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第三十九章

1241 人生の転機

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( キュイ )


うん、そうだね。

あなたは ” カッコいい ”


実際この場では、守備隊長は、何も間違っていない正義のヒーローだ。


だから守備隊長はこのまま ” カッコいい ” 正義のヒーローのままココに。

そして私達は自分の信じる ” カッコいい ” を探しに行く。


誰も間違ってはいない。


” ココは最高の場所だろう ” と語る守備隊長に、最後にベリーちゃんは言った。


「 何の未練も罪悪感もなく捨て去る事ができる最高の職場でした。

きっと優しい思い出が一つでもあったら、情が残って旅立てなかったでしょうから。 」


私が言いたかった事を代弁してくれたベリーちゃんに満足して、私達は最後に心からのお礼を告げる。


「 ありがとうございました。 」


どんなに私とベリーちゃんを止めても、それを咎めても無駄。

ココからすっかり心は離れてしまっていて、何を見ても凄く遠い世界のお話としか見えなくなっていたから。

絶望に染まった中で、最後に見た ” カッコいい ” 人たちは……やはり最後までカッコいいとは思えなかった。



そうして父が消え、空っぽになった故郷を飛び出し、私達は憧れのファッションデザイナー< フラン >様がいるグリモアを目指す事にしたのだが、外の世界は私達にとって驚きの連続で……気がつけば既に1年!


もうそんなに経っちゃったのか……。


あっという間の1年に、時の流れの早さを知り、” あんまり遅せぇと見つかる前に死んじまうぜ? ” と言う父の言葉の正しさを知った。


そして広い世界を見て、感じて自分なりの答えを見つけていく中で、思い知った事は自分の ” 好き ” を仕事にする事はとても難しい事。

要はただ漠然とした ” 好き ” では、誰にもその良さをアピールするのは難しいという事だ。


じゃあ、私はどうやって生きていけばいいのか。

どうしたら夢を叶えられるのか。


沢山沢山考えた。


結果、自分は才能に恵まれ、更に努力して手に入れた ” 力 ” を使って人を助ける仕事をしたい。

そして自分の ” 好き ” は、仕事ではなく趣味として叶えよう。


そう答えを出したのだが────現実はそう甘くはなく、じゃあどの仕事につこうかという所ですぐに頓挫してしまった。


「 でもさ……また ” 組織 ” に属するって事は、そこが決めたルールに従わないといけなくなるよ。

もし、またとんでもないヤツが上だったら、理不尽な目に合うよね……。


戦闘職って基本はチームプレーだし、上下関係も厳しい。

ある程度周りに合わせないと迷惑掛けちゃうから、その場に順応する能力が必要だと思うんだ。

まぁ、あんなに酷い職場はそうはないと思うけど、私……協調性自体に正直あんまり自信ないかも。 」


自分の考えを素直にベリーちゃんに話すと、こんな答えが返って来て、その通りだと思って思わず口を閉ざす。


結局は人間関係でつまずいちゃうんだよねぇ~……。


どんな仕事であれ、人とのコミュニケーションは必須。

それに対し私達はイマイチ自信がなく、またそれができない自分が入る事で、上手くいっている場を乱してしまうのでは?という心配もあった。


入ったらすぐに ” 辞めます! ” ────も迷惑だからできないし……。


悶々……。

悶々悶々……。


そうして大いに迷っている間に、乗っていた荷台馬車が盗賊に襲われたために、一旦思考は中断。


合計25人。

纏う魔力の感じからも実力は大した事がない。


この人たち一人一人にも人生があって、色々な事を見て学んだ結果、今があるのか。


乗客たちをギラギラした欲まみれの目で見ている盗賊たちを見て、フッ……とそう考えた。


こんな場所でも、自分なりに選択肢して選んだ場所で、だから必死に守ろうとして ” 人 ” を使おうとしている。

ボンヤリとそんな事を考えながら、とうとう襲い来る盗賊達によって止められてしまった場所の中で、私はゆっくり立ち上がった。


だったら終わりもその場所で迎えてもらおう。

だって私はその場所にいたいと思わないんだから、仕方ないでしょ?


「 25人。12人ずつの最後の一人は早い者勝ち。 」


「 おっけ~。 」


ベリーちゃんの提案に賛成すると、そのままあっという間に戦闘は終了。
        ・・
ただ最後の他よりマシなヤツが小さな女の子を人質にとったので、ベリーちゃんと共にため息を漏らす。


仲間を呼びに行かなかったという事は、こいつで正真正銘最後って事。

盗賊の男が瞬きした瞬間、手を吹き飛ばそうかな……。


そう考えていたその時────気配なく荷台の中にゴロンと置かれていた緑色の布に巻かれた荷物が起き上がった。


???!!!!


それに驚き目を見開くと、そのまま緑の物体からムキムキの手が生え、そのまま盗賊の男を雑巾の様に絞ってしまったのだ。


唖然とする私達の前で、その手が生えた物体からムキムキの巨大男が現れ、私達の方へずんずんと近づいてくると、なんとそのまま抱きしめてくる。


「 二人共凄く強いのねぇ~。助けてくれてサンキュ~ト♡

野蛮な男はベリ~NGよねぇ~。盗賊怖かったわ~ん。 」


これがグリモア支部長である< カルロス >さんとの出会いだった。



それからは、そのカルロスさんに言いくるめられる様に傭兵になった私達。

多分これが最初の人生の転機。

そこでまさに夢の様な……自分に非常にマッチした形態で仕事をし、それによって手にしたお金で可愛いものを沢山集めては、部屋や私物をコーディネートする。


こうしてあっという間に思い描いた夢が叶ってしまったのだ。


更にAランク傭兵になってからは【 剛腕ガールズカフェ 】という主に獣人族が人族に慣れるための施設で働く様になってからは、毎日フラン様の新作もいち早く眺める事ができて本当に幸せな毎日を過ごしていた。
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