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5 アレンという男

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アレンは生まれた時からなんでも出来て、俺がいまだに出来ない事だって下手したら赤ちゃんの時に出来てたくらい優秀であった。


戦闘のありとあらゆる才能に加えて、頭脳だって僅か3歳の頃に、誰一人教える者はいなくなってしまうほど……。

よってやる事が全くなくなったアレンは、ひたすら俺がヒィヒィ死ぬ思いで頑張っている姿を眺める日々になった。


人の百倍努力しても出来ない俺は、当然の様にいつもアレンと比べられる。


” アレン君はほんとになんでも出来てすごいわね!

……えっと……チリル君はもう少し頑張ろうね。”


当時憧れていた近所のお姉さんにもそう言われて、淡い恋も木っ端微塵に吹き飛んだ。


そんな思い出を振り返り、ズピピ~!と大きく鼻を啜る。

そして、目の前に落ちている巨大な角を見下ろすと、アレンに対し、だんだん怒りが込み上げてきた。


俺が死ぬ程頑張って剥ぎ取ったカブトミミズの角が壊され……こんな持つのも困難な重たい角を押し付けられた。


「 これって絶対嫌がらせだ……。

────アレンはいつもこうだ。

俺が一生懸命手に入れたモノを全部壊して……もっともっと上質な物をたいした物じゃない様に渡してくる。

きっと俺を惨めにさせて楽しんでるんだろうな……他の同級生達もそう言ってたし。 」


6歳から12歳まで通わなければいけない義務教育所である学校で、当然の如くアレンとは同級生。

その頃から勿論アレンの人気は凄くて、そんなアレンの幼馴染の俺は、不名誉なあだ名の数々をつけられた。


< 乞食男 >

< 金魚のウンチ >

そして< お手頃サンドバッグ >……。


アレンの俺に対する嫌がらせは皆の目から見ても ” ちょっと……。 ” というものが多かった様で、それでついたあだ名が< お手頃サンドバック >

皆アレンに憧れていたため、殆どの人達が俺が悪いと言ってきたが、一度だけ同情めいた声を掛けられることもあった。


“   いや~……俺はチリルは頑張ってると思うぜ?

あんな嫌がらせ一回でもやられたら、俺だったらトラウマになって自信なくなるよ……。 "


"   俺も嫌だわ……。

男のプライドズタボロだよ。

女子もそれで根こそぎ持ってかれるしさ。 "


学校に行って、いつもの様にアレンから嫌がらせを受けた際、突然同級生二人に慰められる。


そんな二人の優しさ、更に共感してもらえた事にジーン……としながら、あーだこーだと色々な話をして凄く楽しかったのだが────次の日二人は不自然に視線を逸らし、それから二度と話しかけてくれなくなってしまった。


"   な、なんで……? "


昨日何か失礼な事を言ってしまっただろうか?

その理由を必死に考えていると────突然アレンが俺の目の前まで来てこう言った。


"   ────鬱陶しい。

本当に頭にくる。


もう二度と話さないでね。 ”


多分あの二人はアレンの大事な友達。

それに、普段見下している金魚のウンチが話しかけた事で相当怒らせてしまったらしい。


しかし、そのあまりの言い草に声を奪われていると、アレンはハァ……とため息をつき、俺の提出予定の宿題を勝手に奪う。

そしてサラサラと正しい答えに書き直し、俺に押し付けた後は、不機嫌そうな様子でボソッと言った。


 "   どうせもう二度と話しかけないだろうからいいけど。 "   


その宣言通り、その日から俺に話しかけてくるのはアレンだけに。


これまで必死にぼっち生活の中、生きてきた。

だからこそ俺は────……!


「 もう、一人は嫌だ。俺はずっと俺を見てくれて一緒にいてくれる人が欲しい。

もしかしたら、奇跡的に俺の頑張りを認めてくれる……肉嫌いで野菜とキノコが大好きなお嫁さんが、いるかもしれないし!

俺は最後まで諦めないぞ! 」


うぉぉぉぉー!!!


気合満々で立ち上がると、嫌がらせで押し付けられたゴールデン・タイガーの角を放って帰ろうと思ったが……。


「 貰ったモノ捨てて帰るのは悪いか……。 」


どんなに嫌われていたって、貰った物を捨てるのはよくない。

そのため一応持って帰ろうとしたのだが……重すぎて持ち上げられない。


角の先をギュッ!と持ってズリズリ引きずり、約10cm。

持つところが尖って痛いせいだと考え、懐から縄を出してぐるぐると角に巻きつけ、一生懸命引っ張って約30cm。


ヒィヒィ悲鳴を上げながら引っ張る俺の姿は、さぞや楽しいものだったのだろう。

皆が指を指して嘲笑ってくる。


強欲だとか、意地汚いとか、そこまでして持って帰りたいのか?とか……もう悪口だらけ!

しまいには「 もう諦めろよ、見苦しい。 」とまで言われる始末だ。


でも俺は頑張る。

なんでも努力すればできるって証明してみせる!


「 ────??何遊んでるの?

ほら、早く家に帰るよ。 」


ズッ!ズッ!!と、少しずつ角を引っ張っている俺の元へ、アレンはスタスタとやって来たと思ったら……。


────ヒョイッ。


片手で軽々その角を持ち上げた。


ギャギャーン!!!

ショックでショックでブルブルと震えていると、そのままもう片手で俺も持ち上げられる。



────証明できませんでした……。


そのまま白目を剥いて気絶していると、そのまま家にポイッと捨てられた。

更に何を思ったか、巨大なゴールデン・タイガーの角を玄関の真ん前にぶっ刺してアレンは隣の家に帰っていったため、何事かとご近所に白い目で見られる。

更に孤立して悲しい。

でも俺は負けない。絶対に!


メラメラと闘志に燃えながら、毎日ジョギング!筋トレ!

ついでに、その玄関に刺さったまま放置されている角(抜けないから)をペチペチ叩いて体を鍛え、とうとう来るべき嫁取りの儀式がやってきた。
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