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第三十七章

1199 光る道の先

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( ザップル )

だから逃げてもいいのだと、そう言おうとしたのに、突然ジン達はアハハ!とこの場に似つかわしくない大笑いをした後ペラペラと喋りだす。


「 俺達、最初は故郷のために稼ごうと傭兵になって……そこで散々こき使われて、毎日殴られて……そして最後は囮として置いてかれました。

そのまま死んじゃう所だったのを助けてくれたのはザップルさんじゃないですか!

ここで見捨てたら俺達その時の傭兵と同じになっちゃいます。

俺、そんなの絶対嫌です。 」


「 あいつら~~っ!!今思い出しても腹立つ!!

こうして冒険者になって故郷に仕送りできる様になったのはザップルさんのお陰ですから!

本当にありがとうございます!! 」


「 あの時の傭兵達を皆ぶっ飛ばしてくれて凄くスッキリしました~。

その時の恩返し、これで少しでもできたらいいんですけど……。 」


「 お……お前ら……っ! 」


ジンの話に当時の事を思い出したのか、レイラは悔しげに地団駄を踏み、シュリは怒りを笑顔の下に隠して俺にお礼を言ってきた。

そんな【 春の三毛猫達 】にジ~ン……と感動していると、ヘリオがごほんっと咳をして若干恥ずかしそうにチラッとこちらへ視線を向ける。


「 グリモア近辺の冒険者ギルドから順番に、いま緊急伝達が来て臨時の魔道路が全開通しているんです。

自分たちが断トツだと思いましたが……皆ほぼ同時でしたか。

まさにその早さ、ポッポ鳥の如し……。 」


ジン達から視線を外し、もう一度周りの集まってくれた沢山の冒険者達を見回すと、一斉にワッ!と騒ぎ出した。


「 俺達のパーティーもお前に助けられたからな!ここで恩返しってヤツだ! 」


「 ここが最大の恩返しチャ~ンス!

今までの借りは全部返す勢いで戦ってやるわ! 」


「 新人の頃に助けてくれてあざっす!!

今度は俺達が助けま~す!! 」


続々と俺の耳に届く温かな言葉の数々に、とうとう俺の涙腺は耐えきれず目からは大量の涙が流れ落ちていく。

すると、ヘンドリク様が震える俺の肩をポンッと叩いた。


「 因果の鎖とは悪いモノだけじゃなかったのう。 」


それを聞いたらただでさえ大量に流れる涙が、まるで滝の様に流れ出ていく。


「 皆ぁぁぁぁぁ────!!!ありがとぉぉぉぉぉ────────!!! 」


俺は顔をグチャグチャに濡らし大号泣しながら、皆にお礼を告げた。


仲間たちを繋ぐ絆という鎖は、しっかりと固くお互いを結びつけ、因果となって下の世代に続いていく。

俺が今までしてきた事は、負の連鎖を断ち切り、この絆の因果を新たに繋ぐ事だった。


正義のヒーロー面した偽善野郎は、見事世界を変えてみせたのだ!


涙を乱暴に拭い、フッと顔を上げると、俺は一人光り輝く道に立っていた。


ピカピカと光るその道のお陰で、周囲は真っ暗なのに、しっかりと進むべき道が分かる。

そのためゆっくりとその道を歩き始めると、いつのまにか近くにヘンドリク様がいて、パウロがいて、クロエ、サロ、エイミが、春の三毛猫が、沢山の関わってきた冒険者達が……数え切れない程の仲間たちがいた。


全員満面の笑みを浮かべていて、一緒に楽しみながらその光る道を歩く。


すると、ず~っと先の方で前に向かって走っている人物が見えた。

その人物は光を飲み込もうとする巨大な黒い影を前に、まるでそんなモノが見えない様な様子で気にせず走っている。


────あ、危ない!!


巨大な黒い影は、自分を邪魔するその人物を排除しようと迫るが……そいつはそれをあっさりとふっとばして、そのまま先に行ってしまった。


ポカンっとしながら、伸ばしかけた手をゆっくりと引っ込め、もう見えなくなってしまったその人物を追いかける様に俺達は走り出す。


前にはまだまだ沢山の障害物があって、それを皆で必死にどかしながら、先へ先へ。




またフッ……と目を覚ますと、黒い空の下、眼の前には死して尚立ち上がろうとしているゾンビモンスター達の群れ。

そして自身の優勢を疑わぬニヤついた顔の< キャロル・ナイト・ゾンビ >がいる。


さっきの光る道は……?


先程の光景に一瞬混乱してしまったが、突如魔道路から出てきた人物により完全に意識は覚醒した。


「 …………?? 」


キツネにつままれた様な気持ちで、呆けていると────……。


「 おや?あんた、また泣いているのかい?

相変わらず泣き虫な坊やだこと。 」


バチバチという音と共に魔道路から女性が現れ、大泣きしている俺を見て大きなため息をつく。


切れ長の目と黄金色に輝く瞳。

長い灰色のサラサラの髪を下で1つに結び、鼻を大きく横切るのは一本の刀傷。

全ての傭兵ギルドを纏め上げる【 傭兵ギルド総長 】


< オリビア >


その姿を見た瞬間、パウロは大量の汗をドバッ!と掻き、プルプルと震えながらオリビアさんを指さした。


「 おっ……オリビアさん……! 」


「 久しぶりだねぇ、鼻垂れ坊主共。

ヘンドリクのじいさんもまだまだ元気そうで安心したよ。 」


オリビアさんは現在傭兵ギルド総長であり、かつヘンドリク様の一番弟子……つまり俺達の姉弟子に当たる人だ。

クロエとサロもガタガタ震えながらオリビアを見ているし、俺も小さく震えている。

────というのも……オリビアさんはよく俺達が修行中に顔を出しては、ヘンドリク様の厳しい修行の更に上を行く修行を、よく俺達にしてくれたからだ。


その時の恐怖が顔を見ただけで蘇り、どうにも一生消えそうにない。


オリビアさんはそんな震える俺達を見てニヤッと笑った後、腰に差している刀を勢いよく抜いた。


するとまるで血で出来ている様な真っ赤な刀身がその姿を現し、更にオリビアさんがそれを軽く横に降れば、前にいたゾンビモンスター達が纏めてバラバラになって吹っ飛んでいく。

それを唖然としながら見ていると、オリビアさんは凶悪な笑みを浮かべた。


「 Sランクモンスターにゾンビか……。いいねぇ、じゃあ動かなくなるまで細切れにしてやるよ。 」


その心底楽しそうな様子と顔に浮かぶ凶悪な笑みに、俺とパウロ達は青ざめて口を閉ざす。

するとヘンドリク様とエイミは、諦めたかの様なため息をついた。
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