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第四十六章
1439 いないいない〜……
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( オリビア )
勿論そんな両親を止めようとした者たちもいたが、そんな正義の善者は、まず大事な者たちを奪われる。
そして最後は本人を、ネコがまるで瀕死のネズミで遊ぶ様に遊びながら追い詰めて殺すのだ。
それを ” 楽しい ” と感じる ” 悪 ” に、勝つのは不可能。
例え一瞬そんな ” 悪 ” に勝ったとしても、完全に息の根を止めなければ、何度でも復讐にやってきていつかは負ける。
それが分かっている私は、どんなに辛くとも、絶対に周りに ” 助けて ” と言わない。
言っても無駄だから。
それに……それを口にすれば、私以外の誰かを犠牲にする事だと知っていたから。
” 誰かを犠牲にすれば、自分は楽になるだろう? ”
” 苦しむ姿に変えてやれば楽しいよ。 ”
成長していく悪の心は、常にそう囁いていたが、最後の最後……わずかに残っている ” 自分 ” の部分は、まだそれを必死に拒む。
毎日つらくて、苦しくて、痛くて……本当は助けてと言いたかった。
でも、それは無理だし嫌。
なら、誰にも言えないなら神様に願おう!────────とも思えなかった。
だって……。
「 私や両親の心の奥にあるどうしようもない ” 何か ” を創ったのも……神様なんだろう? 」
時々フッと視界に写るイシュル像を見て、私は鼻で笑って視線を逸らし続けた。
痛いしかない救いは一つもない世界の中、その ” 正しい ” 世界の中で、その日も私は酷く痛めつけられた体を引きずり、街の広場近くにある井戸へと向かう。
そこで血を洗い流していると、ヒソヒソという声と、沢山の ” 目 ” が私へと集まってきた。
街で私を見る目は冷たい。
当たり前だ。
だって私は彼らを苦しめている存在の娘だから。
ただいるだけで憎悪の対象になる。
そんなモノには慣れていたため、気にもとめずに傷口を洗い続けている私の元へ、突然一人の小さな女子がコチラに向かって走り寄ってきた。
その手にはタオルが握られていて、なんとそれを私に差し出したのだ。
「 あの……これ、使って。 」
その女の子は今にも泣き出しそうになっていて、多分私の事を心配しているのだと思う。
普通だったら嬉しいで溢れるはずの心なんだろうが……私の心は全く違う感情に支配された。
” 傷つけてやりたい ”
とても暴力的で加虐的な想いが、抑圧されていた悪の心から飛び出す。
私はゆっくりと視線を動かし、その子の事をジロジロと見つめた。
私より小さくて弱い女の子。
だから抵抗されてもこちらが被害を受ける事はない。
一方的に蹂躙できるモノだ。
一度自由な外に出た悪の心は、次々とこの世界へと這い出て ” 私 ” という人間を支配すると、今まで感じた事のない爽快感というか……快感が体中を走った。
別にいいんだ。
私だって、” 他 ” を怒鳴って殴って……。
だって、この世界の正しいのは、弱いヤツは好きに扱っていいという事なんだから。
ゾクゾクと初めて感じる快感に体は震える。
私は両親にとって弱いモノだから、強いモノに好きに扱われる。
だから私も────自分より弱いモノを好きに扱ってもいいだろう?
「 は……ははっ…………っはっはっ……。 」
楽しくて楽しくてつい笑いが漏れると、突然笑い出す私を見て、女の子はキョトンと無防備な顔を見せた。
それに構わず私はそのまま腹を抱えて笑い続け、やっと笑いが治まるとまた女の子をまたジッ……と見つめる。
その時に強烈に目に焼き付いたのは、女の子の細くて白い首。
「 ~~♬~~♬~~♬ 」
私は自分が殴られている時によく聞こえる両親の鼻歌を歌いながら、悪の心の導くまま、その首にゆっくりと手を伸ばし────…………。
「 いないいない~……。 」
私の手が女の子の首に届く直前、背後から知らない男性の声がしたかと思うと、突然目隠しをされた。
「 ────っ!?クソが……っ! 」
真っ暗になった視界に狼狽え、直ぐに背後にいるであろう人物に攻撃しようとしたのだが……。
「 ────ばぁ! 」
攻撃するより前に、その人物は私の目元から手を外し、一気に視界がクリアーになる。
すると目の前には変わらず女の子が……いるはずなのに、誰もいない。
それどころか────。
「 な……なんだ……?ここは……? 」
ドロドロに溶け爛れた大地と、血のように真っ赤な空。
そして常に生暖かい腐敗臭と鉄臭い不快な匂いが充満している中、私は焦って辺りを見回した。
この地獄の様な場所は一体……?
さっきまで確かに街中にいて、目の前には手に掛けようとしていた女の子がいたはずなのに、見る影もない。
それに驚きながら、伸ばそうとしていた両手を呆然と見下ろしていると……。
「 手がどうしたんだい?
虫でも捕まえたのかな~? 」
「 ────っ!!!??? 」
のんびりした声が耳元で聞こえて、私は飛び上がり、即座に後ろへ大きく飛んだ。
そしてその声の主であろう男をギロッと睨みつける。
勿論そんな両親を止めようとした者たちもいたが、そんな正義の善者は、まず大事な者たちを奪われる。
そして最後は本人を、ネコがまるで瀕死のネズミで遊ぶ様に遊びながら追い詰めて殺すのだ。
それを ” 楽しい ” と感じる ” 悪 ” に、勝つのは不可能。
例え一瞬そんな ” 悪 ” に勝ったとしても、完全に息の根を止めなければ、何度でも復讐にやってきていつかは負ける。
それが分かっている私は、どんなに辛くとも、絶対に周りに ” 助けて ” と言わない。
言っても無駄だから。
それに……それを口にすれば、私以外の誰かを犠牲にする事だと知っていたから。
” 誰かを犠牲にすれば、自分は楽になるだろう? ”
” 苦しむ姿に変えてやれば楽しいよ。 ”
成長していく悪の心は、常にそう囁いていたが、最後の最後……わずかに残っている ” 自分 ” の部分は、まだそれを必死に拒む。
毎日つらくて、苦しくて、痛くて……本当は助けてと言いたかった。
でも、それは無理だし嫌。
なら、誰にも言えないなら神様に願おう!────────とも思えなかった。
だって……。
「 私や両親の心の奥にあるどうしようもない ” 何か ” を創ったのも……神様なんだろう? 」
時々フッと視界に写るイシュル像を見て、私は鼻で笑って視線を逸らし続けた。
痛いしかない救いは一つもない世界の中、その ” 正しい ” 世界の中で、その日も私は酷く痛めつけられた体を引きずり、街の広場近くにある井戸へと向かう。
そこで血を洗い流していると、ヒソヒソという声と、沢山の ” 目 ” が私へと集まってきた。
街で私を見る目は冷たい。
当たり前だ。
だって私は彼らを苦しめている存在の娘だから。
ただいるだけで憎悪の対象になる。
そんなモノには慣れていたため、気にもとめずに傷口を洗い続けている私の元へ、突然一人の小さな女子がコチラに向かって走り寄ってきた。
その手にはタオルが握られていて、なんとそれを私に差し出したのだ。
「 あの……これ、使って。 」
その女の子は今にも泣き出しそうになっていて、多分私の事を心配しているのだと思う。
普通だったら嬉しいで溢れるはずの心なんだろうが……私の心は全く違う感情に支配された。
” 傷つけてやりたい ”
とても暴力的で加虐的な想いが、抑圧されていた悪の心から飛び出す。
私はゆっくりと視線を動かし、その子の事をジロジロと見つめた。
私より小さくて弱い女の子。
だから抵抗されてもこちらが被害を受ける事はない。
一方的に蹂躙できるモノだ。
一度自由な外に出た悪の心は、次々とこの世界へと這い出て ” 私 ” という人間を支配すると、今まで感じた事のない爽快感というか……快感が体中を走った。
別にいいんだ。
私だって、” 他 ” を怒鳴って殴って……。
だって、この世界の正しいのは、弱いヤツは好きに扱っていいという事なんだから。
ゾクゾクと初めて感じる快感に体は震える。
私は両親にとって弱いモノだから、強いモノに好きに扱われる。
だから私も────自分より弱いモノを好きに扱ってもいいだろう?
「 は……ははっ…………っはっはっ……。 」
楽しくて楽しくてつい笑いが漏れると、突然笑い出す私を見て、女の子はキョトンと無防備な顔を見せた。
それに構わず私はそのまま腹を抱えて笑い続け、やっと笑いが治まるとまた女の子をまたジッ……と見つめる。
その時に強烈に目に焼き付いたのは、女の子の細くて白い首。
「 ~~♬~~♬~~♬ 」
私は自分が殴られている時によく聞こえる両親の鼻歌を歌いながら、悪の心の導くまま、その首にゆっくりと手を伸ばし────…………。
「 いないいない~……。 」
私の手が女の子の首に届く直前、背後から知らない男性の声がしたかと思うと、突然目隠しをされた。
「 ────っ!?クソが……っ! 」
真っ暗になった視界に狼狽え、直ぐに背後にいるであろう人物に攻撃しようとしたのだが……。
「 ────ばぁ! 」
攻撃するより前に、その人物は私の目元から手を外し、一気に視界がクリアーになる。
すると目の前には変わらず女の子が……いるはずなのに、誰もいない。
それどころか────。
「 な……なんだ……?ここは……? 」
ドロドロに溶け爛れた大地と、血のように真っ赤な空。
そして常に生暖かい腐敗臭と鉄臭い不快な匂いが充満している中、私は焦って辺りを見回した。
この地獄の様な場所は一体……?
さっきまで確かに街中にいて、目の前には手に掛けようとしていた女の子がいたはずなのに、見る影もない。
それに驚きながら、伸ばそうとしていた両手を呆然と見下ろしていると……。
「 手がどうしたんだい?
虫でも捕まえたのかな~? 」
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