勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん

文字の大きさ
上 下
4 / 35

4 これがハーレム……

しおりを挟む
「 勇者様~!勝負しよ~ぜ~♡ 」

「 ルーン!あんたはまた!勇者様は私と剣の素振りをするのよ!! 」

「 ええ~?勇者様は私と魔法についてのお話をするの♡邪魔しないで~ 」

「 皆さん、勇者様はお疲れですから私とお茶でもー…… 」


勇者様しか見えてないらしい四人の進行方向にいた俺はパ──ン!!と跳ね飛ばされてしまい、ゴロゴロと地面を転がってしまった。

それを周りにいた騎士達が止めてくれて、更にヒョイっと起き上がらせてくれる。

しかもパンパンと埃を払ってくれたのだが、俺は状況もわからずポカンとその突然やってきた美女軍団に視線は釘付け!

そんな俺の元へススス……と先ほどのお兄さんが近づいてきた。


「 彼女達は、勇者様と同じく神託により選ばれし仲間達でございます。

魔法使いの< メルク >さんに剣士の< アイリーン >さん。

格闘家の< ルーン >さん、回復士の< キュア >さんです。 」


お兄さんはピッ!ピッ!と美女達を順番に指差し紹介すると、それが聞こえたらしい四人はクルッと俺の方へ視線を移す。


「 そういえば何?その小汚いおじさんは。

この場所に入れるのは神託の勇者と選ばれし仲間達、そして王族と騎士達、神官達だけのはずでしょ? 」


アイリーンが腕を組みジロッ!と俺を睨みながらそう言うと、ルーンがうーん?と首を傾げる。


「 なんか変な格好してるな、おっさん!

しかも弱そ~!転んだだけで死にそうじゃん! 」


ガガ──ン!!!

面と向かって若いお嬢さんに悪口言われて凄く凹んだ。

汗をダラダラ掻きながらショックで黙っていると、メルクがふーん?と呟き、品定めする様な目で見てくる。


「 筋力も魔力も虫以下ね~。

子供並しかないわ。クックルの餌にでもするの? 」



< クックル >

友好モンスターと呼ばれる人と共生しているモンスター。

白くて巨大なダチョウの様な姿をしていて、人を背中に乗せて走ってくれる。



エ……エサ……!!?

不穏な言葉に固まると、キュアがフルフルと首を横に振った。


「 ダメですよ~。

食べるクックルちゃんが可哀想です。

硬くて臭いお肉ではなく、柔らかくて美味しいお肉をあげないと……。 」


助かったけど、何かヤダ……!

フルボッコな四人の言いようにダメージを受けたが、それを注意してくれたのは、なんと今まで黙って傍観していた王様だった。


「 神託によって選ばれし戦士達よ。

彼こそが異世界より現れし神からの贈り物だ。

失礼な態度は改めよ。 」


「「「「 はぁぁぁぁ────!!? 」」」」


四人は一斉に叫び俺をジロジロ見つめると、その直後、ぶぶ──!!と一斉に吹き出した!


「 ちょっ!!嘘でしょ!!??

何でこんな汚らしいおっさんが来ちゃったの?! 」


「 こんな弱いオッサンじゃ~秒で死んじゃうぜ~?! 」


「 きっとぉ~勇者様が何でも出来るパーフェクトな人だから、必要ないって神様が思ったんじゃな~い? 」


「 ちょっと皆さん言い過ぎですよ~。

もしかして凄い能力があるのかも……? 」


そのまま大笑いし始めた四人の美女と、一切興味なしの勇者様。


俺は怒り…………はしない。

これでもクレーマーの客相手に、頭を下げ続けて約10年。


こんな若者達の誹謗中傷など羽ばたく蝶の風程度!


ほたほた~と笑いを浮かべ、頭の中は既に有給の残り日数のことでいっぱいだ!


うーん……うーん……と青ざめながら唸り声をあげていると、何と聖職者?達がヨイショヨイショと運動会の大玉みたいな巨大な水晶を部屋の中に運んできた。


何だ?あれ?


初めて見るモノに興味を惹かれジッと見つめていると、聖職者のお兄さんがその水晶の前に進み出て、俺に向かって説明を始めた。

「 これは人の魂の職業を見ることができる【 全透水晶 】と呼ばれているアイテムでございます。

こうして手を触れることで、自身の名前とその職業がこの水晶に浮かびます。 」


そのお兄さんがその【 全透水晶 】とやらに触ると、ポッ!と白い光がそこから漏れて、突然その頭上に何かの文字が浮かび上がる。


〈 神官 〉

【 シン 】

光属性魔法、回復魔法、結界、状態異常解除魔法


おおおお~!

俺はその水晶の能力を目の当たりにして、拍手を送った。


最初に出てくるのがその人の魂の職業とやらで次に出てくるのが名前──ということらしい。

しかしその次に浮かんでいるのはなんだろう??

不思議そうにしている俺に、そのお兄さん……シンは、その謎の言葉の部分をスッと指差した。


「 名前の下に描かれているのが、私の現在使える能力を簡単に記したモノですね。

魔法の属性は火、水、土、雷、光、闇の六元素が存在しますが、その中で私は光属性のみ扱えます。

あとは特殊能力である回復や結界、状態異常解除も使えますので、それが記されているというわけです。 」


「 何だか本格的にゲームの世界みたいだな…… 」


俺より下の世代の子達が、似た様な話していたなと思い出していると、シンは「 ちなみに──……。 」と続けて言った。


「 勇者様はこの魔法は全属性適応。

さらに全ステータスの限界突破に加え創作系能力もカンストしております。

此度の勇者様はまさに規格外の存在と言っていいでしょう。 」


「 え、凄いな。そりゃ。 」


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

俺をハーレムに組み込むな!!!!〜モテモテハーレムの勇者様が平凡ゴリラの俺に惚れているとか冗談だろ?〜

嶋紀之/サークル「黒薔薇。」
BL
無自覚モテモテ勇者×平凡地味顔ゴリラ系男子の、コメディー要素強めなラブコメBLのつもり。 勇者ユウリと共に旅する仲間の一人である青年、アレクには悩みがあった。それは自分を除くパーティーメンバーが勇者にベタ惚れかつ、鈍感な勇者がさっぱりそれに気づいていないことだ。イケメン勇者が女の子にチヤホヤされているさまは、相手がイケメンすぎて嫉妬の対象でこそないものの、モテない男子にとっては目に毒なのである。 しかしある日、アレクはユウリに二人きりで呼び出され、告白されてしまい……!? たまには健全な全年齢向けBLを書いてみたくてできた話です。一応、付き合い出す前の両片思いカップルコメディー仕立て……のつもり。他の仲間たちが勇者に言い寄る描写があります。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

隣/同級生×同級生

ハタセ
BL
輪廻転生モノです。 美形側が結構病んでおりますので病んでる美形が好きな方には是非読んで頂けると有難いです。 感想いただけるとこの生き物は大変喜びます。

前世から俺の事好きだという犬系イケメンに迫られた結果

はかまる
BL
突然好きですと告白してきた年下の美形の後輩。話を聞くと前世から好きだったと話され「????」状態の平凡男子高校生がなんだかんだと丸め込まれていく話。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

美形でヤンデレなケモミミ男に求婚されて困ってる話

月夜の晩に
BL
ペットショップで買ったキツネが大人になったら美形ヤンデレケモミミ男になってしまい・・?

親衛隊は、推しから『選ばれる』までは推しに自分の気持ちを伝えてはいけないルール

雨宮里玖
BL
エリート高校の親衛隊プラスα×平凡無自覚総受け 《あらすじ》 4月。平凡な吉良は、楯山に告白している川上の姿を偶然目撃してしまった。遠目だが二人はイイ感じに見えて告白は成功したようだった。 そのことで、吉良は二年間ずっと学生寮の同室者だった楯山に自分が特別な感情を抱いていたのではないかと思い——。 平凡無自覚な受けの総愛され全寮制学園ライフの物語。

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

処理中です...