上 下
1,239 / 1,315
第三十八章

1224 傭兵というモノ

しおりを挟む
( ベリー )


「 いい子でも集団に馴染めない子って沢山いるのよ?

責任感が強くて、面倒みが良くて……それで頑張り過ぎて疲れちゃうんでしょうね……。

フッと気がつけば、あまり良くない人間関係を作っちゃうの。

人間って楽ができると思えば、悪魔が囁く……なんて事は普通だからねん。 」


今まで守備隊で自分が作ってしまった良くない環境を思い出し、思わず黙っていると……カルロスが嘆かわしいとばかりに首を横に振った。


「 それに流され過ぎずに上手く折り合いをつけながら、” お互い様 ” でやっていくのが仕事ってものよ。

だけどね~……それがどうしてもできない真面目な子もいるのよね。

適度に手を抜けないっていうか……。

それに能力が高いと頑張れちゃうから、どんどん頼まれた事をしていっちゃって、気がつけば一人……みたいな?


結局仕事で一番難しいのは人間関係なのよね~。

人生ってスーパービター! 」


憂いた顔でハァ……とため息をつくカルロスさん。

そんな彼の話を聞いて私は非常に複雑な気持ちになった。


人は……いや、生物全般は ” 楽をしたい ” 生き物である。

それは仕方がない。私だってそういう面はある。


しかし、それを上手くキャッチボールにできない場合、対等で平等な関係性を作る事ができない。

私とキュイちゃんはまさにそれ。


結局この関係性に良いところは一つとして見いだせなかった。

受け取る私達も仕事が増えていって大変なだけだし、押し付けてきた子達だって本来得るはずの人生の経験値を私達に奪われ、後で散々な目にあう。


だったら頼まれても断ればいいと言われても、そのさじ加減ができずに苦しんでしまうのだ。

そしてそれができない自分に対し、否定的な気持ちになってしまい、自分で自分を責める。


自分という存在が今まで平穏だった人間関係をめちゃくちゃに壊してしまったのだという懺悔の気持ちも持っている程で、実はこれが組織というモノに属する事に二の足を踏む本当の理由だ。


私がいなかったら、持ちつ持たれずで上手くやっていけたのではないか?

その思いは踏み出そうとする一歩を頑なに拒む。


「 でも……私みたいな人間はどこに行っても……。 」


ズンズンと急降下していく気持ちの中、それを吹き飛ばしたのはカルロスさんの豪快な笑い声であった。

突然の大笑いにキョトンとしていると、カルロスさんはバシバシ!と私達の肩を叩く。


「 傭兵はスーパー個人主義にコンプリ~ト実力主義なのよん。

基本はソロ。

でも気が合えばパーティーを組んだりしてもいいし、出るも入るもフリーダム!

それに気が向かないなら依頼も受けなくてもいいし、相性が悪そうなら近づかなかきゃいいのよ~。

明確な強制力は一切なし。
  ・・・
でもおいたをすれば、怖~い死神さんがお迎えに来るから、清く正しく傭兵業を楽しんでね! 」


ムフッ!と笑うカルロスさんを見上げながら、私は改めて傭兵という職業について考えてみた。


ソロなら人に助けて貰えない。

でも誰かの代わりに仕事を引き受けなくてもよい個人主義。

己の実力のみで依頼を達成しないといけない実力ありきの仕事……。


メリット、デメリットを良く理解し、自分の性格や能力に合った場所に身を置く事。


これは自分の居場所を探すために、凄く重要な事かもしれない。


カルロスさんの話を聞く限り、今の私達には傭兵という仕事が凄く魅力的に映ったので、私達は二人同時に叫んだ。


「「 傭兵、やってみたいです! 」」



そうしてそのまま無事だった荷台馬車はそのままグリモアへ向かい、私達は傭兵ギルドへと連れてかれる。

そして書類に名前を書いただけで登録完了。

カルロスさんには「 じゃ~死なないように頑張ってね~♡ 」という有り難い言葉のみを貰い、私達は傭兵になった。


依頼の説明などは……??


それが顔に出ていたのか、カルロスさんはニコニコしながら依頼が貼られたボードを指差す。


「 入りたての傭兵は一律Fランクなの~。

基本はそのランクと同じくらいの依頼を受けて貰うんだけど、それも自信があるなら上のランクでいいわよ。

受ける依頼ランクが高い程、早く出世できるから傭兵はピンキリなのよね☆ 」


「 は……はぁ……。 」


フリーダム過ぎる仕事っぷりに、皆本当に仕事しているのかな?と心配になったが……それは全くの心配無用であった。


なぜなら傭兵達は、仕事に対するプライドが非常に強い人たちだから。


気分が乗らなければ依頼は受けない。

だが、引き受けた仕事は絶対に達成する。


それが傭兵なりのプライドの様で、共通の目的がハッキリしているためチームを組んでの依頼でもチームワークには問題はないし、常に最短距離で仕事が終わる。


こんなに簡単でいいのかな……。


そう思うほどアッサリした仕事に十分すぎる収入、自由なプライベード時間。

そんな伸び伸びとした自分に非常にマッチングした環境のお陰か、私達はあっという間にAランク傭兵になっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...