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第三十八章

1217 因果な末路

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( ベリー )

それを初めて知った私とキュイちゃんは、頭を抱えて、はぁ~……とため息しか出ない。


それは私達じゃなくて、あなた達の毎日の職務態度でしょうが!!


そして、そんなツッコミを、心の中で思う存分入れてやった。


なんとか誤魔化そうと頑張ったのだろうが、"   そもそもそんな怠惰な二人が辞めたくらいで、仕事に支障など起きるわけがない! "   と領主様は、彼らの言い訳を信じず、独自の情報網を使って調査を開始。


その結果、今までやってきた悪行が全てバレてしまったそうだ。


お金の不正受給に就業時間の大幅な改ざん、違法賭博に違法薬草の使用。

更には、ライバルとなりそうだった実力ある守備隊員達への嫌がらせや脅し……などなど、叩けば埃どころかヘドロが出てくる程の犯罪のオンパレード。


更にそれにお気に入り達はどっぷり加担していて、他の隊員達も全員がそれを見て見ぬふりをし、守備隊長の手にした利益のおこぼれを貰っていた。


"   これでは、 守備隊の試験自体もキチンと行われていなかったのでは?  "  


 そんな疑いが浮上し、全員が正規の入隊試験の受け直しをさせられ、その結果────まさかの全員が不合格という、前代未聞の事態になったのだ。


確かに、今思えば、あまりにも実力が低い人達が多かったかも……?


もう殆ど記憶から消えている ” お気に入り達 ” や他の隊員達。

改めて彼らの事を思い出すと、資質こそご立派なモノだったが、努力が一切感じられなかったその実力は訓練生止まりだった気がする。


資質が適さなくても規定以上の実力があった入隊希望者は沢山いたのに、全員が不合格だった事を思い出し、恐らく守備隊長はその者の実力ではなく、資質ありきで合格にしていたのだと思われる。


本当にどうしようもないな……。


呆れながら、笑い混じりで話されるその後の彼らの最後を大人しく聞いた。


まずは守備隊長は、犯罪奴隷へ。

一歩間違えれば街が全滅する恐れがあった事、そしてライバルになりそうだった者たちへの嫌がらせが生命の危機レベルであった事から、悪質な犯罪であると判断され過酷な鉱山送りとなった。


同じく犯罪に加担していた ” お気に入り ” 達は、今まで受け取っていたお金の返還と、身分は ” 下民 ” へ転落。


その日暮らしにも苦労する下民では、とてもではないがお金など払えず、全員が借金奴隷になるしかなかった。

その後はそれぞれが声を大にして話せない様な職場に買い取られて、あくせくと働かされているのだとか。


そしてひたすら傍観に徹し、楽をしてきた他の隊員達は、守備隊をクビの上、他の戦闘機関への登録権利をも剥奪されてしまった。

” 守備隊をクビ ” という不名誉は一生ついて回り、まともな職にはつけない。


いわゆる ” 社会的な死 ” を示し、ダークゾーンすれすれのお仕事しかできなくなるという事だ。


更に今回の事で街の人達の税金が上がってしまったため、非常に恨まれてしまった彼らは、全員街を出ていくしか選択肢がなくなってしまった。


実力を持たぬ者たちが、友も知り合いもいない異国の地で暮らしていくには相当な努力が必要だ。

ましてや社会的な信用をなくしている状況では、その選択肢は更に狭まってしまう事だろう。


更に今回怒らせてしまった領主様は、不正を嫌うお人だったため、目をつけられてしまった今、彼らが辿る道は茨の道になってしまった事は間違いない。


” 自業自得 ”


” 因果応報 ”


そんな言葉が浮かび、私とキュイちゃんは思わず遠い目をしてしまったが、それでもこれがベストな選択肢だったと思った。


あのまま誤魔化して守備隊を続けていたら全員死んでただろうし、万が一街がモンスターや盗賊に襲われていたら、守備隊員が全滅どころか、街の人達まで全員殺されていたからだ。


一応森のモンスターや近くに潜伏してた盗賊達は全て倒しておいたから、街に被害が出る前には問題が片付くだろうと思っていたが、領主様が思ったより早く動いてくれて良かった。


それにホッ……と胸を撫で下ろし、もう必要ない過去の思い出話を、教訓として頭の片隅へと置いておく事にした。



その後も旅を続け、やっとグリモアへ向かう< 荷台馬車 >に乗り込む事ができた私達。

しかし、その最終目的地を前に、一つの大きな問題が浮上した。


────そう、お金である。


元々訓練生程度のお給料しか貰ってなかった私達だったが、仕事か父の訓練かという生活を続けていたので、お金は貯まる一方であった。

そのため当面の生活費はそれと、街々で問題を起こしていたモンスターを討伐してなんとかなっていたが、今乗り込んだ< 荷台馬車 >の運賃で手持ちはパァ。


パンが一つ買えるかな?という程度のお金しか残ってない。


私は手の平の上にチョコンと乗っている銅貨を見下ろしため息をつくと、それをそのまま丁寧な手つきで腰ポーチへ入れた。

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