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第三十七章
1187 断ち切る者
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( ザップル )
「 子供たちが保護されて直ぐに、冒険者たちがその男たちを捕まえ、徹底的に調べ尽くしたが、何とも非道な罪ばかりがゴロゴロと出てきてな……。
その常習性と残忍さ、そして罪悪感のなさから、ニコラ王はその判決を下したのじゃ。
ニコラ王から直接判決が言い渡された時、男たちは全員泣きながら土下座をして許しを乞うたが、ニコラ王の表情はピクリとも変わらんかった。 」
” 人を使い生きてきたのだから、最後は人のために使われる消耗品として人生を終えよ。 ”
そう言ってニコラ王はその判決を終わりとしたそうだ。
「 ……なんだかちょっと可哀想だな……。
そんなに泣いて反省しているのに……。 」
その男たちの様子に多少同情していると、ヘンドリク様がチッチッチッ!と指を振った。
「 そこが悪人と常人の大きな違いじゃ。
常人にとって謝罪する時の涙や土下座とは、相手を想うことで出るわけじゃが……悪人にとっては、単にその状況から逃れるための便利な道具にしか過ぎんのじゃよ。
だから悪人は直ぐに泣くし、土下座もする。
常人はそれを見て反省したのだと、自身の価値観からそう判断して許す。
しかしそれをしっかり見極めなければ、また新たに同じ犠牲者を出すだけなんじゃ。
しかも成功経験値を得て、今よりももっと進化した狡猾なやり方でな。 」
「 …………。 」
困った様に眉を大きく下に下げるヘンドリク様を見て、俺は自分の価値観の狭さを思い知る。
俺はもう少しで、新たな犠牲者を作ってしまう所だった……。
それにゾッ……としながら、俺は自分がどうすれば一番良かったのかを考えた。
「 俺は弱い……。
俺一人では何も変える事ができなかった……。
死にかけて……仲間たちを危険に晒して……もしかしたら、更に犠牲になる人を生み出していたかもしれない……。
ただの大馬鹿野郎です……。 」
” ただ正義感を振りかざすだけの偽善野郎。 ”
まさにその通りで、俺は俺の行動が自分の満足だけではなく、こんなにも沢山の人達を巻き込んでしまったと、後悔と罪悪感を持った。
自分を貫いて死んで……それで終わりじゃない。
じゃあ、俺はこれからどうしたらいいのだろう?
か細い声でボソボソと言う俺の話しを、ヘンドリク様は黙ってきた後、そういえば……と、今思い出したかの様に話し始めた。
「 お主達を虐げていた神官やその協力者共、そして冒険者の男たちは判決が出た瞬間、全く同じ事を口にしておった。
それが何か分かるか? 」
「 ……えっ?……えっと……。
” 俺はやってない ” とか ” 俺は悪くない ” とかでしょうか……? 」
悪人が大抵言いそうな言葉を予想し答えた俺に対し、ヘンドリク様はニヤ!と笑いながら、手でバツ印を作る。
「 ブッブ~!ハズレじゃ。
正解は────
” 自分たちだってずっと奪われてきた。それと同じ事をして何が悪い ”
……じゃ。 」
” いつかは ” 奪う側 ” になって、こんなクソッタレな世界に復讐してやる ”
” 何の苦労もしたことねぇ幸せな奴らを利用して、全部奪い尽くしてやるってっ……そう思っていたのに……っ!!! ”
ヘンドリク様の言葉を聞いて思い浮かんだのは、< モーニング・スターベア >の前に立った仲間の一人が言っていた言葉だった。
神官やその協力者達、そしてあの冒険者の男たちも、昔はきっと ” 奪われる側 ” だった。
そして ” いつか ” が来て、今度は ” 奪う側 ” になり……世界に復讐していたのだろうか……。
「 …………。 」
神妙な顔で黙ってしまった俺を見ながら、ヘンドリク様は一旦間を置いて、話を続けた。
「 人間は基本はしてもらった事しか返せんのじゃよ。
酷い扱いをされた者が、他人に優しくしようとしても、その度に頭に過去の自分が過るんじゃ。
” 自分は酷い扱いをされたのに、なぜこいつは優しくして貰えるの? ” と。
そしてまるで何かに復讐する様に、他者を傷つけ過去の自分と同じにしたがる。
それで過去は消えぬし、自分を虐げてきた者たちに復讐できるわけでもないのに……。
気がつけば、かつて自分を虐げた者達と全く同じ姿になっているんじゃ。
この連鎖の鎖はとても強固で、中々切れん。
悲しい事にのぉ……。 」
ヘンドリク様は困った様子でため息をつきながら、座っている椅子の背もたれに深くもたれかかる。
しかし、次の瞬間、突然ガバッ!と身を前に出し、俺の方へ顔を近づけニカッ!と笑った。
「 しか~し!
そんな孤児院の子供たちの強固な連鎖の鎖を見事に断ち切ったのは、お主じゃ。
これは本当に凄い事なんじゃよ。
お主は強い。
たった一人でその偉業を成し遂げてしまったのじゃから!
ワシはお主に最大限の敬意をここに示そう。
よくやった、ザップルよ。 」
そう言われた瞬間、俺の目からはポロポロと涙がこぼれ落ち、そのまま止まらなくなってしまうと、更には押し殺せ無くなった嗚咽が口から漏れ出し、ひっ……ひっ……と潰れたカエルの様な声が漏れる。
ヘンドリク様は、そんな俺の頭をグシャグシャと撫で回した。
「 子供たちが保護されて直ぐに、冒険者たちがその男たちを捕まえ、徹底的に調べ尽くしたが、何とも非道な罪ばかりがゴロゴロと出てきてな……。
その常習性と残忍さ、そして罪悪感のなさから、ニコラ王はその判決を下したのじゃ。
ニコラ王から直接判決が言い渡された時、男たちは全員泣きながら土下座をして許しを乞うたが、ニコラ王の表情はピクリとも変わらんかった。 」
” 人を使い生きてきたのだから、最後は人のために使われる消耗品として人生を終えよ。 ”
そう言ってニコラ王はその判決を終わりとしたそうだ。
「 ……なんだかちょっと可哀想だな……。
そんなに泣いて反省しているのに……。 」
その男たちの様子に多少同情していると、ヘンドリク様がチッチッチッ!と指を振った。
「 そこが悪人と常人の大きな違いじゃ。
常人にとって謝罪する時の涙や土下座とは、相手を想うことで出るわけじゃが……悪人にとっては、単にその状況から逃れるための便利な道具にしか過ぎんのじゃよ。
だから悪人は直ぐに泣くし、土下座もする。
常人はそれを見て反省したのだと、自身の価値観からそう判断して許す。
しかしそれをしっかり見極めなければ、また新たに同じ犠牲者を出すだけなんじゃ。
しかも成功経験値を得て、今よりももっと進化した狡猾なやり方でな。 」
「 …………。 」
困った様に眉を大きく下に下げるヘンドリク様を見て、俺は自分の価値観の狭さを思い知る。
俺はもう少しで、新たな犠牲者を作ってしまう所だった……。
それにゾッ……としながら、俺は自分がどうすれば一番良かったのかを考えた。
「 俺は弱い……。
俺一人では何も変える事ができなかった……。
死にかけて……仲間たちを危険に晒して……もしかしたら、更に犠牲になる人を生み出していたかもしれない……。
ただの大馬鹿野郎です……。 」
” ただ正義感を振りかざすだけの偽善野郎。 ”
まさにその通りで、俺は俺の行動が自分の満足だけではなく、こんなにも沢山の人達を巻き込んでしまったと、後悔と罪悪感を持った。
自分を貫いて死んで……それで終わりじゃない。
じゃあ、俺はこれからどうしたらいいのだろう?
か細い声でボソボソと言う俺の話しを、ヘンドリク様は黙ってきた後、そういえば……と、今思い出したかの様に話し始めた。
「 お主達を虐げていた神官やその協力者共、そして冒険者の男たちは判決が出た瞬間、全く同じ事を口にしておった。
それが何か分かるか? 」
「 ……えっ?……えっと……。
” 俺はやってない ” とか ” 俺は悪くない ” とかでしょうか……? 」
悪人が大抵言いそうな言葉を予想し答えた俺に対し、ヘンドリク様はニヤ!と笑いながら、手でバツ印を作る。
「 ブッブ~!ハズレじゃ。
正解は────
” 自分たちだってずっと奪われてきた。それと同じ事をして何が悪い ”
……じゃ。 」
” いつかは ” 奪う側 ” になって、こんなクソッタレな世界に復讐してやる ”
” 何の苦労もしたことねぇ幸せな奴らを利用して、全部奪い尽くしてやるってっ……そう思っていたのに……っ!!! ”
ヘンドリク様の言葉を聞いて思い浮かんだのは、< モーニング・スターベア >の前に立った仲間の一人が言っていた言葉だった。
神官やその協力者達、そしてあの冒険者の男たちも、昔はきっと ” 奪われる側 ” だった。
そして ” いつか ” が来て、今度は ” 奪う側 ” になり……世界に復讐していたのだろうか……。
「 …………。 」
神妙な顔で黙ってしまった俺を見ながら、ヘンドリク様は一旦間を置いて、話を続けた。
「 人間は基本はしてもらった事しか返せんのじゃよ。
酷い扱いをされた者が、他人に優しくしようとしても、その度に頭に過去の自分が過るんじゃ。
” 自分は酷い扱いをされたのに、なぜこいつは優しくして貰えるの? ” と。
そしてまるで何かに復讐する様に、他者を傷つけ過去の自分と同じにしたがる。
それで過去は消えぬし、自分を虐げてきた者たちに復讐できるわけでもないのに……。
気がつけば、かつて自分を虐げた者達と全く同じ姿になっているんじゃ。
この連鎖の鎖はとても強固で、中々切れん。
悲しい事にのぉ……。 」
ヘンドリク様は困った様子でため息をつきながら、座っている椅子の背もたれに深くもたれかかる。
しかし、次の瞬間、突然ガバッ!と身を前に出し、俺の方へ顔を近づけニカッ!と笑った。
「 しか~し!
そんな孤児院の子供たちの強固な連鎖の鎖を見事に断ち切ったのは、お主じゃ。
これは本当に凄い事なんじゃよ。
お主は強い。
たった一人でその偉業を成し遂げてしまったのじゃから!
ワシはお主に最大限の敬意をここに示そう。
よくやった、ザップルよ。 」
そう言われた瞬間、俺の目からはポロポロと涙がこぼれ落ち、そのまま止まらなくなってしまうと、更には押し殺せ無くなった嗚咽が口から漏れ出し、ひっ……ひっ……と潰れたカエルの様な声が漏れる。
ヘンドリク様は、そんな俺の頭をグシャグシャと撫で回した。
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