやろうか? 」
「 ううん。いらない。
それより、お兄ちゃん……本当に ” 嫁取り ” に参加するの? 」
レアはジト~とした目で言ってきたので、俺は大きく頷いて肯定する。
「 うん、勿論!俺、頑張るよ。
そんで、もしも俺なんかを選んでくれる女神みたいな子がいたら、一生その子のために頑張って働くんだ。
畑で。 」
「 ────いや~だからさ~……。 」
言い淀むレアが次第に口を閉ざすと、母さんがふぅ……とため息をついて言った。
「 あのね、ほら……。私はやっぱり< エデンフィールド >に行って欲しいのよ。
はっきり言うと、チリルは絶対お嫁さんを取れないわ。
そもそも戦闘能力がなくて、お嫁さんとのお目見えの日まで生き残る事も難しいと思う……。
母さん、チリルに死んでほしくないのよ。 」
しんみりしてしまった母さんを見て、俺も気分がガンっ!と下がったが……俺は視線をしっかりと上げたまま、母さんに頭を下げる。
「 親不孝な息子でごめん。
でも、俺、やっぱり頑張ってみたい。
きっとこのままエデンに行ったら、一生後悔すると思うから。 」
エデンは、確かに自分の好きな事を突き詰めて人生を楽しむ事ができるかもしれない。
でも俺は贅沢だと思うけど、そういう時に自分の唯一の人がいてほしいのだ。
お互い助け合って、補いあって、それで愛情を一緒に育てたい。
一人は本当に寂しいから、例え死ぬかもしれないと言われても、頑張って探し続けたいと思う。
フンッ!と勢いよく鼻息を吹く俺を見て、母さんは頭を抱えた。
「 全くもう~……。あんたは本当に変わり者なんだから。
女の私にとって嫁取りは、生きるための手段だったから、あんたの気持ちは分からないけど……まぁ、良いお嫁さん取れるといいわね。 」
「 ……うん。頑張るよ。 」
母さんはちなみに序列5位のハーレム嫁さん。
俺とリアの父親は、今はナンバー1と2のお嫁さん達の間をウロウロして、幸せに?暮らしているらしい。
勿論5位の母さんにも、毎月十分な給金と差し入れが父さんからは送られていて、生活に困った事はいままでない。
それもそのはず!
この生活が困窮する事になったら、その男の人は【 ヘルフィールド 】という強制労働所へと送られるので、自分の力量以上の嫁は取らないのが絶対ルールなのだ。
この世界での絶対価値観は、男性はどれだけ沢山のお嫁さんを取れるか、そして女性は如何に地位の高い強い男の嫁になれるかだ。
そんな価値観からはみ出るどころか飛び出している俺には、母さんの言う通り可能性はゼロだろうなと思う。
それに……ただでさえ今年はアレンという最強のライバルが参戦するため、マイナスに振り切れているはずだ。
アレンを思い出し、メラメラと怒りの炎を燃やす俺を見て、レアはハァ……と大きなため息をついた。
「 どうせ今年はアレンさんの一人勝ちだよ。
う~ん……。どれだけの規模のハーレムになるのかな~?
今までで最高人数は8人くらいだったけど、アレンさんなら100人は軽く行きそうよね~。
あぁ~私も入りた~い!来年追加のお嫁狙いで行くわ! 」
アレンの事を思い出しているのか、レアはうっとりとしながら顔を赤らめる。
100人……。
そんなにいては、毎日日替わりに会いに行っても100日かかってしまう……。
それってなんだかな……と思ってしまうのは、やっぱり俺が変わった考え方をしているからだろうか……?
「 取られる方のお嫁さんの方も、中々熾烈な戦いになりそうだな……。 」
「 そりゃそうよ~!ナンバー入りを賭けて、もう今からバチバチしてるから!
お嫁取りは、男も女も過酷な試練だからね。
これからお嫁候補達も、吐くほど厳しい嫁修行の毎日が始まるんだから。 」
「 そ、そっか~……。 」
取られる嫁にとってもお嫁取りは命掛け!
より良い男をゲットし、更にそんな優秀な男を公私ともに支えるための、それはそれは厳しい教育が始まる。
マナーや処世術、ご近所やハーレム仲間たちとのコミュニケーション能力に、財産管理のための算術や運営方法などなど……。
世知辛い世の中に、冷たい風がヒュルル~♬と通り抜けていった。
朝ごはんを食べ終わった俺は、母さんとレアにお別れを告げ、そのまま玄関の外へ。
そして門の前に立ち、これから始まるであろう過酷な日々を想う。
もしかしたら死んじゃうかもしれないし、多分お嫁さんには見向きもされない。
でもこの一歩は────俺の大事な未来への第一歩だ!
大きく足を前に出した、その瞬間────。
「 ────は?チリル、こんな日にどこに行くつもりなの? 」
底冷えする様な声が隣の家からして────俺は派手にずっこけた。
嫁取りの儀式の始まり。
開会式は朝の六時に、教会の前の集会場にて行われる。
────カラーンコロ~ン!
教会の鐘が、朝日と共に鳴らされ、俺はシュパッ!とベッドから飛び起きた。
「 よ~し!今日から半年!頑張るぞ────!! 」
窓を開けて ” えいえいおー! ” と叫び終わると、自作の畑へ走ってキノコをもぎ取り、そのまま台所へ向かう。
そしてちょうど起きてきた母さんとレアと共に、朝ご飯を作ると、全員で ” 頂きます ” をしたのだが、何だか二人は気まずそうな顔で俺をチラチラ見てきた。
「 なんだよ~俺の顔ジロジロ見て。
もっとキノコとってきてやろうか? 」
「 ううん。いらない。
それより、お兄ちゃん……本当に ” 嫁取り ” に参加するの? 」
レアはジト~とした目で言ってきたので、俺は大きく頷いて肯定する。
「 うん、勿論!俺、頑張るよ。
そんで、もしも俺なんかを選んでくれる女神みたいな子がいたら、一生その子のために頑張って働くんだ。
畑で。 」
「 ────いや~だからさ~……。 」
言い淀むレアが次第に口を閉ざすと、母さんがふぅ……とため息をついて言った。
「 あのね、ほら……。私はやっぱり< エデンフィールド >に行って欲しいのよ。
はっきり言うと、チリルは絶対お嫁さんを取れないわ。
そもそも戦闘能力がなくて、お嫁さんとのお目見えの日まで生き残る事も難しいと思う……。
母さん、チリルに死んでほしくないのよ。 」
しんみりしてしまった母さんを見て、俺も気分がガンっ!と下がったが……俺は視線をしっかりと上げたまま、母さんに頭を下げる。
「 親不孝な息子でごめん。
でも、俺、やっぱり頑張ってみたい。
きっとこのままエデンに行ったら、一生後悔すると思うから。 」
エデンは、確かに自分の好きな事を突き詰めて人生を楽しむ事ができるかもしれない。
でも俺は贅沢だと思うけど、そういう時に自分の唯一の人がいてほしいのだ。
お互い助け合って、補いあって、それで愛情を一緒に育てたい。
一人は本当に寂しいから、例え死ぬかもしれないと言われても、頑張って探し続けたいと思う。
フンッ!と勢いよく鼻息を吹く俺を見て、母さんは頭を抱えた。
「 全くもう~……。あんたは本当に変わり者なんだから。
女の私にとって嫁取りは、生きるための手段だったから、あんたの気持ちは分からないけど……まぁ、良いお嫁さん取れるといいわね。 」
「 ……うん。頑張るよ。 」
母さんはちなみに序列5位のハーレム嫁さん。
俺とリアの父親は、今はナンバー1と2のお嫁さん達の間をウロウロして、幸せに?暮らしているらしい。
勿論5位の母さんにも、毎月十分な給金と差し入れが父さんからは送られていて、生活に困った事はいままでない。
それもそのはず!
この生活が困窮する事になったら、その男の人は【 ヘルフィールド 】という強制労働所へと送られるので、自分の力量以上の嫁は取らないのが絶対ルールなのだ。
この世界での絶対価値観は、男性はどれだけ沢山のお嫁さんを取れるか、そして女性は如何に地位の高い強い男の嫁になれるかだ。
そんな価値観からはみ出るどころか飛び出している俺には、母さんの言う通り可能性はゼロだろうなと思う。
それに……ただでさえ今年はアレンという最強のライバルが参戦するため、マイナスに振り切れているはずだ。
アレンを思い出し、メラメラと怒りの炎を燃やす俺を見て、レアはハァ……と大きなため息をついた。
「 どうせ今年はアレンさんの一人勝ちだよ。
う~ん……。どれだけの規模のハーレムになるのかな~?
今までで最高人数は8人くらいだったけど、アレンさんなら100人は軽く行きそうよね~。
あぁ~私も入りた~い!来年追加のお嫁狙いで行くわ! 」
アレンの事を思い出しているのか、レアはうっとりとしながら顔を赤らめる。
100人……。
そんなにいては、毎日日替わりに会いに行っても100日かかってしまう……。
それってなんだかな……と思ってしまうのは、やっぱり俺が変わった考え方をしているからだろうか……?
「 取られる方のお嫁さんの方も、中々熾烈な戦いになりそうだな……。 」
「 そりゃそうよ~!ナンバー入りを賭けて、もう今からバチバチしてるから!
お嫁取りは、男も女も過酷な試練だからね。
これからお嫁候補達も、吐くほど厳しい嫁修行の毎日が始まるんだから。 」
「 そ、そっか~……。 」
取られる嫁にとってもお嫁取りは命掛け!
より良い男をゲットし、更にそんな優秀な男を公私ともに支えるための、それはそれは厳しい教育が始まる。
マナーや処世術、ご近所やハーレム仲間たちとのコミュニケーション能力に、財産管理のための算術や運営方法などなど……。
世知辛い世の中に、冷たい風がヒュルル~♬と通り抜けていった。
朝ごはんを食べ終わった俺は、母さんとレアにお別れを告げ、そのまま玄関の外へ。
そして門の前に立ち、これから始まるであろう過酷な日々を想う。
もしかしたら死んじゃうかもしれないし、多分お嫁さんには見向きもされない。
でもこの一歩は────俺の大事な未来への第一歩だ!
大きく足を前に出した、その瞬間────。
「 ────は?チリル、こんな日にどこに行くつもりなの? 」
底冷えする様な声が隣の家からして────俺は派手にずっこけた。
96
お気に入りに追加
211
あなたにおすすめの小説
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果
はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。
竜王陛下、番う相手、間違えてますよ
てんつぶ
BL
大陸の支配者は竜人であるこの世界。
『我が国に暮らすサネリという夫婦から生まれしその長子は、竜王陛下の番いである』―――これが俺たちサネリ
姉弟が生まれたる数日前に、竜王を神と抱く神殿から発表されたお触れだ。
俺の双子の姉、ナージュは生まれる瞬間から竜王妃決定。すなわち勝ち組人生決定。 弟の俺はいつかかわいい奥さんをもらう日を夢みて、平凡な毎日を過ごしていた。 姉の嫁入りである18歳の誕生日、何故か俺のもとに竜王陛下がやってきた!? 王道ストーリー。竜王×凡人。
20230805 完結しましたので全て公開していきます。
魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される
ぶんぐ
BL
社畜リーマンは、階段から落ちたと思ったら…なんと異世界に転移していた!みんな魔法が使える世界で、俺だけ全く魔法が使えず、おまけにみんなには避けられてしまう。それでも頑張るぞ!って思ってたら、なぜか冷徹王子から口説かれてるんだけど?──
嫌われ→愛され 不憫受け 美形×平凡 要素があります。
※総愛され気味の描写が出てきますが、CPは1つだけです。
「婚約を破棄する!」から始まる話は大抵名作だと聞いたので書いてみたら現実に婚約破棄されたんだが
ivy
BL
俺の名前はユビイ・ウォーク
王弟殿下の許嫁として城に住む伯爵家の次男だ。
余談だが趣味で小説を書いている。
そんな俺に友人のセインが「皇太子的な人があざとい美人を片手で抱き寄せながら主人公を指差してお前との婚約は解消だ!から始まる小説は大抵面白い」と言うものだから書き始めて見たらなんとそれが現実になって婚約破棄されたんだが?
全8話完結
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる