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第三十七章
1183 なんだ?この世界は
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( ザップル )
アルバード王国の法律では、子供は神の使いであるため、酷い扱いをすれば貴族だろうと死刑になる事もある程、重い罰則が設けられている。
しかし────地方の貧しい村や、人数の少ない街などでは度々その法律が無視され、閉鎖された空間の中、親をなくした子供たちが内密に酷い扱いをされている事もある。
俺が子どもの頃にいた街はまさにそれで、両親を流行り病で失くした俺のいた孤児院は本当に酷い場所であった。
その孤児院を任されていたのは、40代そこそこの神官の男で、そいつは孤児院の子供たちを、様々な職場へ労働力として派遣し金を貰っていたのだ。
雇う側としては、普通の成人よりも安く、しかも文句を誰にも言えない立場の弱い子供相手の方が儲ける事ができる。
だから嬉々としてその悪事に加担し、それが明るみに出る事はなかった。
子供たちは毎日毎日、キツイ農作業やドブのスライム管理、重労働の運搬など……普通の大人でもキツくてやりたくない仕事をやらされる。
そして傷だらけの手足に、打撲や疲労で痛む体を抱えながら、毎日死んだように眠りにつかなければならなかった。
雇い主達はできるだけ金をケチるため、俺たちを飲まず食わずで何時間も働かせようとする。
だから俺達孤児は、同世代の子供たちより全員ガリガリに痩せ、それに伴い心もどんどん憔悴していった。
そんな精神状態の中、怒り、憎しみ、悲しみの感情は、何故か同じ辛い目に合っている仲間達へ向けられる。
” 自分の方が可哀想じゃない! ”
” 自分の方がマシな存在なんだ! ”
そんなどうしようもない事でいがみ合う事は、その環境で生きる子供達の ” 希望 ” で、救いでもあった。
そしてそれはどんどんと進化し、ついには自分よりも弱い立場の存在を見つけては、集団で馬鹿にしたり、仕事を押し付けて苦しむ姿を見て笑う様にまでなっていく。
そんな中、俺はフッと思った。
なんだ?
この ” 世界 ” は……?
だって悪いのは全て俺達を使おうとする上の奴ら。
なのに何故その被害者達が憎しみをぶつけ合わなければならないのか?
辛い思いをしている同士罵りあったって、満足するのはその一瞬だけで根本は何も変わらないじゃないかと、俺は大きな疑問を持つ。
自分より下を見ては心を慰め、自分より上を見ては嫉妬し、更にその不満を下にぶつける無限ループ。
そしてそれはどんどんと進化して、いつしか心から罪悪の感情を奪ってしまうのだ。
俺達に酷い事をする、あの神官や雇用主達の様に。
それに気付いた時、俺は心の底からゾッとした。
あんなに憎んでいる存在と同じ存在になる。
そうしたら俺はきっと、自分の事が大嫌いになるだろう。
でも、誰もが自分を嫌いになりたくないから、何の苦労もなく生きている人達や ” 世界 ” そのものを憎む様になるに違いない。
こうなったのは ” 自分 ” のせいじゃない。
国が悪い。
この世界が悪い。
自分を虐げてきた存在が悪い。
受け入れてくれない周りが悪い。
のうのうと暮らす奴らが何もしなかったから悪い。
……俺はそんな悲しい人生で、いつか来る終わりを迎えたくはなかった。
そう思った俺は、その日から徹底的に上に逆らう様になる。
他の奴らが雇い主に殴られそうになれば、体当たりをしてそれを止めたり、噛みついたり、叫んだり、そしてそのまま仕事をボイコットし続けた。
勿論そのせいで雇い主には罵倒され殴られたり、神官の男にはムチで打たれたりと、今まで以上の辛い日々になってしまったが…………心はかつてない程スッキリしていた。
今日も俺は屈しなかったぞ!
俺はアイツらに使われる道具じゃない、俺は俺。
それを確認できる度に俺は俺を好きになっていく。
不思議なものだ。
体はボロボロになっていくのに心は輝いていくなんて……。
そんな俺を見て、他の孤児院の仲間たちはあからさまにホッとした様子を見せていた。
” あいつがターゲットになっている間、自分たちは安全だ。 ”
” これでもっと楽ができるから良かった。 ”
そう語る目を見てもなお、俺は俺の心のまま逆らい続けた。
そんなある日の事。
ある冒険者パーティーの5人の男たちが、俺達の孤児院の話を聞きつけ教会へとやってきた。
” あるモンスターを討伐しにいきたいから、辞めてしまった仲間の代わりに、荷物持ちや雑用ができる子供を数人借りたい ”
そう言ってかなりの大金を差し出してくる男たちを見て、神官の男は少々不審がった様だが・・目の前の光り輝く金を前に、一瞬で迷いを捨て承諾する。
たかが荷物持ちにあの大金……?
しかもそんな辺境の街にわざわざ人材を探しに……?
どう考えてもおかしい。
アルバード王国の法律では、子供は神の使いであるため、酷い扱いをすれば貴族だろうと死刑になる事もある程、重い罰則が設けられている。
しかし────地方の貧しい村や、人数の少ない街などでは度々その法律が無視され、閉鎖された空間の中、親をなくした子供たちが内密に酷い扱いをされている事もある。
俺が子どもの頃にいた街はまさにそれで、両親を流行り病で失くした俺のいた孤児院は本当に酷い場所であった。
その孤児院を任されていたのは、40代そこそこの神官の男で、そいつは孤児院の子供たちを、様々な職場へ労働力として派遣し金を貰っていたのだ。
雇う側としては、普通の成人よりも安く、しかも文句を誰にも言えない立場の弱い子供相手の方が儲ける事ができる。
だから嬉々としてその悪事に加担し、それが明るみに出る事はなかった。
子供たちは毎日毎日、キツイ農作業やドブのスライム管理、重労働の運搬など……普通の大人でもキツくてやりたくない仕事をやらされる。
そして傷だらけの手足に、打撲や疲労で痛む体を抱えながら、毎日死んだように眠りにつかなければならなかった。
雇い主達はできるだけ金をケチるため、俺たちを飲まず食わずで何時間も働かせようとする。
だから俺達孤児は、同世代の子供たちより全員ガリガリに痩せ、それに伴い心もどんどん憔悴していった。
そんな精神状態の中、怒り、憎しみ、悲しみの感情は、何故か同じ辛い目に合っている仲間達へ向けられる。
” 自分の方が可哀想じゃない! ”
” 自分の方がマシな存在なんだ! ”
そんなどうしようもない事でいがみ合う事は、その環境で生きる子供達の ” 希望 ” で、救いでもあった。
そしてそれはどんどんと進化し、ついには自分よりも弱い立場の存在を見つけては、集団で馬鹿にしたり、仕事を押し付けて苦しむ姿を見て笑う様にまでなっていく。
そんな中、俺はフッと思った。
なんだ?
この ” 世界 ” は……?
だって悪いのは全て俺達を使おうとする上の奴ら。
なのに何故その被害者達が憎しみをぶつけ合わなければならないのか?
辛い思いをしている同士罵りあったって、満足するのはその一瞬だけで根本は何も変わらないじゃないかと、俺は大きな疑問を持つ。
自分より下を見ては心を慰め、自分より上を見ては嫉妬し、更にその不満を下にぶつける無限ループ。
そしてそれはどんどんと進化して、いつしか心から罪悪の感情を奪ってしまうのだ。
俺達に酷い事をする、あの神官や雇用主達の様に。
それに気付いた時、俺は心の底からゾッとした。
あんなに憎んでいる存在と同じ存在になる。
そうしたら俺はきっと、自分の事が大嫌いになるだろう。
でも、誰もが自分を嫌いになりたくないから、何の苦労もなく生きている人達や ” 世界 ” そのものを憎む様になるに違いない。
こうなったのは ” 自分 ” のせいじゃない。
国が悪い。
この世界が悪い。
自分を虐げてきた存在が悪い。
受け入れてくれない周りが悪い。
のうのうと暮らす奴らが何もしなかったから悪い。
……俺はそんな悲しい人生で、いつか来る終わりを迎えたくはなかった。
そう思った俺は、その日から徹底的に上に逆らう様になる。
他の奴らが雇い主に殴られそうになれば、体当たりをしてそれを止めたり、噛みついたり、叫んだり、そしてそのまま仕事をボイコットし続けた。
勿論そのせいで雇い主には罵倒され殴られたり、神官の男にはムチで打たれたりと、今まで以上の辛い日々になってしまったが…………心はかつてない程スッキリしていた。
今日も俺は屈しなかったぞ!
俺はアイツらに使われる道具じゃない、俺は俺。
それを確認できる度に俺は俺を好きになっていく。
不思議なものだ。
体はボロボロになっていくのに心は輝いていくなんて……。
そんな俺を見て、他の孤児院の仲間たちはあからさまにホッとした様子を見せていた。
” あいつがターゲットになっている間、自分たちは安全だ。 ”
” これでもっと楽ができるから良かった。 ”
そう語る目を見てもなお、俺は俺の心のまま逆らい続けた。
そんなある日の事。
ある冒険者パーティーの5人の男たちが、俺達の孤児院の話を聞きつけ教会へとやってきた。
” あるモンスターを討伐しにいきたいから、辞めてしまった仲間の代わりに、荷物持ちや雑用ができる子供を数人借りたい ”
そう言ってかなりの大金を差し出してくる男たちを見て、神官の男は少々不審がった様だが・・目の前の光り輝く金を前に、一瞬で迷いを捨て承諾する。
たかが荷物持ちにあの大金……?
しかもそんな辺境の街にわざわざ人材を探しに……?
どう考えてもおかしい。
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