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第三十六章
1148 ” グレスター ”
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( グレスター )
へたり込んだ床の冷たさも感じないまま、長い間スクリーンに浮かぶ我が最愛の娘、ジェニファーを見つめていた。
画像は混乱状況を語る様に安定しておらず、所々途切れてしまったり様々な違う場所が映ったりしているが、そこに映るジェニファーの顔は全て同じ。
初めて見る様な、強い意思を感じる目をしていた。
まるで別人の様に見える娘の姿。
” 何故? ”
” そうして? ”
そんな気持ちが心の大部分を締めていて……呆然と娘の姿を見続ける事しかできなかった。
ただ座っているだけで、欲しいモノは全て手に入る。
そんな夢の様に幸せな生活に背を向け、何故そんな死地へと向かうのか?
それが理解できずに、その場で頭を抱えた。
何が足りなかった?
何が悪かった?
そんな疑問がぐるぐると頭の中を回り、心の中はドス黒い ” 絶望 ” へと変わっていく。
このままではまた私の大事な存在が手の届かない場所に行ってしまう。
我が最愛の……今は亡き妻< カトリーナ >と同じ場所へ。
” グレスター ”
この名は私が生まれた貧しい農村で ” 豊作 ” を意味する言葉だ。
両親は揃ってその村の農夫をしていて、あまり実りの良くない土地だった故、我が家は非常に貧しかった。
両親と私、そして一つ下の弟。
家族四人がなんとか暮らしていける程度の生活で慎ましく暮らしていたが、私が小学院に入る前、モンスターによる被害で畑が大打撃を受けてそれすらも厳しくなってしまった。
踏み荒らされ、焼け焦げた畑の土と作物。
残されていたのは、僅かな収穫した野菜と備蓄のみ。
そんな状態になってしまった畑を見て、両親はある決断をした。
” 子供を一人捨てよう。 ”
勿論捨てるといっても、そのままポイッと森に捨てたりなどはしない。
この国には生活に困った親が厳正な審査の元、子供の親権を教会に移せるという【 親代わり制度 】というモノがあって、要は育てられない子供を一時的に教会に預かってもらうという子どもの救済制度だ。
ただしあくまで教会は ” 親代わり ” であるため、両親はいつでも子供に会いに来る事は可能。
更に生活が安定すればいつでも親権を戻す事ができるため、預けたとしてもだいたい八割程の両親が時間さえあれば子供に会いに来て、生活基盤が整えば子供を迎えにくる。
しかしその際には守らなければならないルールがあった。
その①:親権を両親に返還する際は、預けた年数分の定められた養育費を教会に返納する事。
その②:子供が個人で働ける年齢、準成人を迎えてからの親権の移動はできない。
これをクリアーしなければ、子供の親権を再度両親へ移せない。
これは準成人を迎える直前に、子どもの親権を取り戻したがる両親があまりに多かったための措置。
要は準成人まで教会に面倒を見てもらい、その後は養って貰おうと考える両親や、最悪の場合借金だけ押し付けて逃げてしまおうという非道な輩が多かったからだ。
本当に子供を捨てたくて捨てたわけじゃない親は、なんとか生活を整えてまだ養育費が少ない内に子供を迎えにくるが……そうでない親は、莫大に膨れた養育費を払ってまで子供を迎えには来ない。
その場合は子供の親権は教会のまま、親に利用される事なく自分の人生を歩んでもらおうという目的があった。
” 一時的に預けるだけ。 ”
” 生活が整ったら直ぐに迎えに来るから。 ”
ペラペラとそう私に説明した両親は、最後に ” すまない。グレスター。 ” と頭を下げ、その後ろには優越感に酔いしれた弟の姿がある。
両親はその選択に迷いがなかった。
なぜなら一歳下の弟には既に農夫としての才能が見え隠れしていたからだ。
弟が両親と同様の農業系の資質をもっている事は間違いなさそうで、そんな兆しなど1ミリも見られない私とでは、迷う要素が一切なかったのだ。
遺伝による要素が多いと言われている資質だが、稀に全く関係ない資質に恵まれる事があって、それを【 突発型資質 】というが、私は確実にそれに当てはまっていた。
確かに暑い日差しの中、畑でピンピンと動ける両親や弟達に比べ、私は体力も対してないし力も強くない。
重いものも持てないし、私が植えた作物の成長は遅かった。
しかし、身体は妙に丈夫で風邪などは引いたことがないし怪我をしても直ぐに治ってしまうため、親としては ” 役に立たない不気味な子供 ” と映った様だ。
その事から家庭内で居場所があった事は一度もない。
それに対し、理不尽な扱いへの不満や怒り、悲しみ、憎しみなどがあったかと言われれば……正直一切そんな感情はなかった。
唯一思う事は、” まぁ、仕方がない。 ” くらい。
貧しい村では子供もお手伝いと称しているが、立派な労働力だ。
いくらイシュル神様が子供は神の子であると言っても、結局は稼ぎがなければ共倒れ。
そのため健康で自営業を立派に継げる子が、この村に置いてはとても価値ある事だったから。
へたり込んだ床の冷たさも感じないまま、長い間スクリーンに浮かぶ我が最愛の娘、ジェニファーを見つめていた。
画像は混乱状況を語る様に安定しておらず、所々途切れてしまったり様々な違う場所が映ったりしているが、そこに映るジェニファーの顔は全て同じ。
初めて見る様な、強い意思を感じる目をしていた。
まるで別人の様に見える娘の姿。
” 何故? ”
” そうして? ”
そんな気持ちが心の大部分を締めていて……呆然と娘の姿を見続ける事しかできなかった。
ただ座っているだけで、欲しいモノは全て手に入る。
そんな夢の様に幸せな生活に背を向け、何故そんな死地へと向かうのか?
それが理解できずに、その場で頭を抱えた。
何が足りなかった?
何が悪かった?
そんな疑問がぐるぐると頭の中を回り、心の中はドス黒い ” 絶望 ” へと変わっていく。
このままではまた私の大事な存在が手の届かない場所に行ってしまう。
我が最愛の……今は亡き妻< カトリーナ >と同じ場所へ。
” グレスター ”
この名は私が生まれた貧しい農村で ” 豊作 ” を意味する言葉だ。
両親は揃ってその村の農夫をしていて、あまり実りの良くない土地だった故、我が家は非常に貧しかった。
両親と私、そして一つ下の弟。
家族四人がなんとか暮らしていける程度の生活で慎ましく暮らしていたが、私が小学院に入る前、モンスターによる被害で畑が大打撃を受けてそれすらも厳しくなってしまった。
踏み荒らされ、焼け焦げた畑の土と作物。
残されていたのは、僅かな収穫した野菜と備蓄のみ。
そんな状態になってしまった畑を見て、両親はある決断をした。
” 子供を一人捨てよう。 ”
勿論捨てるといっても、そのままポイッと森に捨てたりなどはしない。
この国には生活に困った親が厳正な審査の元、子供の親権を教会に移せるという【 親代わり制度 】というモノがあって、要は育てられない子供を一時的に教会に預かってもらうという子どもの救済制度だ。
ただしあくまで教会は ” 親代わり ” であるため、両親はいつでも子供に会いに来る事は可能。
更に生活が安定すればいつでも親権を戻す事ができるため、預けたとしてもだいたい八割程の両親が時間さえあれば子供に会いに来て、生活基盤が整えば子供を迎えにくる。
しかしその際には守らなければならないルールがあった。
その①:親権を両親に返還する際は、預けた年数分の定められた養育費を教会に返納する事。
その②:子供が個人で働ける年齢、準成人を迎えてからの親権の移動はできない。
これをクリアーしなければ、子供の親権を再度両親へ移せない。
これは準成人を迎える直前に、子どもの親権を取り戻したがる両親があまりに多かったための措置。
要は準成人まで教会に面倒を見てもらい、その後は養って貰おうと考える両親や、最悪の場合借金だけ押し付けて逃げてしまおうという非道な輩が多かったからだ。
本当に子供を捨てたくて捨てたわけじゃない親は、なんとか生活を整えてまだ養育費が少ない内に子供を迎えにくるが……そうでない親は、莫大に膨れた養育費を払ってまで子供を迎えには来ない。
その場合は子供の親権は教会のまま、親に利用される事なく自分の人生を歩んでもらおうという目的があった。
” 一時的に預けるだけ。 ”
” 生活が整ったら直ぐに迎えに来るから。 ”
ペラペラとそう私に説明した両親は、最後に ” すまない。グレスター。 ” と頭を下げ、その後ろには優越感に酔いしれた弟の姿がある。
両親はその選択に迷いがなかった。
なぜなら一歳下の弟には既に農夫としての才能が見え隠れしていたからだ。
弟が両親と同様の農業系の資質をもっている事は間違いなさそうで、そんな兆しなど1ミリも見られない私とでは、迷う要素が一切なかったのだ。
遺伝による要素が多いと言われている資質だが、稀に全く関係ない資質に恵まれる事があって、それを【 突発型資質 】というが、私は確実にそれに当てはまっていた。
確かに暑い日差しの中、畑でピンピンと動ける両親や弟達に比べ、私は体力も対してないし力も強くない。
重いものも持てないし、私が植えた作物の成長は遅かった。
しかし、身体は妙に丈夫で風邪などは引いたことがないし怪我をしても直ぐに治ってしまうため、親としては ” 役に立たない不気味な子供 ” と映った様だ。
その事から家庭内で居場所があった事は一度もない。
それに対し、理不尽な扱いへの不満や怒り、悲しみ、憎しみなどがあったかと言われれば……正直一切そんな感情はなかった。
唯一思う事は、” まぁ、仕方がない。 ” くらい。
貧しい村では子供もお手伝いと称しているが、立派な労働力だ。
いくらイシュル神様が子供は神の子であると言っても、結局は稼ぎがなければ共倒れ。
そのため健康で自営業を立派に継げる子が、この村に置いてはとても価値ある事だったから。
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