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第三十五章

1120 変化

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( マービン )


「 ────えっ?? 」


突然の出来事に反応が遅れると、更に後ろへ強く引っ張られて、そのまま荒野側の方へと投げ飛ばされてしまった。


結構な強さとスピードで投げ飛ばされたため、俺は受け身も取れずに地面に叩きつけられ、更にゴロンゴロン!!と転がっていく。

そして大きな岩の塊にぶつかってやっととまったが、全身酷い痛みでその場でうめき声を上げてしまった。


「 ────~~っ~~っっ!!! 」


その痛みに耐えながら、ゆっくりと起き上がると俺を投げ飛ばしたであろう人物が目に入る。


茶色い髪に平凡な容姿。

目だけ黒み掛かった茶色という不思議な色をしているくらいで、他の特徴といえば鼻の上のそばかすくらいという、その変にウヨウヨいそうな外見の60代くらいの爺さんだ。


こいつ、誰だ???


覚えがない人物にハテナマークが飛んだが、そんな俺の様子など気にする事もせず、その爺さんはズカズカと俺の目の前までやってきて思い切りゲンコツを落としてきた。


「 この大バカヤロ────────!!! 」


怒鳴り声と共に落とされたゲンコツは容赦なく、満身創痍の俺の顔は地面にめり込む。

直ぐにでも文句を言いたかったが、痛みと爺さんの物凄い気迫によって何も言えなかった。


その爺さんは「 全く……。 」とブツブツ文句を言いながら、更に続けて言う。


「 あんな崖から飛び降りようとするなんて危ないじゃないか!!

あと一歩進んでいたら、君は死んでしまっていたんだよ。 」


「 は……はぁぁぁ~???

崖って……一体何を言っているんだ?

ボケてるのかよ、爺さん。 」


何を馬鹿な事をと、楽園の方へ視線を向けた瞬間────────俺はそのまま息を飲んだ。


そこには巨大で真っ暗な崖があって、楽園などまるで最初からなかったかの様に無くなっていたからだ。


目を見開いてポカン……とその崖の方を眺めていると、爺さんは俺の頭をポンポンッと優しく叩いた。


「 いくら女の子が裸を見せてくれないからといって自暴自棄を起こしちゃ駄目だよ。

諦めずに頑張ろう。 」


あんまりの勘違いにガックリと脱力し、それを否定するため首を横に振りながら崖のある方向を指で差す。


「 ちっげぇ────よっ!!そんなんじゃなくて……ほらっ!あっち!!

今は崖になっているが、さっきまで花畑があって、俺の母と兄がそこで踊っていたんだ!

沢山の金貨や宝石の上で楽しそうに……。 」


そう言って俺の視線は爺さんから楽園があったはずの場所へ。

すると今度はまた崖が消えていて、花畑とワルツを踊っている母と兄の姿が……。


ただし、その顔は先ほどまでの幸せそうな笑みはなく、ただジッ……と憎々しげな顔で爺さんの事を睨んでいる。


「 …………。 」


またしてもガラッと変わってしまった景色に驚きと、更に母と兄の恐ろしい形相に恐怖を抱き大量に汗を掻きながら黙ると、爺さんはそんな俺を不思議そうに見た。


「 んん~???君は何を言っているんだい?

あっちにはさっきから崖しかないよ。

それに……花畑はこっちじゃないか。 」


「 ???は??いや、ここは荒れた荒野……。 」


俺がそう答えると、じいさんはピッ!と地面を指差す。

すると、その指に差された地面からピョコン!と何かの芽が飛び出した。


そして────────。



ポコッ……。


ポコポコポコポコ~~♬



そしてそこを中心として荒野全体に沢山の芽が生えていき、一斉にパッ!と花が咲いたのだ!!


「 …………っ!!??? 」


ありえない出来事を目にして真っ白になってしまった俺は、ただただ一面花畑になってしまった荒野だった場所を眺めた。



色とりどりの美しい花達。

そして空からは眩いばかりの光がこれでもかと差す場所。


まるでそれは最初に見た楽園の様な……?



その美しい景色に混乱しながらも、思わず見惚れていると、突然─────……。




────チャリン……。



チャリン……チャリチャリ……。



金貨の擦れる音が楽園だった方から聞こえて、俺はゆっくりとそちらへ視線を向けて────────凍りついた。



そこに広がっていたのは花畑ではなく、一面焼け焦げた真っ黒な大地と、血をぶちまけた様に真っ赤に染まった空だったからだ。


「 な……え、え……?? 」


震えながら、先ほど母と兄が踊っていた場所へ視線を向けたが、そこに二人はいない。


しかしその代わりにドロドロした人よりも一回りは大きい巨大な肉の塊がいて、ぐちゃぐちゃと音を立ててその肉塊から沢山の触手を伸ばしていた。

そしてその触手は足元に落ちている金貨や宝石をかき集めては、肉の塊の上部にある大きな口の様な穴へと次々と放り込んでいく。


「 ────ヒィッ!!!!! 」


恐ろしさの余り、俺は短い悲鳴をあげながら腰を抜かしてしまい、その場に尻もちをついたままジリジリと後ろに下がった。
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