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第三十六章

1139 違和感を感じた

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( マリナ )

その知らせを受けた時、あまりの事に私はフッ……と気絶してしまう。

目が覚めればカールが深く沈んだ状態で座り込んでいて「 ……何が……?? 」「 一体……どこが駄目だった……? 」とブツブツ呟き、更に王宮での出来事を説明し始めた。


【 神の戯れ 】を倒し、Aランク傭兵達を全員始末したのは、ドノバンと第二騎士団副団長のユーリスである。

その功績を称え、第二騎士団に花を持たせてしまった。


最悪の状況に、フッ!と全身から力が抜けていく。


何年も計画してきた完璧な作戦があっさりと破られた!

あの小賢しい引退した老騎士と狂犬ユーリスにっ!!!


力なく横たわりながら、心の中では怒りと憎しみでメラメラと炎が上がる。


しかし────……同時に冷静な部分の自分がフッと違和感を感じた。


” 本当にカルパスとドノバン、ユーリスだけで、ここまでの事ができるのだろうか? ”


カールの話では、王宮に現れたドノバンとユーリスに怪我は一切なく、ピンピンしていたとのこと。


Sランク傭兵とAランク傭兵相手に無傷……??


その違和感は心の中でジワジワと波紋の様に広がっていったが、その後にライトノア学院に送り込んでいたジュワンからの報告を受け、一応は納得する形で落ち着いた。

ジュワン曰く、アーサー陣営に正体不明の魔道具の存在があるかもしれないとの事。

その厄介な存在を探る事が優先事項だと、私達はその魔道具について警戒を強めていたのだが、それから直ぐにまたとんでもない知らせが入る。


” リーフ・フォン・メルンブルク

ライトノア学院合格! ”


” 更に約100年ぶりとなる300点を上回る高得点で受験を突破! ”


この知らせに、私とカールは勿論、グリードまでもが白目を剥いて気絶してしまった。


アレがライトノア学院に合格した!!?

更に300点超えという偉業とも言える歴代最高点で??


これでは直ぐに学業に関する費用を全てストップしても、<  特別免除学生 >になってしまっているため、妨害する事は不可能だ。


到底受け入れる事のできない現実に、グワングワンと頭痛が起き、冷静な判断ができない!


そんな一杯一杯な状況の中、更に告げられたのは ” それでも結果は次席である。 ” という事。


では首席は一体……???


驚きに言葉もない私達に対し、次に告げられた真実、それは我がメルンブルク家を奈落の底まで突き落とすモノであった。


” 首席はリーフ様の奴隷のレオンという少年です。

呪われた半身を持っている……化け物でした……。 ”


諜報担当の者から語られたその事実に、私とカール、グリードに引き続き、今度はシャルロッテが泡を吹いて気絶する。


奴隷が首席!

それを実行したのがアレ!!


これは明らかに我々に対して……いや、国に対する最大の侮辱行為だ!!!


その後、私達メルンブルク家はあまりの事に、揃いも揃って高熱に魘されてしまったのだが、その時に延々と私は考えた。


一体何が起きているのかと。


一番可能性が高いのは、アーサー陣営のフラン達が隠し持っているとされている正体不明の魔道具の存在だ。

それを使ってアレを次席、そして奴隷を首席にしたのではないか?

そう考えた。


ジュワンが言うには、あの賢者と名高いフローズが作り上げた最高レベルの精神系攻撃魔法入りの< 封魔術紙 >が無効化され、更に奴隷と戦った際にはジュワンの動きを全てが封じられてしまったと言っていたらしい。


そんな恐ろしい兵器をアーサー陣営が手にしているなら、我々エドワード派閥にとって脅威になってしまう。


私とカールは熱が引くや否や、直ぐに情報を求めて、家庭教師を務めていたマリアンヌへとコンタクトを取ろうとしたのだが────なんとマリアンヌは消息不明となっていた。

どういう事か詳しく調査すれば、マリアンヌは個人的にあの奴隷を始末しようとしたらしく、傭兵を雇ったのだそうだ。

それを聞き、愚かな事を……と爪を噛んだ。


そんな事をすれば、カルパスが即座に動く。

恐らくは、それを最大限に使い、マリアンヌは失脚させられたという事だろう。


現にマリアンヌは、保守に走った実家に切り捨てられ、身分は下民へ。

それ以来借金を繰り返し、最後に結局借金奴隷になってからは消息不明であるという事だった。


娘をあっさりと捨て、更にその情報を私達にペラペラと話すマリアンヌの父親を見て、私とカールは大きなため息をつく。


親と子の絆は絶対のモノ。


イシュル神の教えは絶対であり、私達はこの現状に酷く悲しみを覚えた。


マリアンヌはとても優秀で、高潔で……貴族というモノを ” 正しく ” 理解していた、まさに貴族女性の鏡の様な存在であった。

これから共に ” 正しき ” 世界へと連れて行くはずの同胞で、非常に献身的に私達に協力してくれたマリアンヌは私達にとって最高の────────────






役立たずの道具だった。

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