1,270 / 1,315
第三十九章
1255 選んだ道
しおりを挟む
( フラン )
それからアーサー様の滞在中、まるで ” 金魚の糞 ” だと陰口を叩かれながらも、私はアーサー様の後をついて回る。
そしてアーサー様の幅広い知識や、それを最大限に使って相手の世界と繋がっていく様を見て何度も目を剥いた。
まるで魔法みたいだ……。
ただただその手腕に感動しつつ、私はまるで水を得た魚の様に自分の知識と照らし合わせながら、多くの事を学んでいく。
そしてそんな充実した日々はあっという間に終わってしまい、アーサー様は我々にお礼を告げて自国へと帰っていった。
「 行ってしまわれたか……。 」
人生の中で言えば非常に短い時間。
なのに、ガラリと自分の世界が変わってしまったのが、心底不思議だと思った。
アーサー様はいなくなったが、アーサー様によって生み出された自分はここに新たに存在している。
なんだか初めて味わう不思議な気分だ。
そんな余韻に浸っていた私は、その直後に父であるレギン王に呼ばれ、王の謁見の間を訪れることになった。
直ぐに向かうと、そこには王座に座っている父と宰相であるソクスがいて、二人は跪く私を静かに見つめる。
「 どうだ?
・
アーサー殿は、お前に道を見せてくれたか? 」
突然の抽象的な質問に驚いたが、父の意図はとっくにお見通しだったため「 はい。 」と素直に頷く。
すると父は満足そうに頷いた。
「 アーサー殿はこれまでにない考え方を持った不思議なお方だ。
今までこの国を訪問した人族の中で、あの様なドワーフ族流の挨拶をするモノなどいなかっただろう?
以前【 五老会 】と共にアルバード王国を訪問した際も、アレをやられてな。
頭の堅い【 五老会 】の奴らは、それからアーサー殿にメロメロになってしまったよ。
自分たちの大事にしてきたモノを尊重されて、心の底から嬉しかったんだろうな。 」
父はその時の様子を思い出したのか、ククッと笑い、その後は私の目を痛いくらいまっすぐ見つめる。
「 たった一つの挨拶だけ。
そう言ってしまえばそれだけの事だが……その ” たったそれだけ ” をできる者は、この世界の中でとても少ない。
こんな簡単な事でも、沢山のモノが邪魔をして中々できないのだ。
それは勿論私にもある。 」
時代に淘汰されてしまったドワーフ流の挨拶。
過去より未来を見つめる若者たちにとって、それは見向きもされないモノであった。
新たに吹き荒れる時代の風は、古き文化や風習を、次々と吹き飛ばし消していく。
それは過去を生きた人々にとってとてもとても悲しい事であった。
未来を見つめる若者も、過去を大事に抱える先人達も、どちらも間違ってはいない。
それを【 五老会 】や古きを愛する貴族達も分かっているが、様々な感情から全てを受け入れる事はできない中、アーサー様が己の大事にしている過去を知り、そして大事に想ってくれた事がとても嬉しかったのだ。
自分を知ろうとしてくれた事。
知りたいと願い、その努力をしてくれた事。
人の心を動かすには、こんな些細な行動から始まるのだと、私は今回の事で学んだ。
そしてその行動を起こすためには沢山の ” 知識 ” が必要である事も……。
「 私は私なりのやり方で、今の世界と向き合っていきたいと思います。
そのための ” 力 ” は既にありますから。 」
今まで見せたことのない好戦的な目を父に向けると、ソクスは目を丸くし驚いていたが、父はしてやったりと言わんばかりに笑っていた。
自分を受け入れてくれぬ世界を恨み、知ろうとしなければ、永遠に孤独な世界で生きる事になる。
人は一人では生きていけないのは、今まで学んだ歴史の中でも、アーサー様と出会って答えを出した事からもよく分かっていた。
だから私はこの ” 力 ” を使って沢山の世界を見て、直接触れてみよう。
それによって自分が一体どこまで変わっていけるのか……とても楽しみだ!
私は好奇心と未来に対する希望を胸に、そのまま大きく一歩を踏み出した。
それから私は、今まではそこまで注目してなかった旧古代技術を徹底的に学び始め、それを今の技術と照らし合わせていった。
今の技術はその旧古代技術の上にあり、それを学ぶ者はもう殆どいなかったが、私はまだそれに改善の余地があると考えたからだ。
インスタント的に進化させただけでは、直ぐに限界に到達する。
だからこそそこを深く掘り下げる事で新たな技術を作り上げたいと、そう思ったのだ。
最初は ” 本食い虫姫の気まぐれ ” と思われていたが、必死に走り回っては、根気強く現場の様子を見に来る私に、次第に周りは心を開いていった。
自分の誇りと言える技術を興味を持って学ぼうとしてくれている。
それが嬉しかったのか、全員がとても協力的に色々な事を教えてくれた。
それからしばらくして、私はある画期的な技術の発明に成功する。
それが ” 仮想幻石の大幅な技術の向上 ” だ。
古き先人達が発明した最高傑作。
それを旧古代技術を更に進化させ、遥か高みへと導いた事に誰もが度肝を抜かれ、私に惜しみない拍手とリスペクトを贈ってくれた。
自分たちの大事にする古きを使い、更に未来を示す新たな技術の開発。
それに誰も文句や不満を述べる者達はおらず、もはやこの国に私を否定する者達はいなくなった。
” フラン王女を時代の王に!! ”
いつしか周りからはそんな声が聞こえる様になった頃、父は私を呼びつけ、静かに問う。
「 お前はこれからどう在りたい? 」
必死に前に進む事しか見ていなかった私に問われた、新たな課題。
だから私はその場で今までの事を振り返りながら考えた。
それからアーサー様の滞在中、まるで ” 金魚の糞 ” だと陰口を叩かれながらも、私はアーサー様の後をついて回る。
そしてアーサー様の幅広い知識や、それを最大限に使って相手の世界と繋がっていく様を見て何度も目を剥いた。
まるで魔法みたいだ……。
ただただその手腕に感動しつつ、私はまるで水を得た魚の様に自分の知識と照らし合わせながら、多くの事を学んでいく。
そしてそんな充実した日々はあっという間に終わってしまい、アーサー様は我々にお礼を告げて自国へと帰っていった。
「 行ってしまわれたか……。 」
人生の中で言えば非常に短い時間。
なのに、ガラリと自分の世界が変わってしまったのが、心底不思議だと思った。
アーサー様はいなくなったが、アーサー様によって生み出された自分はここに新たに存在している。
なんだか初めて味わう不思議な気分だ。
そんな余韻に浸っていた私は、その直後に父であるレギン王に呼ばれ、王の謁見の間を訪れることになった。
直ぐに向かうと、そこには王座に座っている父と宰相であるソクスがいて、二人は跪く私を静かに見つめる。
「 どうだ?
・
アーサー殿は、お前に道を見せてくれたか? 」
突然の抽象的な質問に驚いたが、父の意図はとっくにお見通しだったため「 はい。 」と素直に頷く。
すると父は満足そうに頷いた。
「 アーサー殿はこれまでにない考え方を持った不思議なお方だ。
今までこの国を訪問した人族の中で、あの様なドワーフ族流の挨拶をするモノなどいなかっただろう?
以前【 五老会 】と共にアルバード王国を訪問した際も、アレをやられてな。
頭の堅い【 五老会 】の奴らは、それからアーサー殿にメロメロになってしまったよ。
自分たちの大事にしてきたモノを尊重されて、心の底から嬉しかったんだろうな。 」
父はその時の様子を思い出したのか、ククッと笑い、その後は私の目を痛いくらいまっすぐ見つめる。
「 たった一つの挨拶だけ。
そう言ってしまえばそれだけの事だが……その ” たったそれだけ ” をできる者は、この世界の中でとても少ない。
こんな簡単な事でも、沢山のモノが邪魔をして中々できないのだ。
それは勿論私にもある。 」
時代に淘汰されてしまったドワーフ流の挨拶。
過去より未来を見つめる若者たちにとって、それは見向きもされないモノであった。
新たに吹き荒れる時代の風は、古き文化や風習を、次々と吹き飛ばし消していく。
それは過去を生きた人々にとってとてもとても悲しい事であった。
未来を見つめる若者も、過去を大事に抱える先人達も、どちらも間違ってはいない。
それを【 五老会 】や古きを愛する貴族達も分かっているが、様々な感情から全てを受け入れる事はできない中、アーサー様が己の大事にしている過去を知り、そして大事に想ってくれた事がとても嬉しかったのだ。
自分を知ろうとしてくれた事。
知りたいと願い、その努力をしてくれた事。
人の心を動かすには、こんな些細な行動から始まるのだと、私は今回の事で学んだ。
そしてその行動を起こすためには沢山の ” 知識 ” が必要である事も……。
「 私は私なりのやり方で、今の世界と向き合っていきたいと思います。
そのための ” 力 ” は既にありますから。 」
今まで見せたことのない好戦的な目を父に向けると、ソクスは目を丸くし驚いていたが、父はしてやったりと言わんばかりに笑っていた。
自分を受け入れてくれぬ世界を恨み、知ろうとしなければ、永遠に孤独な世界で生きる事になる。
人は一人では生きていけないのは、今まで学んだ歴史の中でも、アーサー様と出会って答えを出した事からもよく分かっていた。
だから私はこの ” 力 ” を使って沢山の世界を見て、直接触れてみよう。
それによって自分が一体どこまで変わっていけるのか……とても楽しみだ!
私は好奇心と未来に対する希望を胸に、そのまま大きく一歩を踏み出した。
それから私は、今まではそこまで注目してなかった旧古代技術を徹底的に学び始め、それを今の技術と照らし合わせていった。
今の技術はその旧古代技術の上にあり、それを学ぶ者はもう殆どいなかったが、私はまだそれに改善の余地があると考えたからだ。
インスタント的に進化させただけでは、直ぐに限界に到達する。
だからこそそこを深く掘り下げる事で新たな技術を作り上げたいと、そう思ったのだ。
最初は ” 本食い虫姫の気まぐれ ” と思われていたが、必死に走り回っては、根気強く現場の様子を見に来る私に、次第に周りは心を開いていった。
自分の誇りと言える技術を興味を持って学ぼうとしてくれている。
それが嬉しかったのか、全員がとても協力的に色々な事を教えてくれた。
それからしばらくして、私はある画期的な技術の発明に成功する。
それが ” 仮想幻石の大幅な技術の向上 ” だ。
古き先人達が発明した最高傑作。
それを旧古代技術を更に進化させ、遥か高みへと導いた事に誰もが度肝を抜かれ、私に惜しみない拍手とリスペクトを贈ってくれた。
自分たちの大事にする古きを使い、更に未来を示す新たな技術の開発。
それに誰も文句や不満を述べる者達はおらず、もはやこの国に私を否定する者達はいなくなった。
” フラン王女を時代の王に!! ”
いつしか周りからはそんな声が聞こえる様になった頃、父は私を呼びつけ、静かに問う。
「 お前はこれからどう在りたい? 」
必死に前に進む事しか見ていなかった私に問われた、新たな課題。
だから私はその場で今までの事を振り返りながら考えた。
134
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話
バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。 そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……? 完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公 世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる