上 下
1,335 / 1,370
第四十一章

1320 空の三大クイーン達と戦線と……

しおりを挟む
( ユーリス )


「 戦力は十分か……! 」


「 ははっ~ん?驚くのはまだ早いぜぇ~? 」


チェリルはへっ!と鼻で笑いながら、何もないはずの空を差す。


すると────……。


────バチバチバチっ!!!!


またもや雷の様な大きな音と共に、空に魔法陣が現れ< 迷彩魔法 >が掛けられていたやや小ぶりの【 魔航飛帝 】に似ている巨大な魔道具機体が現れた。


「「「「「 はぁぁぁぁぁぁぁ────────っ!!!??? 」」」」」


これには全員が目玉をポーンと大きく飛ばし、目と口を限界まで見開いてその機体を見つめていると、突然その機体から、ホーッホッホ!という女性の高笑いが聞こえ始める。


《 こんな大きな戦闘は久しぶりですわね!

腕がなりますわ~! 》


《 もう~。ドリちゃんもジョバンヌちゃんも戦闘狂なんだから~。

でも楽しそう!

私も張り切っちゃうぞ! 》


その声と、現れた魔道具機体に刻まれた家紋を見て……その正体が判明した。



カルロイド家と共に空の空輸に関しての事業を共同経営している伯爵家の二家。


【 マゼンダ家 】女当主< ドリスン >


【 スローン家 】女当主< アリス >



「 ” 空の三大クイーン ” が勢揃いかよ。

おいおい、ジョバンヌ~……ここで同窓会でもするつもりか? 」


大量の汗を掻きながら、空に向かって叫ぶドノバンさんに、ジョバンヌさんは豪快な笑いを返す。


《 そりゃ~いい!私達にはお似合いの同窓会になっちまったね。

ドリスン、アリス、派手に行こうか! 》


《 望む所ですわ!

このところ、お遊びみたいな小競り合いばかりで退屈していた所ですの。

【 マゼンダ家 】は火力なら負けないわよ。 》


《 フフッ~!【 スローン家 】はスピードなら負けないからね。

一番活躍するのは、このアリスよ。

負けないんだから~。 》


ドリスン様とアリス様が、コロコロと楽しそうに笑った直後、二人の魔道具機体の下のハッチが空き、そこから次々と ” 空足ブレード ” をつけた兵士達や、魔法を付与した武器を装備した兵達が飛び出してきた。


それにまたワッ!!!とそこら中から歓声が上がり、大騒ぎに。


「 ────ったく……。張り切りすぎて死ぬなよな……。 」


ドノバンさんは呆れながら、ボリボリと頭を掻いた。


俺は平民であるためイマイチ政略結婚というモノが分からないが、なんだかんだでこうして離縁した後も戦友の様な関係性でいられるのはすごい事だと思う。


その関係性を羨ましいと思ったが、屋敷は追い出されて家なしのドノバンさんの状況を思い出し、やっぱり分からないと思い直した。


貴族の恋愛はよくわからない。

その一言に尽きる。


そう理解し、どうでもいい事として処理した俺は、直ぐに団員達に指示を出す。


「 C級団員以下は、援軍と共にこの場を維持、B級以上の団員は、全員ドラゴンの討伐に参加するため飛ぶぞ!

第二騎士団の誇りにかけて負けは許されない!!

死ぬ気で職務を全うせよ!! 」


「「「「 ────────はっ!!!! 」」」」


力強い返事と共に、片手を上げて ” 任せろ! ” と言わんばかりのジェスチャーをしてくる団員達を見て、チェリルはチィィ!!と大きな舌打ちをした。


「 こっちもC級団員以下はここで戦線維持!

後の奴らは全員、あのデカブツをぶっ殺しに行くぞ!!

第二騎士団の連中に遅れをとんじゃねぇぞっ!!!分かったな!! 」


「「「「 ────────はっ!!!! 」」」」


「 ……いや、そこは協力しようぜ? 」


ボソッと小さな小さな声でドノバンさんが突っ込んだが、小さすぎて俺以外の人間には聞こえてない。

またシュンシュン!と何かもぎ取る動きを見せるチェリルの手を見て、聞こえなくて良かったと安心したのも束の間……今度はケンさんが守備隊員達に指示を出す。


「 守備隊員も第二級以下はこの場を維持だ!

守備隊は街を守る最後の砦……街を頼んだぞ!! 」


「「「「 おおおおおお────────っ!!!! 」」」」


雄叫びが上がり、守備隊員達は武器を上に掲げ叫ぶ。


「 ここは死んでも守りまーす!!! 」


「 全員俺達が命を賭けて守ります!!!そっちはお願いします!! 」


盛大な声援の中、第二魔法騎士団のキナがフィールド転換魔法を発動した瞬間────────突然< ロイヤル・ドラゴン >がニヤッ……と笑う。


────ゾッ……。


チェリルのスキル< 服従の檻 >の中で、余裕そうに笑うドラゴンに嫌な予感がして、身体に悪寒が走った。

その直後、正体不明の文字がビッシリ書かれた巨大魔法陣がドラゴンの頭上に浮かぶ。


「 あれは……?? 」


「 一体何の魔法陣…… 」


ざわつく戦闘員達の中、チェリルが険しい顔で目を見開き、キナに向かって大声で怒鳴った。


「 キナァァァ────!!!!フィールド転換魔法、早くっ!!!! 」


キナは全速力で魔法を発動しているにも関わらず、それより先にドラゴンの魔法陣が光を放つ。

そして────……地上へ黒い雨が降り注いだ。

しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる… 婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。 そんな物語です。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

処理中です...