1,217 / 1,315
第三十八章
1202 想うことは色々ある
しおりを挟む
( モルト )
” 今までそれなりに横暴な貴族達と接する機会はあったが、アレは別格だ ”
両親曰く、そう断言する程酷い人達だったらしいが、結局どうする事もできない両親達は、戦々恐々とメルンブルク家が来る日を待つしかなかったそうだ。
ところがやたら豪勢な豪邸が建ち、そこで出産を終えたメルンブルク家は、家族揃って直ぐに王都へ帰ってしまったので全員首を傾げる。
「「「「 ?????? 」」」」
突然の意味不明な行動に、俺の両親とニールの家の両親は呆然としたらしいが、とりあえずは大喜びし、今度は新たな悩みの種になってしまった問題について相談し合った。
その問題とは、レガーノの豪邸に残された生まれたての赤ん坊についてだ。
なぜかは知らないが、メルンブルク家は生まれた赤ちゃんと、その専属執事としてカルパスさんともう一人の侍女だけ残して王都へ帰ったのだ。
その理由は考えても、男爵程度ではどうせ分からないのでとりあえずは置いておく。
では何が俺の家とニールの家にとって問題なのかと言えば、実害を被る大きな問題は一つ。
それは当時もう臨月を迎えていた両家の母達にあった。
このまま順当に出産する事になったら、置いてかれた赤ちゃんと自分たちの子が同じ年……つまりは、爵位から考えると、生まれた自分たちの子はそのメルンブルク家の子供につかせなければならないという事だ。
あの性悪公爵家の子供の取り巻き……。
それに両親達は頭を抱えて悩んだが、とりあえず小学院に通う歳までは、考える時間があるため、ゆっくり考える事にしたらしい。
” 高位貴族は小学院入学の年まで家から出るべからず ”
今回俺とニールの両親を助けたのは、アルバード王国の常識として定着していたこの考え方だった。
この偏った考え方は、” 平民は汚い下層の人間である ” という貴族独特の選民主義から来たもので、自分の価値観がある程度形成される前……つまりは小学院に通う直前まで、完璧な存在である貴族としての教育をしっかり受けるべしというモノ。
貴族もどきの俺からしたら、そんな馬鹿な……と思ってしまう常識だが─────まぁ、平民は汚い云々は置いておいて、確かに厳しい教育をしている途中、楽しそうに遊ぶ平民の子供達を見てしまえば、少なくとも良い感情は生まれないだろうなと思う。
俺は自分の体験からそう思い、傷まなくなったはずの胸が少し痛んだ。
両親はというと普段、子供に無理強いをするやり方に否定的だったがこの時ばかりは助かったと、俺達が小学院に入る前まで一切メルンブルク家と関わりを持たない様、務めたらしい。
そんな日々の中、ニールと俺が両親から口癖の様に言い聞かされた言葉が ” リーフ様に逆らうな、機嫌を損ねるな ” だ。
それを聞く度に、” 関わりたくない。” ” このまま時が止まればいいのに……。” と思っていた。
しかしそう思っても時は過ぎていき、とうとう小学院の入学が目と鼻の先へと迫ってきた頃、嫌々リーフ様に会いに行ったわけだが、結果は予想を遥かに裏切る結果へ。
外見も内面も何もかもが、メルンブルク家の特徴とかけ離れているリーフ様に多少安心したのも束の間 、更に ” レオン ” という強烈な人物を懐に入れ、両親は大騒ぎ。
俺もしばらく呆然としていたと思う。
” 汚いモノ ” の塊の様なレオンと、そんな ” 汚いモノ ” を俺に強制するリーフ様。
そんな強烈な体験をしたせいか、俺はリーフ様と出会った直後から毎晩悪夢に魘される様になった。
泥やゴミ、汚い沢山の物……それが津波の様に俺に襲いかかってきて、俺は悲鳴を上げながら必死に逃げ回る夢。
更にそんな情けない俺の傍ら、安全な高台で沢山の同世代の子供たちが歌を歌いながら楽しそうに輪になって踊っているという、そんな奇っ怪で恐ろしい夢であった。
そのため、毎朝起きたら直ぐに大好きな花畑に行っては心を慰める日々。
今直ぐ逃げ出したい……。
でも家族を守る為、それはできない……。
そんな葛藤を抱えながら、必死な想いで小学院の入学院式に向かう。
とりあえず、リーフ様にもレオンにもできるだけ当たり障りなく。
近づくのも最低限……。
ブツブツと呟きながら学院に向かい、ニールとお互いの方針についても確認しあい、さぁ、行くぞ!と決意したのに、当の本人達はまさかの堂々としたおんぶ姿でのご登場だ。
呪われた化け物に触っている……???
あんなに気持ち悪いのに……!
頭の中には ” 何で? ” ” 何で?? ” という疑問しか浮かばない。
あんなに汚くてみすぼらしい姿をした化け物に、なんであんなに普通に接する事ができるのだろう……?
その時の俺にその理由は全く理解できなかった。
レオンという恐ろしい存在を学院に通わせる事に、勿論多方面から様々な意見があった様だが……誰一人公爵家の息子に逆らえるわけがなく、” レオン ” という存在がいるのが当たり前になっていく。
すると、学院に通う生徒達の中にはまた別の感情がニョキニョキと姿を見せ始めた。
チビで今までまともな教育など受けた事がないただの平民であるレオン。
恐らく文字すら読めないだろう。
そいつがいる限り、自分たちは ” 上 ” でいられる。
” 今までそれなりに横暴な貴族達と接する機会はあったが、アレは別格だ ”
両親曰く、そう断言する程酷い人達だったらしいが、結局どうする事もできない両親達は、戦々恐々とメルンブルク家が来る日を待つしかなかったそうだ。
ところがやたら豪勢な豪邸が建ち、そこで出産を終えたメルンブルク家は、家族揃って直ぐに王都へ帰ってしまったので全員首を傾げる。
「「「「 ?????? 」」」」
突然の意味不明な行動に、俺の両親とニールの家の両親は呆然としたらしいが、とりあえずは大喜びし、今度は新たな悩みの種になってしまった問題について相談し合った。
その問題とは、レガーノの豪邸に残された生まれたての赤ん坊についてだ。
なぜかは知らないが、メルンブルク家は生まれた赤ちゃんと、その専属執事としてカルパスさんともう一人の侍女だけ残して王都へ帰ったのだ。
その理由は考えても、男爵程度ではどうせ分からないのでとりあえずは置いておく。
では何が俺の家とニールの家にとって問題なのかと言えば、実害を被る大きな問題は一つ。
それは当時もう臨月を迎えていた両家の母達にあった。
このまま順当に出産する事になったら、置いてかれた赤ちゃんと自分たちの子が同じ年……つまりは、爵位から考えると、生まれた自分たちの子はそのメルンブルク家の子供につかせなければならないという事だ。
あの性悪公爵家の子供の取り巻き……。
それに両親達は頭を抱えて悩んだが、とりあえず小学院に通う歳までは、考える時間があるため、ゆっくり考える事にしたらしい。
” 高位貴族は小学院入学の年まで家から出るべからず ”
今回俺とニールの両親を助けたのは、アルバード王国の常識として定着していたこの考え方だった。
この偏った考え方は、” 平民は汚い下層の人間である ” という貴族独特の選民主義から来たもので、自分の価値観がある程度形成される前……つまりは小学院に通う直前まで、完璧な存在である貴族としての教育をしっかり受けるべしというモノ。
貴族もどきの俺からしたら、そんな馬鹿な……と思ってしまう常識だが─────まぁ、平民は汚い云々は置いておいて、確かに厳しい教育をしている途中、楽しそうに遊ぶ平民の子供達を見てしまえば、少なくとも良い感情は生まれないだろうなと思う。
俺は自分の体験からそう思い、傷まなくなったはずの胸が少し痛んだ。
両親はというと普段、子供に無理強いをするやり方に否定的だったがこの時ばかりは助かったと、俺達が小学院に入る前まで一切メルンブルク家と関わりを持たない様、務めたらしい。
そんな日々の中、ニールと俺が両親から口癖の様に言い聞かされた言葉が ” リーフ様に逆らうな、機嫌を損ねるな ” だ。
それを聞く度に、” 関わりたくない。” ” このまま時が止まればいいのに……。” と思っていた。
しかしそう思っても時は過ぎていき、とうとう小学院の入学が目と鼻の先へと迫ってきた頃、嫌々リーフ様に会いに行ったわけだが、結果は予想を遥かに裏切る結果へ。
外見も内面も何もかもが、メルンブルク家の特徴とかけ離れているリーフ様に多少安心したのも束の間 、更に ” レオン ” という強烈な人物を懐に入れ、両親は大騒ぎ。
俺もしばらく呆然としていたと思う。
” 汚いモノ ” の塊の様なレオンと、そんな ” 汚いモノ ” を俺に強制するリーフ様。
そんな強烈な体験をしたせいか、俺はリーフ様と出会った直後から毎晩悪夢に魘される様になった。
泥やゴミ、汚い沢山の物……それが津波の様に俺に襲いかかってきて、俺は悲鳴を上げながら必死に逃げ回る夢。
更にそんな情けない俺の傍ら、安全な高台で沢山の同世代の子供たちが歌を歌いながら楽しそうに輪になって踊っているという、そんな奇っ怪で恐ろしい夢であった。
そのため、毎朝起きたら直ぐに大好きな花畑に行っては心を慰める日々。
今直ぐ逃げ出したい……。
でも家族を守る為、それはできない……。
そんな葛藤を抱えながら、必死な想いで小学院の入学院式に向かう。
とりあえず、リーフ様にもレオンにもできるだけ当たり障りなく。
近づくのも最低限……。
ブツブツと呟きながら学院に向かい、ニールとお互いの方針についても確認しあい、さぁ、行くぞ!と決意したのに、当の本人達はまさかの堂々としたおんぶ姿でのご登場だ。
呪われた化け物に触っている……???
あんなに気持ち悪いのに……!
頭の中には ” 何で? ” ” 何で?? ” という疑問しか浮かばない。
あんなに汚くてみすぼらしい姿をした化け物に、なんであんなに普通に接する事ができるのだろう……?
その時の俺にその理由は全く理解できなかった。
レオンという恐ろしい存在を学院に通わせる事に、勿論多方面から様々な意見があった様だが……誰一人公爵家の息子に逆らえるわけがなく、” レオン ” という存在がいるのが当たり前になっていく。
すると、学院に通う生徒達の中にはまた別の感情がニョキニョキと姿を見せ始めた。
チビで今までまともな教育など受けた事がないただの平民であるレオン。
恐らく文字すら読めないだろう。
そいつがいる限り、自分たちは ” 上 ” でいられる。
125
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話
バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。 そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……? 完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公 世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる