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第三十七章
1170 リゼル登場!
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( リゼル )
~ 教会の裏門前 ~
真っ暗でどんよりした空。
血臭漂うねっとりと生暖かい風。
そしてそこら中を漂う、どろりとした粘着性のある気味の悪い魔素の残り香……。
その中で、俺は自身の愛用武器、交差針の形をした長い槍を振り、刃先に着いたモンスターの血を飛ばした。
「 お~お~こりゃ~絶好のピクニック日和だな。
そう思わねぇ?
< モール >兄さん。 」
白銀の鎧は【 聖兵士団 】支給のモノ。
武器は今まで戦い抜いてきた戦いの中で、一番自分にしっくりくる形の特注品の長い槍。
今までそれなりに女にはモテてきたので、顔は割とイケている方……だと思っている。
ピンピン跳ねている茶色い髪を掻き揚げ、俺は兄さんの方へ視線を向けた。
【 第一聖兵士団 】副団長
< リゼル >
それがこの俺。
そして ” 兄さん ” と呼ばれた男はというと、相変わらずだらしなく服を着崩し、全体から気だるげな雰囲気を醸し出している。
俺よりも明るい茶色の髪は襟足の方だけ軽く跳ね、それだけ見れば何となく軽薄な感じがするのに、きめ細やかなイケてる顔面が爽やか過ぎて、相手に清潔感を与えてくるアンバランスな男。
そんな不思議な男、< モール >兄さんは右手と左手に一丁ずつ握っている二丁のレイピアを俺同様ピッ!と振った後、こちらを振り返る。
「 こ~ら!リゼル副団長!お仕事中は兄さんなんて言わないの。
” 公私は分ける ”
それが一流の成人の常識だよ。 」
「 ……いや、何言ってんだよ、このエロ団長は。
いくら聖兵士が副業OKだからって、【 性技師 】とか嘘ついてエロ店で働いているヤツに言われたくねぇよ。
そういやこの間、ライトノア学院に性教育も行ってたらしいが、生徒に手出してないだろうな。 」
モール兄さんに疑いの目をジロ~と向けて言うと、周りにいる他の聖兵士達も肯定する様に、うんうんと頷いた。
それを見て心外!とばかりにヨヨヨ……と泣くフリをした後、直ぐに復活した兄は、チッチッチ!と指を振って見せる。
「 成人前の子供に手を出すのは最大の禁忌。
そんな事するヤツはこの神の遣いのモールが全員去勢しちゃうぞ!
それに嘘なんて一個もついてないよ~。
なんたって俺の資質【 聖愛師 】は、【 性技師 】のスキル全部使えるし~。
そもそもだな、リゼル君。
善人が悪人に変わる原因って何だと思う? 」
「 ……また始まったよ。
いや、別に今はそんな事どうでも……。 」
ボコッ!と土から飛び出してきた小型モンスター達を、俺は一撃で薙ぎ払いながら面倒くさそうに答えたが、兄は全く気にする事なくペラペラとマイペースに喋り続けた。
「 それはだね~…… ” 貧困と孤独 ” !
俺的には結構な割合でこの二つが多いと思うんだよ。
そして生粋の悪人は、このニオイを嗅ぎつけるのが上手い。
苦しむ善人に近づき、あっという間に悪の道へ引きずり込んで死ぬまで搾取し続けるんだ。
俺はそういう人達を救いたいの~。
上から手を差し伸べても、深く堕ちている人には聞こえないからね。
同じ場所にいる人が必要な時もあるってことだよ。 」
「 ……へいへい。有り難い御高説どうもありがとうございます~。 」
胸に手を当てて、キラキラ目を輝かせる兄を見てげんなりとしながら返事を返す。
ソフィア様が全権限を持っている【 第一聖兵士団 】の団長< モール >は、俺の実の兄であり、父親は二人存在している……いや、存在していた。
一人目はイシュル教会司教である< ヨセフ >。
そしてもう一人は俺と兄さんが成人後に病気で他界してしまった< セイ >だ。
俺達は実力を認められ、それぞれ団長と副団長という地位を手にしたが、兄は中々の自由人というか……昔から変わった独自の世界観を持っており、色々な街に飛んではエロい店で働いている。
たまに見掛ければ、派手でセクシーな女を両手にぶら下げて笑っている兄。
そんな姿を見れば、身内としては羨ましさ半分、嫌悪感半分といった所。
俺的にはただのスケベ野郎としか思えないが、教会には毎日沢山の感謝の手紙や、お礼を言いに来る人達が耐えない。
” 一番苦しい時に話を聞いてくれてありがとう。 ”
” 側にいてくれてありがとう。 ”
そんな内容の言葉達から、きっと兄は兄のやり方で人を救っている様で、職業の斡旋や環境を変える手伝いなどもしている様だ。
そのため、なんだかんだと団員達は兄を認めているし、俺としても尊敬はしているのだが……まぁ、弟としては内心複雑なのである。
前から襲い来るBランクモンスターをあっさりと一撃で吹っ飛ばす兄を見て、努力を惜しまず鍛錬もサボっていない事に気づき、何となく敗北感というか……それに尊敬や羨望もあったりとか、昔から兄には様々な想いを抱いてきた。
だが────……。
俺は横から飛びかかってきたBランクモンスターを同じく一撃で薙ぎ払うと、フンッ!と勢いよく鼻息を吹く。
兄には兄の、そして俺には俺にあったやり方がある。
そう考えられる様になってからは、兄の生き方も認め、自分の価値観から出る ” 正しさ ” を捨てた。
正しいか正しくないかは、死ぬ直前に自分が決める事。
他人の生き方に口出しするのは、野暮ってもんだ。
~ 教会の裏門前 ~
真っ暗でどんよりした空。
血臭漂うねっとりと生暖かい風。
そしてそこら中を漂う、どろりとした粘着性のある気味の悪い魔素の残り香……。
その中で、俺は自身の愛用武器、交差針の形をした長い槍を振り、刃先に着いたモンスターの血を飛ばした。
「 お~お~こりゃ~絶好のピクニック日和だな。
そう思わねぇ?
< モール >兄さん。 」
白銀の鎧は【 聖兵士団 】支給のモノ。
武器は今まで戦い抜いてきた戦いの中で、一番自分にしっくりくる形の特注品の長い槍。
今までそれなりに女にはモテてきたので、顔は割とイケている方……だと思っている。
ピンピン跳ねている茶色い髪を掻き揚げ、俺は兄さんの方へ視線を向けた。
【 第一聖兵士団 】副団長
< リゼル >
それがこの俺。
そして ” 兄さん ” と呼ばれた男はというと、相変わらずだらしなく服を着崩し、全体から気だるげな雰囲気を醸し出している。
俺よりも明るい茶色の髪は襟足の方だけ軽く跳ね、それだけ見れば何となく軽薄な感じがするのに、きめ細やかなイケてる顔面が爽やか過ぎて、相手に清潔感を与えてくるアンバランスな男。
そんな不思議な男、< モール >兄さんは右手と左手に一丁ずつ握っている二丁のレイピアを俺同様ピッ!と振った後、こちらを振り返る。
「 こ~ら!リゼル副団長!お仕事中は兄さんなんて言わないの。
” 公私は分ける ”
それが一流の成人の常識だよ。 」
「 ……いや、何言ってんだよ、このエロ団長は。
いくら聖兵士が副業OKだからって、【 性技師 】とか嘘ついてエロ店で働いているヤツに言われたくねぇよ。
そういやこの間、ライトノア学院に性教育も行ってたらしいが、生徒に手出してないだろうな。 」
モール兄さんに疑いの目をジロ~と向けて言うと、周りにいる他の聖兵士達も肯定する様に、うんうんと頷いた。
それを見て心外!とばかりにヨヨヨ……と泣くフリをした後、直ぐに復活した兄は、チッチッチ!と指を振って見せる。
「 成人前の子供に手を出すのは最大の禁忌。
そんな事するヤツはこの神の遣いのモールが全員去勢しちゃうぞ!
それに嘘なんて一個もついてないよ~。
なんたって俺の資質【 聖愛師 】は、【 性技師 】のスキル全部使えるし~。
そもそもだな、リゼル君。
善人が悪人に変わる原因って何だと思う? 」
「 ……また始まったよ。
いや、別に今はそんな事どうでも……。 」
ボコッ!と土から飛び出してきた小型モンスター達を、俺は一撃で薙ぎ払いながら面倒くさそうに答えたが、兄は全く気にする事なくペラペラとマイペースに喋り続けた。
「 それはだね~…… ” 貧困と孤独 ” !
俺的には結構な割合でこの二つが多いと思うんだよ。
そして生粋の悪人は、このニオイを嗅ぎつけるのが上手い。
苦しむ善人に近づき、あっという間に悪の道へ引きずり込んで死ぬまで搾取し続けるんだ。
俺はそういう人達を救いたいの~。
上から手を差し伸べても、深く堕ちている人には聞こえないからね。
同じ場所にいる人が必要な時もあるってことだよ。 」
「 ……へいへい。有り難い御高説どうもありがとうございます~。 」
胸に手を当てて、キラキラ目を輝かせる兄を見てげんなりとしながら返事を返す。
ソフィア様が全権限を持っている【 第一聖兵士団 】の団長< モール >は、俺の実の兄であり、父親は二人存在している……いや、存在していた。
一人目はイシュル教会司教である< ヨセフ >。
そしてもう一人は俺と兄さんが成人後に病気で他界してしまった< セイ >だ。
俺達は実力を認められ、それぞれ団長と副団長という地位を手にしたが、兄は中々の自由人というか……昔から変わった独自の世界観を持っており、色々な街に飛んではエロい店で働いている。
たまに見掛ければ、派手でセクシーな女を両手にぶら下げて笑っている兄。
そんな姿を見れば、身内としては羨ましさ半分、嫌悪感半分といった所。
俺的にはただのスケベ野郎としか思えないが、教会には毎日沢山の感謝の手紙や、お礼を言いに来る人達が耐えない。
” 一番苦しい時に話を聞いてくれてありがとう。 ”
” 側にいてくれてありがとう。 ”
そんな内容の言葉達から、きっと兄は兄のやり方で人を救っている様で、職業の斡旋や環境を変える手伝いなどもしている様だ。
そのため、なんだかんだと団員達は兄を認めているし、俺としても尊敬はしているのだが……まぁ、弟としては内心複雑なのである。
前から襲い来るBランクモンスターをあっさりと一撃で吹っ飛ばす兄を見て、努力を惜しまず鍛錬もサボっていない事に気づき、何となく敗北感というか……それに尊敬や羨望もあったりとか、昔から兄には様々な想いを抱いてきた。
だが────……。
俺は横から飛びかかってきたBランクモンスターを同じく一撃で薙ぎ払うと、フンッ!と勢いよく鼻息を吹く。
兄には兄の、そして俺には俺にあったやり方がある。
そう考えられる様になってからは、兄の生き方も認め、自分の価値観から出る ” 正しさ ” を捨てた。
正しいか正しくないかは、死ぬ直前に自分が決める事。
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