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第三十六章

1142 小賢しいハエ共

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( マリナ )

元諜報員の飼い猫カルパスと、現諜報ギルド総長エルビス。

どうやらこの二人に、グリモアに仕掛けた< 聖浄結石 >の存在がバレていた様だ。


これではまた計画が潰されてしまう!!


扇子の下で、チッ!!と大きな舌打ちをしながら、今の現状を打開する方法を考える。


< 聖浄結石 >が壊される前にさっさと発動させてしまいたいが……防衛体制が完璧な今、戦況が劣勢でもないのに、そんな事をしてしまえば、こちらが罪に問われてしまう!


ましてや忌々しい事に、現在高い身分の家の子供たちがグリモアに迫っているため、それに巻き込まれてしまえば、エドワード派閥の内部分裂は避けられないだろう。


なんてことなのっ!!


次々と起こる計画外の出来事にギリギリ……と唇を噛み締めた。


『 ……やむを得ない。モンスターボックスは特別製のモノを除いて全て作動させよう。

後々の証拠を消すのが面倒で、できれば使いたくなかったんだけどね……。


────本当に手こずらせる! 』


カールは怒りを滲ませたまま、現在潜伏中の駒に命じ、モンスターボックスの作動を命じる。


すると────……。



────ドンッ!!

ドンッ!!ドンッ!!ドドンッ!!!!


連続した爆発音がスクリーンの中から聞こえ、その場に緊張が走った。


「 街中で突如モンスターが大発生っ!!!かなりの広範囲で確認されました!!

このままではグリモアは……内部から崩されます!! 」


「 なっ……なんだとっ!! 」


モンスターの気配を即座に察知した解析班達が叫ぶと、ニコラ王は慌ててスクリーンを見回し、エドワード様をギロッ!と睨みつける。

周りでバタバタと小うるさかったハエ達も、ピタリと止まり、青ざめた表情でスクリーンを注視した。

そこには舞い上がる砂小堀で視界が悪い中、チラホラと高ランクモンスターの姿が映っており、所々で悲鳴が上がる。


「 ────くそっ!まずいぞ!!

街民達は教会に避難済みだろうが、直ぐに気づかれる。

戦闘用飛行魔道具が届くまで……もってくれよっ……。 」


「 グリモアの街周辺も物凄い数のモンスター達よ。

どんどん広がっている……っ!

急いで魔道路の固定をしないと!! 」


スタンティン家のオルガノとアリシアが焦った様子でそう叫んだので、その様子がおかしくておかしくて心の中で大笑いしてしまった。


せっかく我がエドワード派閥の重鎮として声を掛けてやったというのに、のらりくらりとゴキブリの様に逃げ回るからだ。

今回の事が終われば、優先的にエドワード派閥の総力をもって追い詰めてやる。


扇子の下でクスクスと笑っていると、同じく仮面の下に笑顔を隠しているカールとエドワード様と目線を合わせ、お互いの心の内を確認し合う。


これでいい。

これでどんなに愚かな選択をしたのか分かったでしょ?

自分たちの家もこうやって消されたくないなら、大人しく全てを差し出し土下座でもしてみなさいな。

そしたら多少は気が変わって命くらいは助けてあげるかもしれなくてよ?


青ざめながら私達を睨みつける周りの者達に、心の中でそう言い放つと、ゾクゾクと身体を震わせる優越感と快感の中悶えた。


今後は一生奴隷の様に私達のために働いてもらいましょう。

なんて楽しみ!


ルンルン♬とご機嫌で、鼻歌が漏れそうになっていたその時────突然、それをぶち壊す解析版の耳障りな声が場に響く。


「 ────っ!!??街中でモンスターと対峙する者の反応ありっ!!

この魔力反応は……スタンティン家の御子息マリオン様ですっ!!! 」


「 ────んなっ!!! 」


驚きの内容に、思わず声が漏れる。

解析班は直ぐにスクリーンの映像をパッ!と替え、映し出されたのは、スタンティン家の御子息が妙な形の魔道具に乗って、モンスター達の前に現れた姿だった。


「 スタンティン家の……っ!! 」


「 まさかあの乗り物は魔道具なのか?!

モンスター行進が起きている中、このスピードで戻るとは……。 」


「 スターホースにも引けを取らないなんて!凄いぞっ!!さすがはスタンティン家!! 」


ワッ!!と騒ぎ出すゴミ共に怒りが湧くが、こんなタイミングで間に合った事に焦りが溢れ出す。

更に冷静な者達が、マリオンの近くにいる二人の学生らしき人物達に気づき、あっ!と声を上げる。


「 マリオン様の他に二人いるぞ!!

怪我をしているが……もしや何者かと交戦していたのではないか? 」


「 モンスター……ではなさそうだ。

だとすると……? 」


< 聖浄結石 >を守らせていた者達の存在に気づかれたようだが、そいつらはただの捨て駒。

それが見つかっても大した事はない。

既に裏で単独犯に仕立て上げる準備はしてあるから。


勿論、元王宮騎士ジュワンやレイナに関しても、どうせ今回の事が終われば周辺の家族や繋がりのあった下級貴族諸共全てを消すつもりだったため、準備はしてある。

そのため余裕の表情でその様子を見ていたが、ニコラ王には全てお見通しだった様で、怒りと憎しみの籠もった目で私達を睨みつけてきた。

私達はそれを真っ向から睨み返し、バチバチと火花を飛ばしていると、スタンティン家のオルガノとアリシアが同時に「「 マリオン……。 」」と呟き、笑う。

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