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第三十七章

1180 第二形態

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( リゼル )


えっ??マジであれで終わり??


そんな甘ったるい事を考えたその瞬間、凄まじくドロドロした大きな魔力の塊が一点に集中して集まりだしたのを感じ、直ぐにその気配がする方へ顔を向ける。


兄も勿論とっくにその方向を睨みつけていて、そこにはあのピエロの仮面だけが浮かんでおり、そこからまるで血管の様なモノが生えて形を作っていった。


骨の様なモノや筋肉、皮膚……。


まるで新たなる生命の誕生の様な演出を見せて、再生していくピエロ野郎。

しかし……。


「 さっきと体の形が……。 」


「 それに魔力の質も違う気が……? 」


出来上がっていく体が先程の形とは違うため、団員達がざわついたが、兄は冷静にその正体を口にする。


「 第二形態か……。 」


「 嘘だろう……? 」


第二形態と聞いて、俺も団員たちもゴクリと唾を飲み込んだ。


これ以上 "   上   "   がある事。


最悪だと呟きながら、新たに第二形態として生まれ変わったピエロ野郎を睨みつける。



先被度同様黒い鎧に黒いマントは変わらないが、それに身を包む体がさっきより人間に近くなっていて、6本の黒い腕は逞しい男性の太い腕に、そして頭からはサラサラとした長い黒髪が生える。

顔の上部には変わらずピエロの仮面がくっついているが、顔の下部から見える口元は骨ではなく普通の人間の様な外見に変わっていた。


「 ……随分と人間みたいな外見になったね。

多分ステータスだけじゃなくて、新たな能力も獲得しているはずだよ。 」


「 分かってる。 」


兄の言葉をまた軽く返すつもりだったが、上手くいかずに固くなったまま答える。


そして相手の出方をまず見ていたが、突然仮面の奥に見える真っ黒な目が赤く光り、続けてピィィィィ………ン……という小さな耳鳴りの様な音が聞こえてきた。


そして……,


ギ・ギ・ギィィィィィィィ────────!!!!!!!


まるでガラスを引っ掻きまくった様な嫌な音が、突然頭の中一杯に聞こえて、思わず頭を押さえる。


「 なっなんだこりゃ────!!! 」


不快マックスの音に堪らず叫び声を上げると、後方から悲鳴が上がり、それは瞬く間に伝染していく。


「 う……うわぁぁぁぁぁぁ────!!!止めろ止めろやめろぉぉぉぉ!!!! 」


「 ゴメンナサイ……ゴメンナサイ……!! 」


「 やめてよぉぉぉ、ぶたないで、ぶたないで……。 」


「 痛いよぉ~……痛いよぉ~……捨てないで……。 」


どうもその言葉達から、俺の様に単純に音の不快さで叫んでいる様子ではなく、慌てて叫んでいる仲間たちを見れば、その目は全員虚ろな状態であった。


「 ────っ!!クソっ!精神系攻撃かっ!!! 」



( 先天スキル )

< 死夢走馬 >

対象者達の心の奥底に眠る恐怖を表に出し、その対象者に見せつける精神系攻撃スキル

” 恐怖状態 ” にして対象者は行動不能する。

それにより精神耐性値が低い者はそのまま命をゆっくりと削られ、命を奪われる



直ぐに指示を仰ぐため、兄の方へ視線を向けると、兄は汗をボタボタ流しながら頭を抱えていた。


「 おいっ!!兄さん、大丈夫か!! 」


直ぐにガっ!と肩を掴んで揺さぶると、兄はハッ!とした様子で俺の方を見て、大きく息を吐き出す。


「 うん、大丈夫。

今同じ精神攻撃をぶつけて、これでも威力を押さえたんだ。

複雑な思考や理性がない分、ヤツの直接的な精神攻撃の威力は強い。

呪いの一歩手前だよ、こんな強い殺意は……。 」



<聖愛師の資質>(先天スキル)

< 愛情の心壁 >

一定以下の親愛度を持つ相手に対し、自身とその親愛度をもつ仲間達との間に精神的な心の壁を創り出す特殊防御スキル

その心の壁により、相手からの精神系攻撃を防ぐ事ができる



やはりこれはピエロ野郎が放っている精神攻撃であるらしい。

そして精神攻撃に強いはずの兄がここまでダメージを食らっているとは……と内心焦って汗を掻く。


元々精神攻撃は、相手側に複雑な感情があればあるほど掛かりやすく、基本的には細かな感情や理性がないモンスター相手では中々効きにくい。


そのため相手のモンスターがもし精神攻撃を使ってきた場合、人間側が常に不利という状況を作ってしまうというわけだ。


受ける側に細かな感情や思考がなければどうしても本領を発揮しづらい、それが精神魔法の弱点!


ちなみに俺の様に感情を表に出すタイプには、普通の人間よりもこの攻撃に対する耐性値が高いため、単純な音に対する不快感と頭痛くらいだが……。

俺は叫び続ける後方の味方達を見つめ、グッと顔を歪めた。


仲間たちにとってはクリティカルヒットする攻撃になってしまっている!


焦りを隠しながら、ピエロ野郎を睨むと、奴はニィィィ~……と口元を大きく歪め、更に左右の手に持つ魔導書を前に突き出し、そのまま魔法の詠唱を始めた。


するとポポポ……という音を立てながら、ヤツの周囲に大きな黒い玉が現れ、バチバチと嫌な音で帯電しだす。


「 な……なんだ?ありゃ……??? 」


俺が呟くと、兄がハッ!!と何かに気付いた様子で叫んだ。
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