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第四十一章

1305 嘘は言ってない

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( ユーリス )


《 私はリーフ様の専属執事。

主人が選んだ選択を支持し、成功に導く事が私の仕事だろう? 》


” リーフ様 ” 

” 専属執事 ”


その言葉に反応したのは、守備隊のケンさんとマルクさん、そして守備隊員全員だ。

ケンさんとマルクさんはお互い顔を合わせ「 リーフ ” 様 ” ?? 」「 専属執事……。 」とブツブツ呟いている。


まさか知らなかったのか……?


それに気付いた俺が、大きく首を傾げている守備隊に説明した。


「 リーフ君……いや、リーフ様はこの国唯一の公爵家< メルンブルク家 >の正当な御子息ですよ。 」


そう教えてあげると、全員が一瞬で青ざめブハッ!!と吹き出す。


「 はぁぁぁぁぁ!!???

えっ……リ、リ、リーフって……いや、リーフ様って、公爵だったのかよっ!!??

────やっぺ、俺、会う度に普通に背中とか肩とかバシバシ叩いて、完全に子供扱いしてたぜ……。 」


「 私なんて ” ウチのパンは世界一~♬ ” なんて浮かれながら庶民のパンを毎日……。

完全なる不敬罪ですよ……。ど、どうしよう……。 」


「 おいおい、俺も言っとくが大貴族様だからな?

侯爵様だからな? 」


ケンさんとマルクさんがオロオロしていると、ドノバンさんがジト……とした目で二人を睨む。

しかし、そんなモノは眼中に入ってない様で二人と守備隊員達が動揺していると、伝電鳥からはクスッと笑う事が聞こえた。


《 グリモアの守備隊の皆様、我が主人リーフ様が大変お世話になっているようで……。

リーフ様は貴族としての待遇を望まれぬお方ですので、どうか今まで通りの接し方でお願いしたします。 》


「 い……いや、そうは言っても公爵様なんてよぉ~……。

────ん??あ、あれ?? 」


ケンさんは困った様に頭を掻きながらそう言ったが、突然違和感を感じた様でピタリと止まる。

するとマルクさんもその違和感に気付いた様で、おずおずと伝電鳥に尋ねた。


「 あの……私の記憶ではこの国の公爵家はたった一つ。

かの有名な< メルンブルク家 >ですよね……?


< メルンブルク家 >で間違いないのでしょうか? 」


恐る恐る質問するマルクさん。

そんなマルクさんの質問を受けた伝電鳥からは見えないのにニッコリと笑うカルパスさんが見えた様な気がした。

    
《 はい。< メルンブルク家 >で間違いはございません。 》


その答えを聞いた瞬間、守備隊員達の息を飲むような声が聞こえてくる。

そして戸惑うような空気がその場に充満すると、突然ケンさんがボソッと呟いた。


「 だってあいつ外見が……。


……あぁ、そういう事かよ。


クソっ!なんつーヒデェ話だ!

だからあいつ、冒険者なんかしてお金が……。 」


「 リーフ君、あんなに明るく笑っているのに……そんな苦労をしていたんだね。

子供になんて事をするんだ、あの性悪クソッタレ貴族め。 」


ケンさんとマルクさんは勝手にリーフ君の境遇を想像し、怒りの表情を浮かべる。

そしてそれは周りの守備隊員達へ広がり、更に脳筋の第二騎士団の団員たちにまで広がっていった。


「 な、なんて酷い奴らなんだ! 」


「 自分の子供だろう!ふざけるな!ナルシスト貴族!! 」


「 クソ公爵家めっ!! 」


ワーワー!!と怒り出す戦闘員達を見て、ドノバンさんは汗を一筋垂らす。


「 いやいや、あいつマジで何とも思ってねぇから。

冒険者だってどうせ楽しそうだからじゃ……。

確かに俺も最初はそう思ったんだけどな?

本当に一ミリも────……。 」


《 その通りです!!

リーフ様は心の痛みを隠し、周りに心配を掛けまいと笑顔を絶やさぬ素晴らしいお方なのです!

……しかし、私は知っています。

リーフ様が毎晩枕を濡らしている事を!!

────ですので、これからもぜひ、リーフ様のお力になっていただければ幸いです。 》


しおらしいカルパスさんの言葉に、ケンさんとマルクさんを初めとする全戦闘員達は、グスンと鼻を啜った。


「 勿論だ!!!! 」


「 それで少しでも慰めになるなら……! 」


「 なんて健気で強い子なんだ、救世主様……。 」


「 ……いや、だからな?あいつは全然気にしてねぇって。

それに毎晩枕を濡らしているって……それヨダレだから。 」


感動の涙まで流す集団に、ドノバンさんの突っ込みは全く聞こえない様だ。

俺は空気を読んで黙りながら、カルパスさんに声を掛けた。


「 ……相変わらずお見事で。 」


《 はて?何のことかな?

私は本当の事しか言っていないが。 》


カルパスさんは、シレッとそんな事を言って笑いを漏らす。


チャンスは絶対逃さない。

それが尊敬される熟年者になるためには必要なものか……。


未だオロオロしながら団員達を見ている駄目な中年おじさんのドノバンさんを見て、そう思った。


そしてやがてドノバンさんは説得する事を諦めたのか、テンション高く戦い始めた戦闘員達を見て頭をポリポリ掻くと……自身の肩に止まっている伝電鳥に視線を向ける。


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