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第四十一章
1308 最後に教えてくれた事
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( ユーリス )
” なんでもっと早く助けてくれなかったの? ”
” 俺が助かったのは貴方のお陰なので、どうか謝らないでほしい。 ”
そんな言葉は一つとして頭の中には浮かばず、あるのは自分という存在への失望と絶望だけ。
俺はきっとそれから逃げたかったのだろう。
横で口を閉ざしているドノバンさんに、早口で自分のスキル< 審定精神 >について説明し、だから特に問題はないのだと伝えた。
するとドノバンさんは、それを最後まで聞いた後、頷きながらこう言ったのだ。
「 そりゃ~難儀なスキルだな。 」と。
その瞬間、怒りで頭が爆発しそうになった。
” 両親が目の前で死んでも何も感じなくて可哀想。 ”
” そんなスキルを持っているなんて、可哀想な人生しか歩めない。 ”
俺を哀れな子供にしようとする言葉に心底頭にきて、怒鳴り散らしてやろうとしたが……やはり俺の意思に反して、口は閉じてしまう。
その事にまた絶望したその時────……ドノバンさんはまっすぐ俺の方を向いた。
「 じゃあ、お前は誰よりも強くならねぇと自分の望んだ未来を歩めねぇって事か。
人生ハードモード過ぎねぇ?
世の中馬鹿みたいに強い奴らがいる中、その頂点を目指さないと、幸せになれねぇって事だもんな。 」
そう言ってドノバンさんは俺の頭をポンポンと叩く。
” 強くなる ”
その言葉は俺にとって天啓とも言える言葉で、絶望に支配されそうになっていた心に光を差した。
現状を打破できる ” 力 ” さえあれば、俺の手は足は口は……動く。
つまりは────俺は俺の ” 正義 ” を貫けるのだ!
行きたくない未来へ進まなくていい。
俺の瞳に希望の光が灯ったのに気づいたのか、ドノバンさんは更に俺の背中をバシッ!と叩き、全てのパーツを集め終わった両親の亡骸を指さした。
「 待っててやるから、最後にお別れを告げてこい。 」
俺はコクリと頷くと、そのまましっかりした足取りで両親の元へ。
揃って並ぶ二人をじっと見下ろした。
騎士団員が随分と丁寧に集めてくれたお陰か、状態はだいぶ綺麗になっていて、顔も眠っているだけの様にも見える。
そんな二人の姿を見て────────そこでやっと涙を流す事ができた。
ここでは泣いても大丈夫。
俺のスキルがそう判断したのだと思う。
そのまま怒り、憎しみ、悲しみがグチャグチャに混ざり合い、次から次へと涙となって外に溢れ出していった。
そしてそれが大量の涙で流されてしまうと、次に飛び出してきたのは、両親との沢山の思い出達だ。
キラキラと輝く沢山の幸せな記憶。
それはずっと俺の一部として俺の中で生きていく。
それをキレイなモノとして持ち続けるには……俺は強くならなければならないのだ。
ボロボロと流れる涙が地面に落ちていくのを睨みつけながら、俺は自分のスキル< 審定精神 >に怒りを向ける。
両親が目の前で殺されても、涙の一つも流させてくれない俺のスキル。
これは世の理不尽に直ぐに屈し、俺の意思を全て押さえつけて人生を歩もうとするだろう。
俺が幸せな人生を歩むためには、強くなって進める道を増やさないといけない。
それが両親が命を掛けて俺に教えてくれた事になった。
俺はグイッ!と目元を乱暴に擦り涙を拭うと、その場で跪き二人に向かって誓いを立てる。
俺は世界一の幸せ者になる。
二人の命は無駄ではなかったと一生かけて証明してみせるから、どうか安らかに……。
そうして長い間祈り続け、両親にお別れを告げると、静かに待っていてくれたドノバンさんに両親の遺体をこの場で焼いて欲しいと頼んだ。
「 ……いいのか? 」
気まずそうに尋ねてくるドノバンさんに、俺は頭を下げて「 お願いします。 」と頼み込むと、ドノバンさんはその通りにしてくれて、両親の骨は小さな箱に入れられて俺の手の中へ。
バラバラになった両親の姿を他に見せたくなかったから、これでよかった。
そう思い、俺は小さな箱になってしまった両親を両手でギュッと抱きしめて笑い、最後にドノバンさんに ” あの盗賊達はどうなるのか? ” と尋ねる。
するとドノバンさんは、サァ~……と青ざめながらブルブルと震え、俺に内緒話する様に言った。
「 死ぬことが一番幸せな所。
おっかね~女がいる場所だ。 」
そんなわけの分からぬ事だけ言い残し、ドノバンさんはそのまま「 これから頑張れよ~。 」と告げて、去っていった。
それから街の孤児院に預けられる事になった俺は、今までの ” 程々 ” の努力を捨て、 ” 死ぬ程 ” の努力をする人生を送る。
血の滲むような努力、努力、努力……。
自分がどんな資質を持っているかは分からなかったが、たとえ戦闘系の資質でなくとも絶対に諦めない。
両親の ” 死 ” は、俺に努力する力を与えてくれた。
しかし俺のスキル< 審定精神 >は、そんな俺の手足を止めようとしたが、その度に記憶の中の両親がそれを邪魔してくれる。
そして2年後、俺に告げられた資質は、なんと上級戦闘系資質【 審裁官 】であった。
” なんでもっと早く助けてくれなかったの? ”
” 俺が助かったのは貴方のお陰なので、どうか謝らないでほしい。 ”
そんな言葉は一つとして頭の中には浮かばず、あるのは自分という存在への失望と絶望だけ。
俺はきっとそれから逃げたかったのだろう。
横で口を閉ざしているドノバンさんに、早口で自分のスキル< 審定精神 >について説明し、だから特に問題はないのだと伝えた。
するとドノバンさんは、それを最後まで聞いた後、頷きながらこう言ったのだ。
「 そりゃ~難儀なスキルだな。 」と。
その瞬間、怒りで頭が爆発しそうになった。
” 両親が目の前で死んでも何も感じなくて可哀想。 ”
” そんなスキルを持っているなんて、可哀想な人生しか歩めない。 ”
俺を哀れな子供にしようとする言葉に心底頭にきて、怒鳴り散らしてやろうとしたが……やはり俺の意思に反して、口は閉じてしまう。
その事にまた絶望したその時────……ドノバンさんはまっすぐ俺の方を向いた。
「 じゃあ、お前は誰よりも強くならねぇと自分の望んだ未来を歩めねぇって事か。
人生ハードモード過ぎねぇ?
世の中馬鹿みたいに強い奴らがいる中、その頂点を目指さないと、幸せになれねぇって事だもんな。 」
そう言ってドノバンさんは俺の頭をポンポンと叩く。
” 強くなる ”
その言葉は俺にとって天啓とも言える言葉で、絶望に支配されそうになっていた心に光を差した。
現状を打破できる ” 力 ” さえあれば、俺の手は足は口は……動く。
つまりは────俺は俺の ” 正義 ” を貫けるのだ!
行きたくない未来へ進まなくていい。
俺の瞳に希望の光が灯ったのに気づいたのか、ドノバンさんは更に俺の背中をバシッ!と叩き、全てのパーツを集め終わった両親の亡骸を指さした。
「 待っててやるから、最後にお別れを告げてこい。 」
俺はコクリと頷くと、そのまましっかりした足取りで両親の元へ。
揃って並ぶ二人をじっと見下ろした。
騎士団員が随分と丁寧に集めてくれたお陰か、状態はだいぶ綺麗になっていて、顔も眠っているだけの様にも見える。
そんな二人の姿を見て────────そこでやっと涙を流す事ができた。
ここでは泣いても大丈夫。
俺のスキルがそう判断したのだと思う。
そのまま怒り、憎しみ、悲しみがグチャグチャに混ざり合い、次から次へと涙となって外に溢れ出していった。
そしてそれが大量の涙で流されてしまうと、次に飛び出してきたのは、両親との沢山の思い出達だ。
キラキラと輝く沢山の幸せな記憶。
それはずっと俺の一部として俺の中で生きていく。
それをキレイなモノとして持ち続けるには……俺は強くならなければならないのだ。
ボロボロと流れる涙が地面に落ちていくのを睨みつけながら、俺は自分のスキル< 審定精神 >に怒りを向ける。
両親が目の前で殺されても、涙の一つも流させてくれない俺のスキル。
これは世の理不尽に直ぐに屈し、俺の意思を全て押さえつけて人生を歩もうとするだろう。
俺が幸せな人生を歩むためには、強くなって進める道を増やさないといけない。
それが両親が命を掛けて俺に教えてくれた事になった。
俺はグイッ!と目元を乱暴に擦り涙を拭うと、その場で跪き二人に向かって誓いを立てる。
俺は世界一の幸せ者になる。
二人の命は無駄ではなかったと一生かけて証明してみせるから、どうか安らかに……。
そうして長い間祈り続け、両親にお別れを告げると、静かに待っていてくれたドノバンさんに両親の遺体をこの場で焼いて欲しいと頼んだ。
「 ……いいのか? 」
気まずそうに尋ねてくるドノバンさんに、俺は頭を下げて「 お願いします。 」と頼み込むと、ドノバンさんはその通りにしてくれて、両親の骨は小さな箱に入れられて俺の手の中へ。
バラバラになった両親の姿を他に見せたくなかったから、これでよかった。
そう思い、俺は小さな箱になってしまった両親を両手でギュッと抱きしめて笑い、最後にドノバンさんに ” あの盗賊達はどうなるのか? ” と尋ねる。
するとドノバンさんは、サァ~……と青ざめながらブルブルと震え、俺に内緒話する様に言った。
「 死ぬことが一番幸せな所。
おっかね~女がいる場所だ。 」
そんなわけの分からぬ事だけ言い残し、ドノバンさんはそのまま「 これから頑張れよ~。 」と告げて、去っていった。
それから街の孤児院に預けられる事になった俺は、今までの ” 程々 ” の努力を捨て、 ” 死ぬ程 ” の努力をする人生を送る。
血の滲むような努力、努力、努力……。
自分がどんな資質を持っているかは分からなかったが、たとえ戦闘系の資質でなくとも絶対に諦めない。
両親の ” 死 ” は、俺に努力する力を与えてくれた。
しかし俺のスキル< 審定精神 >は、そんな俺の手足を止めようとしたが、その度に記憶の中の両親がそれを邪魔してくれる。
そして2年後、俺に告げられた資質は、なんと上級戦闘系資質【 審裁官 】であった。
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