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第四十一章
1310 忌々しい存在
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( ユーリス )
” 自分が若い頃は~ ” から始まる押し付けがましい感情論。
頭よりまず手が先に出る短期的な行動の数々。
理屈よりも感情に先走る衝動的行動に、何かあれば我先に飛び出していくうっとおしい熱血感。
その全てが俺のスキル< 正義審心 >をあざ笑うかの如く、正反対とも言える行動をとってくる。
そのせいで何度俺は奴らの尻拭いに追われたことか。
思い出すと痛み出す頭を摩りながら、更にそれを加速する存在達を思い出し痛みは加速した。
そんな痛々しいおじさん連中に加えて、若年層も俺の様に冷静に戦況を見ようとする者達は少ない。
その単純思考でよくおじさん達と共に、まるでイノシシの様に突っ込んでいっては、仲良く怪我をこしらえて戻ってくるのだ。
「 いや~、あいつ強かったよな~。 」
「 もうちょっと待っていた方が良かったよな~。 」
待機を命じられたはずのおじさん共と新人達は、そんなわかり切った事を言いながら大笑いしていて、脳筋のアホどもが!と思った事は数え切れない程。
怒りと憎しみ、呆れしか沸かないはずのそんな職場であったが、奇しくも俺の無難を望む能力とその現場は非常に相性が良かったらしく、ぐんぐんと異例のスピードで実力はついていった。
そして気がつけば、あっという間に副団長の座についていて、わけの分からぬままアホの脳筋共をまとめ上げなくてはいけない日々へ。
その時につけられた2つ名は【 狂犬ユーリス 】
これは、戦う事こそ至上の喜び。
常に戦いを求め、どこへだろうがいち早く駆けつけては、敵を完膚なきまでに屠る戦闘狂…………という意味合いでつけられたそうだが、事実は全く違う。
俺は無茶ぶりしかしないおじさん達の尻拭いのため、仕方なく敵を撲滅するしかない状況に追い込まれているだけだ。
なのに、気がつけば俺が首謀者として認知されていた。
その一因としてドノバンさんに代わり、新しく団長になったアルベルト団長にも原因があって、アルベルト団長はドノバンさんとは正反対で口数は非常に少なく、出世欲などが一切ない人だった。
そのためか、第二騎士団の報告をアーサー様にする際は、詳しい説明は全てすっ飛ばし、俺を指差しては────────。
「 とりあえずユーリスが一番敵を倒してました。 」
……と言って毎回報告を終えてしまうのだ。
……いや出世欲がないのではなく、ただ面倒なだけだったのかもしれないと、正直今ではそっちの方が正しいのではと思っている。
更にそれプラス、悪ノリ大好き、面白い事大好きなおじさん連中がそれに便乗する。
「 いや~俺は怖くて震えていたんですがね?ユーリスは単身で敵に突っ込んでいき……。 」
「 凄かったっすわ~。
敵がわんさかいる中、華麗に敵を殲滅し、俺に ” 大丈夫ですか? ” と……。
これは惚れちゃいますよね~。 」
「 よっ!第二騎士団の王子様~! 」
ニマニマ。
ニマニマニマ~!
腹が立つ笑顔を浮かべては笑う中年老害団員共。
ちなみにその中年が言う震えていたというのは武者震いで、単身で突っ込んで行くもんだから、こちらも単身で突っ込んで行くしかなかった。
更には苦手属性のモンスターにぶち当たり無様に逃げ回っていたのを助けてやったのだが、なぜ苦手なのが分かっているのに突っ込んで行くのか、本気で理解できず ” 大丈夫ですか?( 頭が ) ” と聞いただけだ。
忌々しい中年共めっ!!
文句と不満で溢れかえっていたが、そのせいで俺が強くなれるのも事実……。
結局自分の様に頭で考えすぎて動けなくなるタイプには、こういった考える時間を与えてくれない迷惑な存在が必要という事なのか……。
そう考えると、多少は感謝する気持ちがなくはない。
────が……。
ドノバンさんに関してはクセが強すぎて、感謝する気持ちは前に出てこなかった。
お酒を飲みすぎて毎度ゴミ捨て場で野良犬と一緒に朝を迎える。
女性を直ぐ口説いては殴られる。
そして面倒な事は後回しにして逃げるわ、それを注意してもあの手この手で誤魔化して逃げるし、直ぐに卑猥なことを言っていかがわしいお店に連れて行こうとするし…………正直こんな男とよく長年友人でいられるなと、カルパスさんに言いたい。
カルパスさんの伝電鳥が飛び去った方向を見ながら、物思いに耽っていたが、直ぐに頭を振って現実に意識を戻した。
今回の防衛戦も、勿論おじさん連中の面倒をみなければならないが、俺は俺の正義を貫くため、自分の能力をフルに使って選びたい道を選ぶ。
俺は戦い続ける仲間たちのため、スキルを発動した。
< 審裁官の資質 >( ユニーク固有スキル )
< 疑わしきは真実 >
今目の前にある現実に対し猜疑心を植え付ける精神系攻撃スキル
相手との知能レベルに差がある程掛かりやすく、幻覚、混乱などのデバフ状態にする事ができる
さらに精神系のデバフが掛かっている間は、自身の敵を見失い、仲間に攻撃を加える様になってしまう
(発現条件)
一定以上のステータス値、光属性魔力、正義感、冷静を持つ事
一定回数以上スキル< 審定精神 >の支配に抗う事
一定以上の憎悪、憎しみ、猜疑心を持ちながらも、それを押さえ精神汚染度が一定以下であること
< 審裁官の資質 >( ユニーク固有スキル )
< 正当なる防衛術 >
相手からの敵意、殺意に対し反撃する場合に発動するカウンター系攻撃スキル
受けた攻撃を倍化し、更に内自身の防御分のダメージを上乗せした強攻撃を跳ね返す
ただし、自身の致死量の攻撃を食らった場合、ダメージをゼロにする代わりにスキルが解除されてしまう
(発現条件)
一定以上のステータス値、光属性魔力、正義感、冷静を持つ事
一定回数以上スキル< 審定精神 >の支配に抗い、ギリギリの戦闘前線にて、敵の攻撃を受け回避、反撃に成功する事
一定以上の正義感、忍耐力、勇敢、冷静を持ち、精神汚染度が一定以下であること
” 自分が若い頃は~ ” から始まる押し付けがましい感情論。
頭よりまず手が先に出る短期的な行動の数々。
理屈よりも感情に先走る衝動的行動に、何かあれば我先に飛び出していくうっとおしい熱血感。
その全てが俺のスキル< 正義審心 >をあざ笑うかの如く、正反対とも言える行動をとってくる。
そのせいで何度俺は奴らの尻拭いに追われたことか。
思い出すと痛み出す頭を摩りながら、更にそれを加速する存在達を思い出し痛みは加速した。
そんな痛々しいおじさん連中に加えて、若年層も俺の様に冷静に戦況を見ようとする者達は少ない。
その単純思考でよくおじさん達と共に、まるでイノシシの様に突っ込んでいっては、仲良く怪我をこしらえて戻ってくるのだ。
「 いや~、あいつ強かったよな~。 」
「 もうちょっと待っていた方が良かったよな~。 」
待機を命じられたはずのおじさん共と新人達は、そんなわかり切った事を言いながら大笑いしていて、脳筋のアホどもが!と思った事は数え切れない程。
怒りと憎しみ、呆れしか沸かないはずのそんな職場であったが、奇しくも俺の無難を望む能力とその現場は非常に相性が良かったらしく、ぐんぐんと異例のスピードで実力はついていった。
そして気がつけば、あっという間に副団長の座についていて、わけの分からぬままアホの脳筋共をまとめ上げなくてはいけない日々へ。
その時につけられた2つ名は【 狂犬ユーリス 】
これは、戦う事こそ至上の喜び。
常に戦いを求め、どこへだろうがいち早く駆けつけては、敵を完膚なきまでに屠る戦闘狂…………という意味合いでつけられたそうだが、事実は全く違う。
俺は無茶ぶりしかしないおじさん達の尻拭いのため、仕方なく敵を撲滅するしかない状況に追い込まれているだけだ。
なのに、気がつけば俺が首謀者として認知されていた。
その一因としてドノバンさんに代わり、新しく団長になったアルベルト団長にも原因があって、アルベルト団長はドノバンさんとは正反対で口数は非常に少なく、出世欲などが一切ない人だった。
そのためか、第二騎士団の報告をアーサー様にする際は、詳しい説明は全てすっ飛ばし、俺を指差しては────────。
「 とりあえずユーリスが一番敵を倒してました。 」
……と言って毎回報告を終えてしまうのだ。
……いや出世欲がないのではなく、ただ面倒なだけだったのかもしれないと、正直今ではそっちの方が正しいのではと思っている。
更にそれプラス、悪ノリ大好き、面白い事大好きなおじさん連中がそれに便乗する。
「 いや~俺は怖くて震えていたんですがね?ユーリスは単身で敵に突っ込んでいき……。 」
「 凄かったっすわ~。
敵がわんさかいる中、華麗に敵を殲滅し、俺に ” 大丈夫ですか? ” と……。
これは惚れちゃいますよね~。 」
「 よっ!第二騎士団の王子様~! 」
ニマニマ。
ニマニマニマ~!
腹が立つ笑顔を浮かべては笑う中年老害団員共。
ちなみにその中年が言う震えていたというのは武者震いで、単身で突っ込んで行くもんだから、こちらも単身で突っ込んで行くしかなかった。
更には苦手属性のモンスターにぶち当たり無様に逃げ回っていたのを助けてやったのだが、なぜ苦手なのが分かっているのに突っ込んで行くのか、本気で理解できず ” 大丈夫ですか?( 頭が ) ” と聞いただけだ。
忌々しい中年共めっ!!
文句と不満で溢れかえっていたが、そのせいで俺が強くなれるのも事実……。
結局自分の様に頭で考えすぎて動けなくなるタイプには、こういった考える時間を与えてくれない迷惑な存在が必要という事なのか……。
そう考えると、多少は感謝する気持ちがなくはない。
────が……。
ドノバンさんに関してはクセが強すぎて、感謝する気持ちは前に出てこなかった。
お酒を飲みすぎて毎度ゴミ捨て場で野良犬と一緒に朝を迎える。
女性を直ぐ口説いては殴られる。
そして面倒な事は後回しにして逃げるわ、それを注意してもあの手この手で誤魔化して逃げるし、直ぐに卑猥なことを言っていかがわしいお店に連れて行こうとするし…………正直こんな男とよく長年友人でいられるなと、カルパスさんに言いたい。
カルパスさんの伝電鳥が飛び去った方向を見ながら、物思いに耽っていたが、直ぐに頭を振って現実に意識を戻した。
今回の防衛戦も、勿論おじさん連中の面倒をみなければならないが、俺は俺の正義を貫くため、自分の能力をフルに使って選びたい道を選ぶ。
俺は戦い続ける仲間たちのため、スキルを発動した。
< 審裁官の資質 >( ユニーク固有スキル )
< 疑わしきは真実 >
今目の前にある現実に対し猜疑心を植え付ける精神系攻撃スキル
相手との知能レベルに差がある程掛かりやすく、幻覚、混乱などのデバフ状態にする事ができる
さらに精神系のデバフが掛かっている間は、自身の敵を見失い、仲間に攻撃を加える様になってしまう
(発現条件)
一定以上のステータス値、光属性魔力、正義感、冷静を持つ事
一定回数以上スキル< 審定精神 >の支配に抗う事
一定以上の憎悪、憎しみ、猜疑心を持ちながらも、それを押さえ精神汚染度が一定以下であること
< 審裁官の資質 >( ユニーク固有スキル )
< 正当なる防衛術 >
相手からの敵意、殺意に対し反撃する場合に発動するカウンター系攻撃スキル
受けた攻撃を倍化し、更に内自身の防御分のダメージを上乗せした強攻撃を跳ね返す
ただし、自身の致死量の攻撃を食らった場合、ダメージをゼロにする代わりにスキルが解除されてしまう
(発現条件)
一定以上のステータス値、光属性魔力、正義感、冷静を持つ事
一定回数以上スキル< 審定精神 >の支配に抗い、ギリギリの戦闘前線にて、敵の攻撃を受け回避、反撃に成功する事
一定以上の正義感、忍耐力、勇敢、冷静を持ち、精神汚染度が一定以下であること
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