【第一部完結】天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します

バナナ男さん

文字の大きさ
1,428 / 1,649
第四十五章

1412 嘘つき

しおりを挟む
( モール )


「 これでイケたと思うか? 」


「 …………。 」


リゼルが項垂れ膝をついた奴を睨みつけながら言ったが、俺は沈黙で答えを返す。

そんな俺達の様子に気付いた団員たちも全員がまた警戒態勢に戻り、奴から距離を取ると、やがて奴の体がドロリと溶けて、黒い粘着質な液体へと変わった。

そしてその場に残されたのは、その黒い液体と奴の仮面だけ。

その仮面は地面に落下した衝撃でカラカラと音を立てて回っていたが……?



……カラ……カラカラ……。


…………。



────カラカラカラカラカラ………!



その仮面の動きが収まらず、ずっと回り続けて音を立てる。

これには全員が異変を感じて、周囲をキョロキョロと見回し変化がないかを確かめ始めた。

                      しかし、その間にもカラカラという音は次第に大きくなっていき……とうとう頭が割れるくらいの音になると、全員が耳を塞ぐ。


「 ……っ!!何なんだよ!!この音は!! 」


「 ……クソッ!奴はどこにいるんだ!? 」


「 ……出でこい……卑怯者……。 」


リゼルとジャリー、そしてルビーは耳を塞ぎながらも文句を叫んだが……突然強い風が吹いて、地面に落ちている葉や石の破片などが一斉に上空に巻き上がった。

そして…………。




────ピタッ。




まるで時間が止まったかの様に、全ての物質の動きが一斉に止まる。


「 ……はっ……? 」


リゼルが目の前で浮かんだまま止まっている一枚の葉に恐る恐る手を触れると、やはりそれは動きがとまったままで、そのまま宙に浮き続けている様だ。


この世界の中で動いているのは俺達、聖兵士達だけ。


まるで本来の世界から取り残された様な……妙な焦りと不安、恐怖に心は支配されてしまう。


「 や……やめろ……。 」


「 もう沢山よ……怖い……帰りたい……。 」


突然弱音を吐き出した団員たちを見回し、どうにかしなければと思ったが、自分も一体なぜこんなに頑張って生きなければいけないのか?なんのために戦うのか?

その理由が分からなくなってしまった。


すると世界は一気にカラフルな色からセピア色の世界へと景色を変える。


なんで……?

なんで俺は生きていかないと駄目なんだろう??

こんな虚しい世界のために戦うのはなんで……??


自分の声が耳元で優しく囁かれ、自分の ” 生 ” に対して意味はあるのだろうか?と、自問自答がぐるぐると回り続けた。


それが一分?一時間?一年??十年と続いている様な……不思議な感覚になると、誰にも自分の存在など気づかれない、受け入れて貰えない、まるで世界からそっぽを向かれた気分になる。


「 そっか。俺にとって ” 生きる  ” って重要な事じゃなかったんだ。 」


それに気づくと、他のリゼル達や聖兵士達も、同じ答えに辿りついたのか、それぞれの武器の刃先を自分の首へと持っていき────……。


────ザシュッ!!!!


一気に喉を切り裂いた。


その勢いによって一斉に全員の首が飛び、血の噴水が空に向かって吹き出す。



( 先天スキル )

< 黄昏時の終日 >

ある一定以上のダメージを食らった時に自動発動する幻影系精神攻撃スキル

与えられたダメージ分を上乗せした幻を見せて自死へと誘導する



────ドサ……。


ドサドサドサ────……!!


首を失った俺達の体はその場に倒れてしまい、下は溢れる血で赤いペンキをぶち撒けた様にぐちゃぐちゃになってしまった。


シ~ン……。


静まり返ったその場で、突然転がっていた仮面に溶けてできた黒い水が集まっていきボコボコと形ができていく。

そしてすっかり元の状態に戻った< ピエロ・グリム・リーパー >は、その惨状を見下ろし、カッカッカッカッ!!と歯を噛み鳴らしながら笑った。

そして────。


グチャッ!!

クチャグチャ!!!


笑いながら下に落ちている首達を、まるで遊んでいる様に楽しそうに踏み潰していくと、その中で俺の首を発見する。

するとニヤッと笑った奴は、俺の情けない面を思う存分眺めようと思ったのか、髪を鷲掴み、そのまま自分の顔の位置まであげたその瞬間────…………。


────パチッ!!


突然俺の目が開いた。


ギョッ!と驚くヤツに向かい、俺はやれやれと大きく息を吐き出す。


「 首だけじゃ~せっかくのいい男が台無しだと思わない?

体がないと、お洒落の幅が狭くなっちゃうよ。全く。 」


《 グ……グアァ”ァ”ァ”ァァ”ァァ────!!!!! 》


ヤツが怒りの咆哮を上げた瞬間、キラキラ光る泡の様なモノがブワッ!とそこら中に現れ、飛び回った。

それをうっとおしげに払おうとした< ピエロ・グリム・リーパー >だったが、目の前には大きく両手のレイピアを後ろに引いた俺がいる!


「 言っただろ?俺は嘘つきだって。 」


そう言い放ち、大きく引いたレイピアを奴に向けて振り切った。

しおりを挟む
感想 274

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います

緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。 知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。 花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。 十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。 寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。 見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。 宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。 やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。 次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。 アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。 ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。

異世界で孵化したので全力で推しを守ります

のぶしげ
BL
ある日、聞いていたシチュエーションCDの世界に転生してしまった主人公。推しの幼少期に出会い、魔王化へのルートを回避して健やかな成長をサポートしよう!と奮闘していく異世界転生BL 執着最強×人外美人BL

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

処理中です...