19 / 35
19 あれれ?
しおりを挟む
( イシ )
「 ヒカリ君!ヒカリ君!! 」
境界線の下の大きな溝、向こう岸に繋がっていた細い糸を見事に渡り切った俺は、なんとかヒカリ君がいる側へ辿り着くことができた。
そしたら勿論全力ダッシュ!!
ヒカリ君が落ちちゃう!落ちちゃう!
慌てて遠ざかっていく背中に手を伸ばすと、ハッ!!と意識は現実世界へ。
俺は手を伸ばし、テントの天井を掴もうと指をウニョウニョ動かしていた。
ーーーーあ、あれ??
また変な夢でも見たようで一瞬ボケ~っとしてしまった後、自分が何でテントで寝ていたかを必死に思い出す。
すると途端に襲いくるのは、ムカムカとする胸焼けに、ガンガン痛む頭……
これはーーー
「 あ、二日酔いか。これ。 」
アイリーン達が何を入れたかは知らないが、多分激しく酔っ払う類の薬に違いないと確信した。
アイツらは明日……いや!一週間おやつなしだ!
流石に洒落にならないイタズラにププン!と怒っていると、さっきの夢を思い出し、突然何だか嫌な感覚が身体に走る。
しかし……
完全無敵の勇者に何があるというのか?
そう思い直すと、ないな~い!と言いながら笑って起き上がった、その時ーー
キラキラと光る細い糸が手に絡み付いているのに気がついた。
「 あ、あれ??
コレってまさか……夢の中にあった……? 」
嫌な感覚はどんどんどんどんと強くなっていき、痛む頭を押さえつけて直ぐに立ち上がる。
そしてその細い糸を視線で辿っていくと、どうやら森の方へと続いている様だった。
それが何なのか?
それを考えるより先に、俺は近くにグチャッと落ちていたびちょびちょの服を一瞬で着込み、テントの中を飛び出す。
そしてーーーーー
その糸が導くまま、全力で走っていった。
糸はどんどん森の奥へと続いて行き、周囲は薄暗くなっていったが、周りにモンスターの気配が全然しない事からヒカリ君が通った後だということが分かる。
" さすが勇者様よね~!
強すぎてモンスターの方が逃げ出すんだから! "
以前アイリーン達が目をハートにしてそう言っていた。
勇者様は凄い!
勇者様はカッコいい!
勇者様はーー勇者様はーーー……
「 我が儘!意地悪!生活力ゼロ!
気に入らないと直ぐ皿投げてくるし、俺はそのせいで毎日満身創痍だ!
でも…… 」
何だかんだ力はセーブしてくれてる事は知ってる。
久しぶりに全力で走ってゼイゼイ息を大きく乱しながら、よく皿を当てられるオデコを摩った。
だってアホみたいに強いモンスターを一撃の人がさ、俺に皿投げたら俺の体はなんて花火みたいに吹き飛ぶに決まってる。
何だかんだで俺に結界も張ってモンスターから攻撃されない様に守ってくれるし……
ご飯に文句も言わない、ちゃんと洗濯物入れに服を入れてくれるし……
苦しくてゲホゲホしながら、ニヤッと笑う。
勇者様は結構いい奴!
これでいいや!
結論をバシっ!と出した俺は、唇を噛み締め息苦しさに耐え、そのまま突っ走る!
そうしてやっとの事でヒカリ君を見つけたのだが、その前に巨大な熊と象のミックス?らしき生物の姿もその前にあった。
ーーーあっ!戦いの最中!
直ぐに邪魔にならない様にと、サササーッと近くの岩の近くに隠れ、チラッとその様子を盗み見る。
そして次の攻撃をどちらかが仕掛けた瞬間、俺は速やかに引き返さなければと思いながら、汗を拭った。
以前からキュアが言っていたが、ヒカリ君は自分の力が強すぎて相手の気配を辿るのが少し苦手なのだそうだ。
そのせいで ” 弱い!魔力ゼロ! ” の俺は結構近くにいてもほぼ気づかれない。
つまりつまり~!
戦いに巻き込まれても気づいて貰えない!
変なタイミングで気づいて、ヒカリ君が不利になっては申し訳ない。
そのためここは全力で戦線離脱しなければ……
そう思って慎重にヒカリ君の様子を伺っていたのだが……何故かヒカリ君は剣も構えないし、それどころか動かない。
…………??
そういう戦闘スタイル??
戦闘経験など小学生の頃にしたポカスカポカスカ生ぬる~く殴り合った喧嘩くらいしかした事ないため、この世界のスタンダード戦法が分からない。
そのためそういう ” 相手を油断させる為のポーズ ” か何かかと思ったのだが……突然目の前にまたあの変な夢の世界が広がって目の前にはヒカリ君の背中が。
そしてその直ぐ前にはーーー大きな崖があってそこから伸びている黒い手がヒカリ君を掴もうと一斉に手を伸ばしてきた!
「 ヒカリ君!! 」
俺はその瞬間、躊躇いなくヒカリ君の背に手を伸ばした。
◇◇◇◇
~~~~…………
ーーーパカッ……
突然意識が急上昇し、目を開けばヒカリ君の背中は消えていて……そこに映るのは真っ白な天井であった。
「 ????? 」
一瞬思考がついていかずに体を動かそうとすると……
ピキピキーーっ!!!
未だかつて味わった事がないほどの痛みが体を襲い、あえなく撃沈。
あまりの痛みに呻き声をあげながら、俺が横たわっているのが何処ぞやのフカフカベッドの上で、更にベッドの脇に誰かが座っていることに気づいた。
「 ……あれ……?ヒカリ君……。 」
座っていた人物はヒカリ君で、その顔はいつもみたいに無表情じゃなくて、何だかよく分からない顔をしている。
怒りとか悲しみとか、単体の感情では表せない感じ?というか……色々混じってて何を考えているのか分からなかった。
「 あのーーー……「 なんでさぁ…… 」
突然話を遮られて思わず黙ると、ヒカリ君はそのまま顔を下に下げていく。
だから顔が見えなくなって余計に考えている事が分からなくなってしまったが、ヒカリ君は淡々と話を続けた。
「 何であんな事したの?…………本当に馬鹿すぎて理解できない。
何であんな場所にいたか知らないけど、あんな岩ごとき当たったって、俺は傷一つつかないのに…… 」
岩と聞き、俺はやっと直前の記憶を思い出す。
そっか……俺、飛んでくる岩にぶつかって吹っ飛ばされたんだ……。
「 ヒカリ君!ヒカリ君!! 」
境界線の下の大きな溝、向こう岸に繋がっていた細い糸を見事に渡り切った俺は、なんとかヒカリ君がいる側へ辿り着くことができた。
そしたら勿論全力ダッシュ!!
ヒカリ君が落ちちゃう!落ちちゃう!
慌てて遠ざかっていく背中に手を伸ばすと、ハッ!!と意識は現実世界へ。
俺は手を伸ばし、テントの天井を掴もうと指をウニョウニョ動かしていた。
ーーーーあ、あれ??
また変な夢でも見たようで一瞬ボケ~っとしてしまった後、自分が何でテントで寝ていたかを必死に思い出す。
すると途端に襲いくるのは、ムカムカとする胸焼けに、ガンガン痛む頭……
これはーーー
「 あ、二日酔いか。これ。 」
アイリーン達が何を入れたかは知らないが、多分激しく酔っ払う類の薬に違いないと確信した。
アイツらは明日……いや!一週間おやつなしだ!
流石に洒落にならないイタズラにププン!と怒っていると、さっきの夢を思い出し、突然何だか嫌な感覚が身体に走る。
しかし……
完全無敵の勇者に何があるというのか?
そう思い直すと、ないな~い!と言いながら笑って起き上がった、その時ーー
キラキラと光る細い糸が手に絡み付いているのに気がついた。
「 あ、あれ??
コレってまさか……夢の中にあった……? 」
嫌な感覚はどんどんどんどんと強くなっていき、痛む頭を押さえつけて直ぐに立ち上がる。
そしてその細い糸を視線で辿っていくと、どうやら森の方へと続いている様だった。
それが何なのか?
それを考えるより先に、俺は近くにグチャッと落ちていたびちょびちょの服を一瞬で着込み、テントの中を飛び出す。
そしてーーーーー
その糸が導くまま、全力で走っていった。
糸はどんどん森の奥へと続いて行き、周囲は薄暗くなっていったが、周りにモンスターの気配が全然しない事からヒカリ君が通った後だということが分かる。
" さすが勇者様よね~!
強すぎてモンスターの方が逃げ出すんだから! "
以前アイリーン達が目をハートにしてそう言っていた。
勇者様は凄い!
勇者様はカッコいい!
勇者様はーー勇者様はーーー……
「 我が儘!意地悪!生活力ゼロ!
気に入らないと直ぐ皿投げてくるし、俺はそのせいで毎日満身創痍だ!
でも…… 」
何だかんだ力はセーブしてくれてる事は知ってる。
久しぶりに全力で走ってゼイゼイ息を大きく乱しながら、よく皿を当てられるオデコを摩った。
だってアホみたいに強いモンスターを一撃の人がさ、俺に皿投げたら俺の体はなんて花火みたいに吹き飛ぶに決まってる。
何だかんだで俺に結界も張ってモンスターから攻撃されない様に守ってくれるし……
ご飯に文句も言わない、ちゃんと洗濯物入れに服を入れてくれるし……
苦しくてゲホゲホしながら、ニヤッと笑う。
勇者様は結構いい奴!
これでいいや!
結論をバシっ!と出した俺は、唇を噛み締め息苦しさに耐え、そのまま突っ走る!
そうしてやっとの事でヒカリ君を見つけたのだが、その前に巨大な熊と象のミックス?らしき生物の姿もその前にあった。
ーーーあっ!戦いの最中!
直ぐに邪魔にならない様にと、サササーッと近くの岩の近くに隠れ、チラッとその様子を盗み見る。
そして次の攻撃をどちらかが仕掛けた瞬間、俺は速やかに引き返さなければと思いながら、汗を拭った。
以前からキュアが言っていたが、ヒカリ君は自分の力が強すぎて相手の気配を辿るのが少し苦手なのだそうだ。
そのせいで ” 弱い!魔力ゼロ! ” の俺は結構近くにいてもほぼ気づかれない。
つまりつまり~!
戦いに巻き込まれても気づいて貰えない!
変なタイミングで気づいて、ヒカリ君が不利になっては申し訳ない。
そのためここは全力で戦線離脱しなければ……
そう思って慎重にヒカリ君の様子を伺っていたのだが……何故かヒカリ君は剣も構えないし、それどころか動かない。
…………??
そういう戦闘スタイル??
戦闘経験など小学生の頃にしたポカスカポカスカ生ぬる~く殴り合った喧嘩くらいしかした事ないため、この世界のスタンダード戦法が分からない。
そのためそういう ” 相手を油断させる為のポーズ ” か何かかと思ったのだが……突然目の前にまたあの変な夢の世界が広がって目の前にはヒカリ君の背中が。
そしてその直ぐ前にはーーー大きな崖があってそこから伸びている黒い手がヒカリ君を掴もうと一斉に手を伸ばしてきた!
「 ヒカリ君!! 」
俺はその瞬間、躊躇いなくヒカリ君の背に手を伸ばした。
◇◇◇◇
~~~~…………
ーーーパカッ……
突然意識が急上昇し、目を開けばヒカリ君の背中は消えていて……そこに映るのは真っ白な天井であった。
「 ????? 」
一瞬思考がついていかずに体を動かそうとすると……
ピキピキーーっ!!!
未だかつて味わった事がないほどの痛みが体を襲い、あえなく撃沈。
あまりの痛みに呻き声をあげながら、俺が横たわっているのが何処ぞやのフカフカベッドの上で、更にベッドの脇に誰かが座っていることに気づいた。
「 ……あれ……?ヒカリ君……。 」
座っていた人物はヒカリ君で、その顔はいつもみたいに無表情じゃなくて、何だかよく分からない顔をしている。
怒りとか悲しみとか、単体の感情では表せない感じ?というか……色々混じってて何を考えているのか分からなかった。
「 あのーーー……「 なんでさぁ…… 」
突然話を遮られて思わず黙ると、ヒカリ君はそのまま顔を下に下げていく。
だから顔が見えなくなって余計に考えている事が分からなくなってしまったが、ヒカリ君は淡々と話を続けた。
「 何であんな事したの?…………本当に馬鹿すぎて理解できない。
何であんな場所にいたか知らないけど、あんな岩ごとき当たったって、俺は傷一つつかないのに…… 」
岩と聞き、俺はやっと直前の記憶を思い出す。
そっか……俺、飛んでくる岩にぶつかって吹っ飛ばされたんだ……。
106
お気に入りに追加
346
あなたにおすすめの小説
【R18BL】世界最弱の俺、なぜか神様に溺愛されているんだが
ちゃっぷす
BL
経験値が普通の人の千分の一しか得られない不憫なスキルを十歳のときに解放してしまった少年、エイベル。
努力するもレベルが上がらず、気付けば世界最弱の十八歳になってしまった。
そんな折、万能神ヴラスがエイベルの前に姿を現した。
神はある条件の元、エイベルに救いの手を差し伸べるという。しかしその条件とは――!?
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜
嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。
勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。
しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!?
たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
僕を愛さないで
レモンサワー
BL
母が僕を庇って、死んでしまった時から僕の生活は一変した。
父も兄も温かい目じゃなく、冷たい目で僕を見る。
僕が母を殺した。だから恨まれるのは当然。
なのにどうして、君は母親殺しの僕を愛しいと言うの?どうして、僕を愛してくれるの?
お願いだから僕を愛さないで。
だって、愛される喜びを知ってしまったら1人、孤独になった時耐えられないから。捨てられてしまった時、僕はきっと絶望してしまうから。
これは愛されなくなってしまった優しい少年が、少年のことを大事に思う人と出会い、とびきりに愛される物語。
※R15に念の為に設定していますが主人公がキスをするぐらいです。
俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!
しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎
高校2年生のちょっと激しめの甘党
顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい
身長は170、、、行ってる、、、し
ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ!
そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、
それは、、、
俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!!
容姿端麗、文武両道
金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい)
一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏!
名前を堂坂レオンくん!
俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで
(自己肯定感が高すぎるって?
実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して
結局レオンからわからせという名のおしお、(re
、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!)
ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど
なんとある日空から人が降って来て!
※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ
信じられるか?いや、信じろ
腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生!
、、、ってなんだ?
兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる?
いやなんだよ平凡巻き込まれ役って!
あーもう!そんな睨むな!牽制するな!
俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!!
※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません
※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です
※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇♀️
※シリアスは皆無です
終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる