上 下
1,324 / 1,370
第四十一章

1309 最初に学んだ事

しおりを挟む
( ユーリス )

上級資質、しかもレアな部類に入る資質に、鑑定してくれた神官達も同級生達も一斉におめでとう!と言ってくれたが、俺はお礼もそこそこに走り出す。


そして孤児院の自室へ駆け込むと、纏めておいた荷物を持って直ぐに王都へ向かう馬車へと乗り込んだ。


向かうは第二騎士団の本部。


そこで入団試験を受けるために、俺は最短のルートでそこに向かう事を決めていたため事前にお別れも済ませていたのだ。


いくら上級資質持ちとはいえ、実力無き者を第二騎士団は入団させてくれない。

だか、俺は自分の今までしてきた努力を振り返り、落ちたって何度でも何度でも挑戦してやると誓う。


俺が幸せになるには強くならないとだめだから。

騎士団はそれを最短ルートで叶えてくれる道だと確信していた。


そうして入団試験の場に立った俺は、やはりというか最年少の受験生の様で、周りは確かな実力を持った大人の男性ばかり。

中には冷やかしのように馬鹿にしてくる奴らもいたが、完璧に無視して試験開始を待った。


するとしばらくして、始めの団長挨拶として出てきた人物は、あの時助けてくれた男、ドノバンさんで、俺の姿を見つけると少々驚いた顔をする。


もしかして覚えていてくれたのだろうか?


少しだけ嬉しいと感じている俺を見て、ドノバンさんはニヤッと笑ってから用意されていた壇上に立った。


「 初めまして~。第二騎士団団長のドノバンで~す。

まぁうだうだと騎士団の決まり事を説明しても時間の無駄だから以下省略。

簡潔に言うと、騎士団はキツくて命がけの仕事で~す。


────だが、それでもここに来たのは、それぞれ抱えている想いがあるってことだろう。

流されて大人しくしていれば、それなりにいい人生で生きられる奴らばっかりだっつーのに。 」


ここでドノバンさんはもう一度チラッと俺の方を見る。


確かに俺の能力は流されて幸せに生きていくのに最適なモノだった。


人を陥れては ” 得 ” を得て、それに対して罪悪感や他の負の感情は何も心に残さない。


それでも────俺は……。


グッと拳を握りしっかり見つめ返す俺を見て、ドノバンさんはフッと笑いながら視線を逸らした。


「 第二騎士団の騎士たちは、幸せに貪欲な奴らしかいねぇ。

この理不尽ばかりの世の中で、己の正義を突き通したいっていう幸せのために命を掛けるクレイジーな奴らだ。


自分の幸せのために戦え。

それができるやつなら……きっとここは楽しいぜ!


じゃっ!頑張れよ~! 」


ドノバンさんのだいぶ簡単で単純な挨拶に、受験生達はポカンとしていたが、俺の心には闘志の炎がメラメラと燃える。


俺はここで世界一の幸せを手に入れてやる。

この新しく手にいれた力で。



< 審裁官の資質 >( 特殊ユニークスキル )

< 正義審心 >

自身の力量、現状を瞬時に把握し、もっともBESTである選択を常に出し続ける事ができる

更に自身の感情ゲージにより、好きな選択を取るか選ぶ事ができるが、感情ゲージとその選択肢を取るための実力がそれに達しない場合、スキル< 審定精神 >の支配を受けてしまう

更にその行動が ” 善 ” に分類される事なら、ステータス値は大UPし、逆に ” 悪 ” である場合、ステータスは大DOWNする

(発現条件) 

一定以上のステータス値を持つ事

一定回数以上スキル< 審定精神 >の支配に抗う事

一定以上の正義、精神耐性値、愛情を受けた記憶を持ち、更に精神汚染度が一定以下である事




俺はもう、あの時の様に何もできずにただ見ているだけの子供じゃない。


何度も何度も俺は自分のスキルに抗って抗って抗って……この力を手に入れた。


「 俺が目指すのは世界一幸せな男だ。

だからこんな事でつまずくわけにはいかない。 」


俺を見て馬鹿にしてくる他の受験者の横を颯爽と通り抜け、俺は用意されたリングへと上がる。


入団試験は至ってシンプルでトーナメント式。

受験生同士の実戦で自分の実力を示せばいい。

ニヤニヤと笑いながら俺に向かって剣を振る輩達を────俺は圧倒的なパワーを持ってぶっ倒してやった。


「「「「 ────────えっ?? 」」」」


ポカーンと、空を飛ぶ俺がぶっ飛ばした受験生達を見上げる他の受験生達と騎士団員達の中で……ドノバンさんだけは腹を抱えて大笑いしてる。


見てろよ。


不敵に笑って俺は次々と受験生達を倒していき、とうとう立っているのは俺だけになった。

俺が受験生の中でダントツのNo. 1。

その瞬間、俺は晴れて第二騎士団の見習い騎士団員になったのだった。


「 ……やったよ。父さん、母さん。 」


一人立っているリングの上で空を見上げてボソッと告げた。


自分の力が認められて嬉しい。

でも、これが終わりではないことも知っていたため、きっとこれから険しい山あり谷ありの難解な依頼に悩み抜く日々に────……と思っていたのはここまで。


最初に叩き込まれたのは、モンスターの脅威でもこの世の理不尽さでも人の醜悪さでもない。


” おじさん ” という生物の呪い並みの厄介さであった。
しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

【完結】竜を愛する悪役令嬢と、転生従者の謀りゴト

しゃもじ
BL
貴族の間で婚約破棄が流行し、歪みに歪んだサンドレア王国。 悪役令嬢のもとに従者として転生した主人公・グレイの目的は、前世で成し遂げられなかったゲームクリア=大陸統治をし、敬愛するメルロロッティ嬢の幸せを成就すること。 前世の記憶『予知』のもと、目的達成するためにグレイは奔走するが、メルロロッティ嬢の婚約破棄後少しずつ歴史は歪曲し、グレイの予知からズレはじめる… 婚約破棄に悪役令嬢、股が緩めの転生主人公、やんわりBがLしてる。 そんな物語です。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

処理中です...