上 下
1,264 / 1,370
第三十九章

1249 ドワーフ族の価値観

しおりを挟む
( フラン )


「 よしっ!!一気に押し戻せぇぇぇぇぇ─────っ!!! 」


「「「「 うおおおおおおお───────っ!!!! 」」」」


クルトの大声に答え、前衛班達が一斉に迫りくるモンスター達を押し戻すと、モンスター達は派手に飛び散り、戦況は優勢に。

そして後ろに一旦下がろうとした後方のモンスター達は、後衛班達が遠距離攻撃で吹き飛ばした。


「 前衛の壁モンスター及び後方のモンスター達撃破により、一旦更に後方のモンスターは下がりました!!

この隙に前衛班は体力回復、後衛班は魔力回復をお願いします! 」


絶えず的確な指示を出す解析班の声が響く中、私も指示に従い、その隙に魔力を回復させる。


この場の全員には、一人一人確かな実力がある。

しかし人型種がモンスターを相手にして勝つにはそれだけでは勝てない。


” チームワークを駆使すること。”


それこそが最強の力であると、この私、フランは知っていた。





私はフラン。

ライトノア学院の学院長で、本名は────


< フラン・ペティ・ガンドレイド >


ドワーフ族の国【 ガンドレイド王国 】現王< レギン >の一人娘であり、元第一王女であった。


ガンドレイド王国では、王族のみが3つ名を持つのだが、大した功績を残さなければその名は取り上げられるのが普通で……その理由として上げられるのは、ドワーフ族の古くから続く価値観にある。


アルバード王国とは違い、爵位という身分は生まれによって尊重されるものではなく、如何に素晴らしい作品を仕上げたかという実力によって評価されるモノだからだ。


要は王族も貴族も後継者は血の繋がっった子が必ずなるわけではなく、実力なき子は早々に独立し平民として暮らす事が多い。


そんな ” 器用さ ”  に価値観を置く実力主義国であったガンドレイド王国は、今から約1500前、ドロティア帝国との戦いで滅びの危機に直面した。


” 器用さ ” に優れていても、圧倒的な ” 力 ” をもって侵略してくる相手には、手も足も出ない。


ガンドレイド王国はそのままドロティア帝国によって支配され、これからドワーフ族は全員殺されるか奴隷にされるかという、絶望しかない選択肢を無理やり与えられたのだが────……その時助けてくれたのが< アルバード王国 >であった。


その時の戦いは今もなおガンドレイド王国で語り継がれていて、小学院にてまず最初に習うのがこの歴史というくらい、ドワーフ族はアルバード王国に感謝をしている。


人族は己の強さ、弱さを知り、非常に柔軟に戦況に順応しては、チームワークを駆使して敵を討つ。


” 一人で最強 ” ではなく ” 全員で最強 ” という戦い方は、個人の世界観を表現する事に重きを置いていたドワーフ族にとって、衝撃的な戦い方であった。


その当時の王は、素晴らしい建造の腕を持って王になった男であったが、柔軟さにも優れていて、直ぐにそんな人族の価値観を認める。

自分たちも出来る事を!

そう思い直ぐに動き出し、生き残っていたドワーフ族に戦うための武器や防具、兵器などの作製を命じて、全てアルバード王国の兵達に提供したのだった。


するとあっという間に戦況は変わり、国をほぼ占拠していたドロティア帝国の兵たちはガンドレイド王国から撤退し始め、見事に国を取り返すことができたのだ。


ガンドレイド王国は、それまで他の価値観を決して認める事はしなかったのだが、この戦いによってそれは大きな間違いであったと認めた。


人は一人では生きていけない。


弱い人型種は、お互いの ” 個 ” ではなく ” 団 ” で生きていかなければ、この残酷な世を生きていく事はできないという事。


そのためには他の価値観も認めていかなければ、我々ドワーフ族は、世の淘汰によって滅びの道を歩むだろう。


それを教えてくれたアルバード王国に、当時の王は感謝し、自身の国の技術提供と共に、より良い関係を希望した。


そして結ばれたのが『 四カ国同盟 』


四カ国同盟の存在と共に、ガンドレイド王国は今でもアルバード王国への恩を忘れず、現在までそれは変わらない。


そんな友好国となったアルバード王国のため、ガンドレイド王国は様々な武器や兵器を作って提供してきたが、その中でも最高傑作となったのが─────< 仮想幻石 >だ。


これは予め身につけておく事で、自身の体を仮想実体と呼ばれる仮想体で覆い、死んでも五体満足な状態で復活できるという革命的な魔道具であった。


現在はその制作レベルによってレベル1~10まで作る事が可能であり、そのレベルの数だけ復活する事ができるのだが……その魔道具には弱点が2つほどある。


1つ目は ” 感覚を失くす事ができない事 ” 

これにより、体は現実的な ” 死 ” の感覚を味わう事になり、ショック死してしまう事もあった。


そして2つ目は ” それを作るための部品が非常に精巧である事 ” だ。


それを作れる職人は現在ドワーフ族の中でも特に優秀な一握りの者たちにしかおらず、その内の一人が、この私、フランであった。


今でこそこうして実力を認められ、ライトノア学院も任されている私だったが、昔はその逆。

誰も認めてくれるモノはおらず、その中には自分自身も入っていた。


私は苦笑いと共に、昔、ガンドレイド王国で腐っていた自分を思い出す。

しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく

藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。 目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり…… 巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。 【感想のお返事について】 感想をくださりありがとうございます。 執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。 大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。

処理中です...