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第四十二章

1353 たった一つしか選べない世界

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( リーフ )

ここに来るまでに見せられた未来達を見て、俺はやっぱりこんな世界は嫌だと思った。

例え直ぐに同じ未来に引っ張られてしまうとしても。

世界がレオンの裁定によって ” 無 ” になろうとも。


……俺は沢山の人たちの選択によって溢れた世界でいてほしい。


「 俺はレオンに ” 世界 ” を見て欲しい。

良いも悪いも沢山の選択に溢れた世界を……。

皆で作り上げた ” 世界 ” を見て、裁定して……レオンにも選択をしてほしいんだ。

だって、ただこれが正しいからって言うだけじゃ、何も正しくない。

そんな誰かのためだけの世界には価値なんてなくて……だから答えも無価値しか選べない。


今のままじゃ駄目なんだ。

こんなたった一つしか選択できない世界じゃ……! 」


俺は後ろを振り返り、今まで見てきた未来を睨みつけた。

すると、唸り声の様なモノが聞こえてきたが、俺は無視して窓へと視線を戻した────が……?


「 ────あ、あれ……?? 」


なんとレオンハルトがこちらをジッ……と見つめているではないか!


バッチリ合う目と目にギョッ!としたが、コチラが見えているはずがないので、俺は首を横に振った。


多分俺がいる方向に何かあるんだろう。

そう思ったが……フッと物語に書いてあった "  ある一文  "  を思い出す。



『 その時、ふと誰かに呼ばれた気がした。


…………一体誰だ?


レオンハルトはその方向に視線を向けたが、誰もいない。 』



確かちょうどこのシーンに、レオンハルトが ” 誰か ” に呼ばれた様な気がして振り返るシーンがあったが……まさか────?


「 ……いやいや。流石にそれはないない。

だって今俺が見ているのは未来の姿だからね! 」


ハハッと笑い飛ばして、あり得ない妄想を吹き飛ばすと、ボンヤリこちらを見ているレオンハルトが何かをボソボソと呟いた気がしたが……それはリーフの怒鳴り声にかき消された。


「 お前はこの俺、リーフ・フォン・メルンブルクの奴隷だろう!

俺の命令に従うこと、それだけがお前が唯一手にする事ができる最高の幸せだ! 

さぁ!!さっさとその場で跪き、その靴を舐めてきれいにしろ!! 」


こちらを見つめるレオンハルトの側でリーフの我慢は限界を超え、力いっぱいレオンハルトの顔目掛けて、自身の靴を投げつける。


────危ないっ!!


あっ!と大きな口を開けて、手を伸ばすと────────……。




────……ピタッ。



投げつけられた靴が突然宙で止まった。


「 …………えっ? 」


あり得ない現象に驚きポカンとしながら他のリーフやアーサー達を見ると……なんと全員まるで時が止まった様に止まっているのに気づく。


「 ど、どうなってんの??これ??? 」


ハテナで一杯になりながらレオンハルトへ視線を戻すと、やはりその目はジッ……と俺を見ていた。

そして当然レオンハルトも止まっていると思ったのだが────その口が突然ゆっくりと動き出す。



「 俺の存在は貴方のモノですよね?
          
…… ” 幸せ ” はにはない。


だってコレって……────────ですから……。 」


「 ────!!???? 」


突然俺に向かって放たれた?言葉に、ビクッ!!と体を震わせると、レオンハルトは歩き出す。

俺の覗いている窓に向かって。


「 貴方の望む世界を創りましょう。

……どんな世界にしたいですか? 」


一歩……また一歩と近づいてくる事に、ドロドロと周りの止まっている景色は黒く溶けていく。

勿論リーフも、アーサーもアルベルトも……他の沢山の生徒たちや教員達も……。


「 え、え、え……えぇぇぇ???? 」


目の前で起きている現象に驚き過ぎて後退りをしたが、もうレオンハルトは窓のすぐ側にいるため、こちらをしっかりと覗き込んで俺とは目があったまま。

後ろに下がった俺をしっかり見つめたまま、レオンハルトは笑みを浮かべた。



「 何か欲しいものはありますか?


俺は何でも叶える事ができるんです。


全部、全部……貴方の前に並べます。



さぁ、貴方の願いは……なんですか?




────リーフ様。 」




今までの虚ろな目から一転。

目の奥には ” 嬉しい ” という感情があって……その目を俺に向けたまま、レオンハルトはゆっくり窓の方へ手を伸ばす。


すると────……。


────バチバチバチッ!!!!!!


火花の様なモノが飛び、こちらの白い空間の中にそれが広がると、突然そこら中から《 ぎゃああああぁぁぁぁ!!!! 》という物凄い大きな悲鳴が聞こえた。


「 ??!!な、何だ!?

もしかして……さっきの変な声の人の悲鳴……?? 」


大音量の声に耳を塞いだ、その瞬間……。


────────パリィィィ~ン!!!


窓がヒビ割れを起こし、そのまま粉々に吹き飛んだ。


「 ────っ!!?うわっ……!! 」


小さな破片が飛び散ったため、両手で顔を覆う。

そしてそのままゆっくりと手を下ろせば、すぐ目の前に──── ” レオンハルト ” が立っていた。

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