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第三十四章

1104 親友達

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( ルル )

ちょっ、ちょっとパンチが少なかったかな……?

よし!もっと偉そうにしてみよう!


そう思って口を開きかけたその時、ニーナさんがポンッと優しく私の肩を叩く。


「 ルルちゃん、皆を励ましてくれてありがとう。

とりあえずルルちゃんはマリンの手伝いをしようか。 」


「 ち、違うの!私は< るるなる >様なの!

それに励ましじゃな……じゃなくて、励ましではないぞ!


私の資質は【 統率士 】!


統率系の戦闘上級資質なのだよ!だから任せなさ~い! 」


ドンッ!と胸を叩いてそう言うと、周りはザワッ!!と大きくざわつき始めた。


「 えっ……ルルちゃんが上級資質……? 」

「 しかも統率系だなんて……。 」

「 確か滅多にない資質だったよな?凄いレア資質の……。 」


ガクガク、ブルブルと震える足を必死に踏みしめながら、私は皆の顔が、見れなくてギュッ!と目を瞑る。


” そんな戦闘系の凄い才能を持っているのに、今までそれを役立てようとは思わなかったのか? ”

” グリモアが大変だった時も知らんぷりかよ。最低だな。 ”


そんな言葉を想像し更に震えは大きくなったが、それを覚悟の上で私はここに立っているのだ。


さぁ、どんとこい!!


威勢の良い言葉とは裏腹に生まれたての子鹿の様に震えていると、お店の常連のおばあちゃんが最初に声を上げた。


「 まぁまぁ~そうだったの~。でも、無理しちゃ駄目よ~。

だってルルちゃん、虫も潰せない優しい子なんだから、気持ちだけで十分よ。 

おばあちゃんが頑張ってルルちゃんの分まで虫を潰してくるからね。 」


手に持つ大きなナタをブンブンと振り回すおばあちゃんに、周りはブブ──ッと吹き出し「 そうだぞ~。俺達で大丈夫大丈夫。 」「 私も夏に黒いアレを倒すのに関しちゃ負けないわ。 」とワイワイ声をかけてくれる。


みっ、皆……優しい!!


ブワッ!と湧き上がる感動に息が止まりそうになっているのに、更に母が遠くで ” がんばれー! ” と口をパクパクしながら伝えてくるので、ドカンッ!と胸が打たれた。


思わず泣きそうになってグスンッと鼻を啜ると、今度は人垣の中をすり抜けて二人の人物たちが私の元へ飛び出してきた。


────────シュバッ!!


颯爽と現れたその二人の顔には私と同じくヒヨコと犬をモチーフにした仮面がついていて、突然私に向かって跪く。

それに私は勿論、街の人たちも驚き目を見開いていると、そのヒヨコと犬の仮面の人物たちは今度はスッ……と立ち上がり、皆の方を向いた。


「 我が名は新たなる世界の創造主< るるなる >様の右腕!

混沌の世界を描きし者!

【 ピヨ飯 】! 」


ヒヨコの仮面を被った人物は、両腕をクロスさせてスクワットをする時の様に足を曲げるという独特のポーズをとる。

そしてそこでピタリと止まった【 ピヨ飯 】に続き、犬の仮面を被った方の人物が今度は動き出した。


「 同じく< るるなる >様の右腕が一人!

叡智なる思想を広めし者!!

【 犬の耳たぶ 】! ここに参上! 」


腕を時計の針の様に滑らかに動かし、上まで持ってくると、そのまま片足を上げてポーズ!

そして二人はいっせーのせっ!で同時に叫んだ。


「「 我らの力もお使いください!るるなる様────!! 」」


「 ピヨラちゃん……ワティちゃん……。 」


その正体を知っている私は、油断したら零れそうな涙をグッ!と堪えて二人の名前を呟く。


< ピヨラちゃん >はこの街に来たばかりの時、迷子になってしまった私に初めて声を掛けてくれた女の子で、まん丸メガネにストレートヘアーが素敵な女の子だ。

本人はややぽっちゃり体型がコンプレックスなんだと言うが、私は気になった事がない。

出会って直ぐにそのほんわかした雰囲気と優しい言葉の数々にとても助けられてきた大事な親友の一人で、現在は家業である絵師を生業にしている。


続いてもう一人親友の< ワティちゃん >

ワティちゃんは独創性溢れる【 アオゾラ商会 】の会長の娘で、短めのショートボブに好奇心が強そうなスッと切れ長の目と常に上がっている口角がパッと見ると猫の様に見える事もある。

ピヨラちゃんに読書仲間として紹介されて友達になり、有り難い事に現在は3人で親友という関係性を築いているのだが、実は私達の関係はそれだけに留まらない。


ピヨラちゃんの言った【 ピヨ飯 】は実はペンネームで、私の書いた小説の絵師さん。

そしてワティちゃんの【 犬の耳たぶ 】は私が書いた小説の編集さんの偽名である。


つまり私達は、 ” 同志 ” でもあるのだ!


ノリノリでやってきてくれた二人にジ──ン……と胸を震わせたが、本来派手な事が苦手な二人。

こんな二人、見たことがないけど大丈夫かな……?


自分のガクガク震えている足はひとまず置いておいて、前の二人をよくよく見ると────二人の手足はありえない程細かくガタガタと震えているのに気付いた。


ぜ、全然大丈夫じゃない!


それに気づくと、二人から心の声が聞こえてくる。


怖い。

怖い……。

目立つのも怖いし、モンスターも怖い!!


二人は私のためにこんな事をしてくれたらしい。


それを理解すると、せっかく耐えていた涙が仮面の中でドバドバと流れていった。


ありがとう。

ありがとう。

ピヨラちゃん、ワティちゃん。


ズピピ────!!と鼻を啜って、これ以上涙が流れない様に黒く染まった空を見上げる。


さっきまであんなに怖かった黒い空なのに、もう全然怖いなんて思えない。

私だけの居場所をいつでも用意しておいてくれる母、こうして怖くても助けようとしてくれる大事な親友達に私を見守り尊重してくれる街の人達。


こんなにも沢山の人達がいる世界に怖いモノなどあるものか!


私は初めて自分の中に湧き出す力を感じ、それに逆らう事も恐怖を感じる事もなくそれを開放した。


< 統率士の資質 > ( ユニーク固有スキル )

< 弱き者達の反撃の旗 >

戦闘経験値が一定以下の味方達に限定し、全ステータス値を大UPさせ、また有利属性ボーナスを付与する事ができる

また資質固有能力も大幅にUPさせ、逆に敵のステータス値、属性能力値は大幅にダウンさせる。

(発現条件) 

魔力を除いた全ステータス値が一定以下である事

戦闘経験値がない事

闘争心、攻撃性、狡猾が一定以下、かつ人に他者に対する負の感情値が一定以下であること

一定以上の勇敢、根性、正義を持つ事

一定以上の精神負荷を経験している状態で、一定以上の決断力を獲得する事




「「「「 おおおおおお────────!!!! 」」」」


このスキルはこの場にいる街の人達全員にかかり、自身の急激なパワーUPに驚いた様子を見せる。

それにグッ!と拳を握ると、そのまま私は次々とスキルを発現していった。

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