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第三十九章
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( フラン )
私の資質【 建術師 】は、モノ作りに適している資質と思いきや、今までその資質を上手く生かせた者がいない、いわゆるハズレ資質であると言われているものだった。
────というのも、この資質は ” 頭脳 ” ありきの資質だったため、知力が高くなければ生かせなかったためだ。
” 頭より体 ”
” とにかく技術は体に叩き込む ”
それが常識の国であったため、知力ありきの資質はあまりその本領を発揮できると思われていなかった。
勿論アルバード王国や他の他種族との接触も多くなってきて、” 器用さ ” だけに価値があるとは思っていなくとも、それを全否定してしまえば、ここまで歴史を作ってきたご先祖様達を否定すると言う事。
そのため他種族に習ったまったく別の価値観は、若者たちを中心に徐々に徐々に……非常にゆっくりなペースで変わっていっている感じで、それが今も続いている感じであった。
その結果、【 ドワーフ騎士団 】という、戦いに特化した者たちで形成される戦力が頭角を現しだし、今や国の防衛の要となっているのだ。
しかし……やはりどうしてもドワーフ本来の歴史を重んじるべきと反発する勢力も多く、国は大きく分けて二分化してしまっている。
” 知力や力ありきの資質などドワーフらしくない ”
” ドワーフの誇りはモノ作りにある。
騎士団など、力に物を言わせて戦う野蛮集団ではないか! ”
そう叫ぶ彼らは、武器や防具、戦闘用の魔道具や兵器などを進化させるべきだと主張し、これまでと同じ様に、ドワーフ本来の技術を向上してきたというわけだ。
ドワーフ騎士団が、今や防衛の要なのは彼らとて分かってはいる事だが、祖先たちはドワーフの古き良き価値観の元、今の豊かな生活を生み出してくれた。
だから子孫である我々はそれに感謝をし、決して軽んじてはいけない。
しかし──────世界は常に変わり続け、その形を大きく変えていく。
古きを大事にしすぎて柔軟性を失くしてしまえば、その種は滅びの道を歩むしかないのだと、歴史が証明してくれた。
未来を犠牲に、過去を大事にするのが絶対的に ” 正しい ” のは、その過去を必死に生きた人たち。
その過去を生きていない若者の未来を犠牲にするのは────きっと絶対的に ” 正しい ” とは言えないと思う。
私は、まさに過去に重きを置くというその ” 正しさ ” に叩きのめされ、自分が何を望み、何を目指しているのか……そして自分に価値はあるのか?
その全てが分からず、とりあえず王室に保管されている知識の山、王宮図書資料室に毎日籠っては本を読む。
" またフラン王女は、先人たちの築いてくれた技術を学ぼうとせず、籠って本を読んでいるのか?
やる気がない怠惰なお人だ。 "
" 父であるレギン王は素晴らしい腕をお持ちなのに、その娘は……。
エルフ族の様に本ばかり読んで、まるで本食い虫姫だな。 "
王宮内に私を認めてくれる者はいない。
それには大きな理由があって、王の他に国の重鎮を務める選ばれし五人のドワーフ達────【 五老会 】が、古きを大事にする価値観を強く持っていたからだ。
ガンドレイド王国の権力は王政ではあるが、基本はその権力は二分化されていて、二大権力の一つは勿論【 王 】、そしてもう一つの権力がこの【 五老会 】なのだ。
いかに王とて、この【 五老会 】の承認なしに、権力を行使できない。
そうして王一人に権力を収束させ、独裁国家にさせない様な仕組みになっているのだが、そもそもこの【 五老会 】ができたのは、四カ国同盟の後。
その理由は、なんとも悲しいガンドレイド王国の歴史の中にあった。
四カ国同盟から世代が二回ほど変わった頃────。
当時、完全な王政国家であったガンドレイド王国は、全て王一人によって国の全てが決められ、一つの価値観のみが正義となってしまっていた。
その結果、もともとドワーフ本来の価値観を大事にしていた王はどんどんと思想を過激にしていき、いつしかドワーフ本来の能力を持たぬ者は全て奴隷として虐げ始める。
そして、逆に自分の認めた価値観の中で才ある者に、多くの権力や財産を与えていった。
その結果、今度はその ” 優秀な人材 ” 達に、選民意識が芽生える。
" 我々は、この世界に選ばれたドワーフである。 "
" だから全てが正しい。”
” 激しく劣る下の存在の者たちは全員、ただ我々に従うべき。 ”
それにより差別化はどんどん進み、不満を募らせた民は各地で暴徒化。
とうとう衝突が始まってしまった。
当然王は沈静化を図るために兵を差し向けるのだが……兵の中でも民意識が骨の髄までしみついていた一部の者たちが、次々と自分たちに逆らう民達を殺してしまっため、戦いは泥沼化してしまう。
大事な家族を。
恋人を。
友人を……。
それを理不尽に奪われてしまった者たちは、自らの命を顧みず戦いに身を投じていき、何の関係もない兵達も自分の命を守るため戦うしかない。
こうなると戦いは止まらない。
” 一体自分たちは何のために戦っているのだろう? ”
そんな事すら分からなくなった頃、突然高みの見物をしていた王へ、ヘイトが向いた。
私の資質【 建術師 】は、モノ作りに適している資質と思いきや、今までその資質を上手く生かせた者がいない、いわゆるハズレ資質であると言われているものだった。
────というのも、この資質は ” 頭脳 ” ありきの資質だったため、知力が高くなければ生かせなかったためだ。
” 頭より体 ”
” とにかく技術は体に叩き込む ”
それが常識の国であったため、知力ありきの資質はあまりその本領を発揮できると思われていなかった。
勿論アルバード王国や他の他種族との接触も多くなってきて、” 器用さ ” だけに価値があるとは思っていなくとも、それを全否定してしまえば、ここまで歴史を作ってきたご先祖様達を否定すると言う事。
そのため他種族に習ったまったく別の価値観は、若者たちを中心に徐々に徐々に……非常にゆっくりなペースで変わっていっている感じで、それが今も続いている感じであった。
その結果、【 ドワーフ騎士団 】という、戦いに特化した者たちで形成される戦力が頭角を現しだし、今や国の防衛の要となっているのだ。
しかし……やはりどうしてもドワーフ本来の歴史を重んじるべきと反発する勢力も多く、国は大きく分けて二分化してしまっている。
” 知力や力ありきの資質などドワーフらしくない ”
” ドワーフの誇りはモノ作りにある。
騎士団など、力に物を言わせて戦う野蛮集団ではないか! ”
そう叫ぶ彼らは、武器や防具、戦闘用の魔道具や兵器などを進化させるべきだと主張し、これまでと同じ様に、ドワーフ本来の技術を向上してきたというわけだ。
ドワーフ騎士団が、今や防衛の要なのは彼らとて分かってはいる事だが、祖先たちはドワーフの古き良き価値観の元、今の豊かな生活を生み出してくれた。
だから子孫である我々はそれに感謝をし、決して軽んじてはいけない。
しかし──────世界は常に変わり続け、その形を大きく変えていく。
古きを大事にしすぎて柔軟性を失くしてしまえば、その種は滅びの道を歩むしかないのだと、歴史が証明してくれた。
未来を犠牲に、過去を大事にするのが絶対的に ” 正しい ” のは、その過去を必死に生きた人たち。
その過去を生きていない若者の未来を犠牲にするのは────きっと絶対的に ” 正しい ” とは言えないと思う。
私は、まさに過去に重きを置くというその ” 正しさ ” に叩きのめされ、自分が何を望み、何を目指しているのか……そして自分に価値はあるのか?
その全てが分からず、とりあえず王室に保管されている知識の山、王宮図書資料室に毎日籠っては本を読む。
" またフラン王女は、先人たちの築いてくれた技術を学ぼうとせず、籠って本を読んでいるのか?
やる気がない怠惰なお人だ。 "
" 父であるレギン王は素晴らしい腕をお持ちなのに、その娘は……。
エルフ族の様に本ばかり読んで、まるで本食い虫姫だな。 "
王宮内に私を認めてくれる者はいない。
それには大きな理由があって、王の他に国の重鎮を務める選ばれし五人のドワーフ達────【 五老会 】が、古きを大事にする価値観を強く持っていたからだ。
ガンドレイド王国の権力は王政ではあるが、基本はその権力は二分化されていて、二大権力の一つは勿論【 王 】、そしてもう一つの権力がこの【 五老会 】なのだ。
いかに王とて、この【 五老会 】の承認なしに、権力を行使できない。
そうして王一人に権力を収束させ、独裁国家にさせない様な仕組みになっているのだが、そもそもこの【 五老会 】ができたのは、四カ国同盟の後。
その理由は、なんとも悲しいガンドレイド王国の歴史の中にあった。
四カ国同盟から世代が二回ほど変わった頃────。
当時、完全な王政国家であったガンドレイド王国は、全て王一人によって国の全てが決められ、一つの価値観のみが正義となってしまっていた。
その結果、もともとドワーフ本来の価値観を大事にしていた王はどんどんと思想を過激にしていき、いつしかドワーフ本来の能力を持たぬ者は全て奴隷として虐げ始める。
そして、逆に自分の認めた価値観の中で才ある者に、多くの権力や財産を与えていった。
その結果、今度はその ” 優秀な人材 ” 達に、選民意識が芽生える。
" 我々は、この世界に選ばれたドワーフである。 "
" だから全てが正しい。”
” 激しく劣る下の存在の者たちは全員、ただ我々に従うべき。 ”
それにより差別化はどんどん進み、不満を募らせた民は各地で暴徒化。
とうとう衝突が始まってしまった。
当然王は沈静化を図るために兵を差し向けるのだが……兵の中でも民意識が骨の髄までしみついていた一部の者たちが、次々と自分たちに逆らう民達を殺してしまっため、戦いは泥沼化してしまう。
大事な家族を。
恋人を。
友人を……。
それを理不尽に奪われてしまった者たちは、自らの命を顧みず戦いに身を投じていき、何の関係もない兵達も自分の命を守るため戦うしかない。
こうなると戦いは止まらない。
” 一体自分たちは何のために戦っているのだろう? ”
そんな事すら分からなくなった頃、突然高みの見物をしていた王へ、ヘイトが向いた。
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