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第三十七章

1198 続々参上!!

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( ザップル )


「 一体だけではないのかっ!!! 」


驚きに叫ぶ俺に続き、周囲の仲間たちも同時に悲鳴混じりの声を次々と上げる。


「 ……全く、この高い能力をどうして己の欲のためだけにしか使えんのじゃろうな。

ここまでして、一体その先にどんな世界が広がっているのか……どう考えても良い世界とは言い難いと思うがのぉ……。 」


ヘンドリク様はため息交じりにそう呟き、直ぐに最大限の警戒態勢をとったため、俺達も直ぐに構え< キャロル・ナイト・ゾンビ >を睨みつけた。


これでは他から応援は望めない。

どこも己の守護する場所から離れる事はできない上に、絶対的に足りない人数での対応が求められる。


フッ……と弱気な心が顔を覗かせたが、直ぐに首を振ってその想いを吹き飛ばす。

ここでリーダーの俺がそんな姿を見せれば、仲間たちが困る。

ここは死んでも通すものか!


そう強く決意した、その時、キャロルはそこら中に転がるモンスター達の死骸を見下ろし、ニタァァァ~……と不気味な笑みを浮かべた。

そして突然その身体からドロリドロリと腐った肉片が落ちていき、地面に溜まっていくと、更にそれが煮えたぎるようにグツグツと気泡を発生させる。


「 肉片が……? 」

「 マグマの様に茹だって……?? 」


クロエとサロが汗を滲ませながら、そう呟くと、突然その茹だった肉片達が上に上がり、小さな津波の様に周囲へと襲いかかった。


「 ────いけないっ!!! 」


エイミが叫び、そのままキャロルに圧倒されて立ちつくしている仲間たちに向かってスキルを放つ。



< 気流視人の資質 >( ユニーク固有スキル )

< 気流ゾーン >

気流と空気を混ぜ合わせ気流の強度を強化し、強力な結界を創り出す結界系防御スキル

自身の体力、守備力、スピードによりそれの強度は増し、賢さ、冷静により精度がUPする

(発現条件)

一定以上の体力、守備力、スピード、賢さ、冷静、武術による熟練度を持つこと

一定回数以上敵との戦いで攻撃を防ぐ事




エイミのスキルにより、周りの風が凄まじい勢いで集まり動けない仲間たちを覆った。

その直後、キャロルの肉片達が仲間たちを飲み込んだが、結界によって弾かれ生還を果たす。


「 助かったぜー!! 」


「 エイミさんありがとー!! 」


仲間たちは直ぐにその場から離脱し、他の仲間たちを合流できホッと胸を撫で下ろすも、それはつかの間。

直ぐに周囲の様子がおかしくなった事に気付いた。



「 なんと厄介な能力じゃ……。

これはまずいのぉ……。 」


ヘンドリク様が周囲を見渡しながらそう言うと、そこら中からうめき声の様な声が聞こえてくる。


『 ギ……ギギギギ………。 』


『 ……ガ……ガガ……ァァァ……。 』


更にグチャ……ピチャ……という液体音の様なモノまで聞こえだすと、先ほど確かに倒したはずの他のモンスター達がビクビクと動き出した。


青ざめる仲間たちの前で、動き出した死骸モンスター達はゆっくりと立ち上がり、こちらをギロッ!と睨みつけてきたが…………その瞳は白く濁っており、既に死んでいる事が分かる。




( ユニーク個体名 ) 【 腐食の死獣 】

( モンスター資質 ) 【 死獣王 】


( 先天スキル )

< 死後の忠誠 >

” 死 ” を迎えた仲間達を死地から呼び戻し、その肉体に戻すゾンビ系蘇生スキル

ただしその肉体は ” 死 ” を迎えているため、肉体の腐敗は止まらず、< キャロル・ナイト・ゾンビ >が生きている限りは、常に腐った身体のまま生き続ける




「 な、な、なぁぁぁぁぁ────────!!!

あんなんありかよっ!? 」


パウロが絶叫しながら、蘇ったゾンビモンスター達を指差し言った。

俺や他の仲間たちもその恐ろしい能力に背筋を凍らせる。


「 < キャロル・ナイト・ゾンビ >の能力の一つがこの死者蘇生能力じゃ。

周りのモンスター達を倒しても、キャロルが生きている限りは蘇ってしまう。

勿論キャロル本体も死んだ肉体でできておる。 」


「 だから肉体が腐っているんですね……。

死者を操る能力なんて……最悪です。 」


サロが、悪臭にウッ……!と吐きそうになりながら言うと、ヘンドリク様は頷いた。


「 初めて人里に降りて来た時は、戦いによって犠牲になった兵士達を操り、沢山の犠牲者が出たそうじゃ。

つまり、仲間が死ねば、キャロルに忠誠を誓う戦士になってしまう。

絶対に犠牲者を出してはならん! 」


その話は< 拡張伝柱 >によって全員に伝えられ、その場に緊張が走る。


「 まじかよっ!! 」


「 ────クソっ!化け物めっ!! 」


怯える様な雰囲気が一瞬漂うが、全員それを完全に吹き飛ばし、キャロルを睨みつけた。


ここを通せば俺達の負け。

たとえ不利な状況だとしても引くわけにはいかないのだ。


キャロルは睨みつける俺達をまるであざ笑うかの様に、その5つの顔達が一斉に笑い出した。


《 ギャッ……ギャギャッ────ハッハッハ~~………


ア────ッハッハ────────ッギャッギャッ!!!! 》



「 ────クソっ、楽しんでいるのか……っ! 」


悔しさに唇を噛み締めた、その時────────……。






「「「「 【 春の三毛猫 】参上しました────!!! 」」」」



元気いっぱいの若者たちの声が響き渡り、突如開いた魔道路から四人の人物が飛び出してきた。

そしてそれと同時に続々と魔道路が空間に開いていき、沢山の武装した冒険者達が門を中心に出現してはキャロルに向けて武器を構える。


「 ────な……!! 」


「 まさか違う支部の……。 」


「 冒険者達じゃないですか! 」


パウロとクロエ、サロが叫ぶと、全員ニヤッと笑い、武器を持っていない方の手を上げた。

なんとやってきたのは違う支部に所属している冒険者達であった様で、俺達が言葉無くポカンと口を開けて驚いていると、いち早く駆けつけてくれた【 春の三毛猫 】のリーダーであるジンが口を開く。


「 ” 冒険者は受けた恩は必ず返せ ”

ザップルさんに教えてもらった事に従って、俺達【 春の三毛猫 】も、これよりグリモアの防衛戦に参戦しますよ!

指示を宜しくお願いしま────す! 」


「 あわわわ~!!何コレ!!ドロドロで気持ち悪い!!

それと臭いっ!!すっごく臭~い!! 」


片手をピッ!と挙げて宣誓するジンの横で、レイラがギャギャーと騒ぎながら鼻と口を塞いだ。

そして更にその隣にいるシュリは顔を盛大に顰めながら、自身の法衣を摘んでクンクン匂いを嗅ぐ。


「 もうこの法衣は洗濯しても無理でしょうね……。

これが終わったら奮発して新しい法衣を買います。 」


「 獣臭は好きなんですけど……腐敗臭はOUTです~。

でもSランクモンスターと初のご対面……感激です~……。 」


鼻を摘みながらも、ジ~ンと感動した様子を見せるヘリオに、ジン達三人は汗を掻いた。


「 ……いいのか? 」


俺はそんな四人と他の集まってくれた冒険者達に対し、最終確認の様に呟いた。


はっきり言って勝機はゼロ。

正式な依頼ではないので報酬だって出ない。

それなのに、命を賭けて戦う理由だってないはずだ。

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