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29 大事なモノはしまっておく

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こんなにも輝く様な "  幸せ   "  が溢れててて、誰も彼も幸せだ!!と叫んでいるのに、自分はそう思えない。

それって結局、辿り着く先は──────


俺と同じ "   寂しい "   なのかもしれない。


そう思うと、フッと思い浮かぶのは、自分がここに召喚される直前の出来事。


自分が生まれた日に、一人で酒を買って飲んで、そして空を見上げて思ったんだ。


” 俺は誰かにとって必要な存在になれたのかな……? ”

” 寂しい ” 


────────って。



いつか俺もヒカリ君も、その ” 寂しい ” を埋めてくれる誰かと出会えるのかな?



俺は地球で、ヒカリ君は異世界で。



しんみりしてきてしまい、それに気づいた俺はパパンッ!と両頬を叩く。


人生は長いから大丈夫!

一生掛かるつもりでゆっくり探そ~っと!


そう決意して、フンッ!と鼻息を荒く吹くと、ぼんやり歩いている内に赤い栄光のロードは終わってて、気がつけば王宮の中にある大浴場であった。


あ、あれ??


いつの間に?と首を傾げる、その前に────────

べリリ────ンッ!!

服が全て破られてしまった。ヒカリ君の手によって。


「 ………………お……ううん??

…………?



おおおおおお──────────!!!?? 」



一瞬で裸にされて、驚きで思考停止。

その後は羞恥に叫び、混乱して何故か乳首を隠してしまった。


「 汚いのは直ぐに洗い流そうね。

帰るんだから。 」


” 立つ鳥跡を濁さず!

地球に帰る時は綺麗に去ろう! ”




…………


──────その通り!!


嫌いで即刻帰すつもりの俺に対しても、ヒカリ君は信念を曲げるつもりはないらしい。


” ちょっと悲しい!でも、せっかくだからツルピカに自分を磨いて帰ろう…… ” 


そう思いトボトボと浴槽に足を踏み入れようとしたその時──────同じく一瞬で真っ裸になったヒカル君にヒョイッ!と持ち上げられた。

結果床から離れてしまった足でスカスカとエアーウォークしていると、そのまま優しく抱っこされ流石の俺も目が点に。

そしてその後はまるで赤ちゃんの様に全身を丁寧に泡で洗われ、点になった目玉はポポンッ!と遥か彼方にいってらっしゃ~い!してしまった。


な、何これ~???


気がつけば、わしゃわしゃと優しく撫でる様な動きでモコモコ泡まみれに。

ヒカリ君の心情を理解しようと必死に考えていたのだが、俺の下半身をチラッと見て言われた言葉で全てを理解した。


「 イシは可愛いね。

小さくて弱くて、柔らかい……。

全部可愛い。 」


突然のシモネタを絡めた暴言に固まり、更に直ぐそこに見える全く可愛くない大きなヒカリ君のヒカリ君を見て、これが嫌がらせの延長である事を知る。


こんな陰湿な意地悪をされて……おじさん、最後まで泣きそう!!!

グスグスと鼻を啜りながら男泣きしてしまった。


するとその間にピカピカに磨かれラフなパジャマの様なモノを着せられると、その後はヒカリ君の持ち物だという王宮の一室へまるでぬいぐるみの様に運ばれる。

そしてそのままふかふか極上ベッドの上に丁寧に降ろされると、昨晩同様抱きしめられたまま眠りについた。



それから次の日の朝。

眠くてむにゃむにゃしている俺を見て上機嫌のヒカリ君は、またしても昨晩貸してくれた服を破って脱がしてくる。

昨日の暴言、かつ赤ちゃんの沐浴の様に洗われてしまった俺には、もう全裸に対する羞恥心はない。

菩薩の様にニッコリ微笑んでいると、そのままサッサッ!となにやらキラキラした金色細工が施され、更に宝石が上から下までぶどうの様にくっついた服を着せられた


──────ズシッ……


何かどっかの戦闘の民族さん達と仲間たちがこんな服着て修行していた様な…??

とにかく尋常じゃない重さに泣く。


まるでダンベル10個くらい入ってる??と言いたくなるような重さ!

子供だったら一瞬でぺちゃんこだ!


「 ヒ……ヒカリ君ヒカリ君。

何だか凄く重たいんだけど……この服は……? 」


「 イシが寝たきりの時に作らせたんだ。

最高のモノを作れっていったから、俺が採ってきた最高級の金と宝石が沢山ついてるよ。

嬉しい? 」


あまりに重くてペチャリと転びそうになるが、寸前でヒカリ君がキャッチしてくれた。

そしてそのままヒィィィ~……と弱々しく眉を下げる俺を見下げ、ヒカリ君は満足そうに笑う。


このままじゃ歩けない!


本気で困って、せめて中央にドドンと付いている巨大なダイヤモンドだけでも外して貰おうと思ったのだが……

ヒカリ君はそのまま俺をヒョイっと担ぐと、部屋の外へ。

そして出口を出て直ぐの所で、これまたドドン!と置いてあるモノを見て固まった。


「 俺、気づいたんだよね。

大事なものはしっかり管理しなきゃって……

だから急いで連絡してコレを作って貰ったんだ。

さぁ、イシ。今度からお外に行く時はここに入ろうね。 」


「 ……は、はいぃぃぃ??? 」


目の前にはちょうど大人一人入れるかな?という檻がある。

よく漫画とかで出てくる悪い人を誤送する時の鉄格子の檻。


どこからどう見てもただの檻!


しかしよく見ると、中は普通の鉄の床ではなくクッション性の高いベッドの様になっていて、枕の様なモノもちょこんと置かれているから居心地は悪くなさそう。

しかし、檻。

どう頑張って見ても本当に檻~!!

丁寧な手つきでそこに俺を入れようとするヒカリ君に対し、やっと俺は我に帰り、入り口付近の鉄格子に手を掛け中に入るのを全力で拒否した。


「 ちょっ!!ちょっ、ちょぉぉぉ──────っ!!!?

ヒカリ君、ちょっと待って!本当に本当にちょっと待って!!!

俺、こんなの入らないよ!

嫌だよ、悪い事してないのに!! 」


「 ?何言ってんの?

ちゃんと事が終わるまでそこで寝ててよ。

完全に消してやるからさ。 」


"   ムカつくおじさんに天罰を下す。

この勇者様を不快にさせたお前は、神への供物にして消してやる "


ガガ────ン!!!!

突然の殺害予告にびっくり仰天!!


そのせいで手が緩んでしまい、そのままギュムッ!と中の檻に入れられてしまった。

そして無情にもガチャン!!と鍵が閉められてしまい、俺は呆然とフカフカのその場に座り込む。


こ、殺されるほど恨まれて……?


それがショックでショックで、そのままポケ~としていると、そのままヒカリ君は檻に付いている紐を引っ張り始めた。

すると檻の下には車輪が付いていて、引っ張る方向に向かって檻はそのまま進みだす。


そうしてカラカラと車輪の規則正しい音を聞きながら、俺はそのまま王宮の祈りの間まで連れてかれてしまった。
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