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第四十一章

1319 ジェンスター家

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( ユーリス )

本来はこの様に全く違う系統の家同士、政略結婚する事はなのだが……。


俺は、よっしゃ~!!と拳を握って飛び上がる、ジェンスター家の当主であるドノバンさんへ視線を送る。


ジェンスター家が侯爵家まで昇りつめた理由はまさにそこにあり、他のある特定の血筋を確実に残してきた貴族とは正反対に、ジェンスター家は代々 ” 挑戦する事 ” に重きを置いてきた特殊な家系なのである。


変わり者代表ドノバンさんと、同じく系統の違う変わり者であるアルベルト団長が頭に浮かび、大いに納得して頷いた。


結婚相手に選ぶのも、その ” 挑戦 ” を元に選び、全く違った血筋のモノを入れては、新たな事業に取り組む。


それにより多様化していく能力により、現在手に入れているモノを新しいものへと進化していく事で、繁栄を極めてきた家、それがジェンスター侯爵家だ。


高位貴族の破天荒者。

時代の革命児。


そう囁かれるジェンスター家によって、これまで数々の常識は破られ、実は今の第二騎士団を創り上げたのもジェンスター家だ。


以前の第二騎士団は、貴族のみで構成されている第一騎士団により利用されるだけの便利な道具集団でしかなかったらしい。


囮、斥候、雑用……。


第一騎士団がやりたくない仕事を毎日押し付けられ、手柄は全て奪われる。


そんな中、ドノバンさんが団長になったその時点で、その待遇はガラリとが変わっていった。

その第二騎士団の境遇革命についての話は、今でも語り継がれている。


まず剣すらまともに振らせてもらえなかった団員達には、しっかりとした訓練カリキュラムを。

残飯の様な配食の食事改善。

それにより大幅に死亡率がダウンした第二騎士団だったが、勿論貴族達からの数々の妨害や嫌がらせを受けた。


しかし、正面からくる貴族達には全てドノバンさんが。

そして裏からくる貴族達は全てジョバンヌさんが華麗に反撃したのだ。


ドノバンさん自身の実力に加えて、ジョバンヌさんの実家であるカルロイド家を敵に回した事で、自分の家の事業に多大な損害を受けてしまい、如何に高名な貴族とて容易に手が出せなくなった。


そうして手をこまねいている間に、元々真っ先に問題を解決してきた第二騎士団は、あっという間に正当な評価を受けて名声は高まり、好きに扱う事ができなくなる。

更に他国との関係性が良いジェンスター家と、第二騎士団の関係性も親密になると、ますます手が出せない状態になってしまった。


よって現在は、完全に仕事内容が分断された独立状態でお互い仕事をしている。


……まぁ、第一騎士団に至っては、仕事という名のお飾り人形だが。


────ハァ……。


普段の第一騎士団の仕事っぷりを思い出し思わずため息が漏れる。


勿論それでも文句を言い続けた貴族達もいたらしいが、それにとどめを刺したのは、第二騎士団がアーサー様の管轄になった事だ。


そうなれば、実力主義の名の下、一つの小さな国家になった第二騎士団は、簡単に侵害する事ができない存在になった。


ドノバンさんが自身の息子であるアルベルトさんに団長の座を譲った後も、ジェンスター家とカルロイド家は第二騎士団のいい後ろ盾になってくれている。


しかし、まさかこんな総戦力を率いての参戦とは、流石に予想外だ……。


両家が共同所有している【 魔航飛帝 】は、空の最強兵器といっても過言ではない性能を持っているが────なんとジェンスター家の保持している戦力はこれだけではない。


────ガチャン!!ガチャン!!


【 魔航飛帝 】の下部に位置するハッチ部分が、大きな音をたてながら開き始め、特殊な足の防具を装備した人間達が次々と飛び出しては、空を鳥の様に飛び回り始めた。

両足に装備された防具からは六対の光る翼が生えており、空を飛ぶモンスターを軽々と倒していく。


「 す、すげぇ!! 」


「 あれはまさか……ジェンスター家の……! 」


ジェンスター家がカルロイド家の協力の元、保有している戦力の一つ。


【 飛空戦隊 】


空の戦闘に特化した部隊である【 飛空戦隊 】の装備している羽の生えた足の防具は、 ” 空足ブレード ” と呼ばれるスタンティン家と共同開発した戦闘用魔道具だ。

その空を華麗に飛び回る姿から ” 妖精戦士 ” などとも呼ばれている。


「 いいぞ─────!!! 」


「 空は頼んだ!! 」


ワッ!!とそこら中から声が上がったが、新たな援軍はこれだけに留まらず、更に開いたハッチの部分から今度は地上へと落ちてくる集団が見えた。

完全武装したその集団は、魔法を付与した武器を所持しており、ドノバンさんと同様に魔法と剣の両方を扱う地上戦の最強部隊────。


【 魔剣戦隊 】


第二騎士団に負けず劣らずの実力を持ち、魔法も剣も両刀で使ってくる確かな実力から ” 魔人戦士 ” などと言う輩達もいる。


「 す……すげぇ……この戦力、世界戦争かよ……。

流石は侯爵様。 」


「 これはちょっと……凄すぎませんか?

ちょっとした小国の総戦力並では? 」


ケンさんとマルクさんが呆然と呟くが、負けず劣らず俺も驚いているため、他にも周りでざわつく戦闘員達を鎮める事もできずポカンとしてしまった。

【 魔剣戦隊 】は、俺達の方へ片手を上げて挨拶すると、直ぐに戦闘配置につく。


その数は守備隊や騎士団に負けない程。

これなら……!

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