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第三十三章

1080 一応の終着点

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( アゼリア )

自分の持っていない魔法という才能を持っているクラークに対しても、 ” ザマァ見ろ! ” ” 私の気持ちを思い知ったか! ” という気持ちと ” 魔法よりも私の刀の方が凄いのだ! ” という優越感を感じる様になると、今度は自分に絶望した。


私の方が ” 正義 ” だ!

そんな事を考えてしまう私は、両親やクラーク達と全く同じじゃないか……。


それが自己否定感を更に加速させる。


当時の事を思い出すと、若干の心の痛みと共に、以前教会で見た不思議な夢について思い出した。


私はどうすれば良かったのか?

どうすれば上手くやっていけたのか?


そんな後悔と自己嫌悪感でグルグルと思考は周り、自分はやはり生まれてこない方が良かった存在なんだと思っていたが……責められるべきは私ではないと気づいた。


握っていた拳を軽くトンッと胸に叩きつけ、ニヤッと笑う。


今はそんな私を認めてくれる大事な仲間達ができてしまったから、もう自分を否定することはできない。

それをしてしまえば、仲間たちも否定し侮辱する事になってしまうからだ。


私はもう一度クラークへと視線を向け、その周りにボヤッと見える両親達の幻ごと彼らをまっすぐに見つめた。


今まで辛い日々は、私が成長するための最高の ” 道具 ” であった。


きっとそれがなかったら、私はその優しい環境にあぐらをかき、大事な人達を守る力を得る事ができなかったと思う。

逆行とは人を強くするための最高のシチュエーションで、ぬるま湯の様な心地よい環境は、心地よさと引き換えに浸かりすぎれば人を駄目にする。


私は最高に運が良かった。


幸せな今だからこそ両親やクラーク達に心から伝える事ができる。


「 ありがとう。 」


ボソッとそう告げると、私の中のクラークを恨む気持ちは消え去っている事に気付いた。


それに気づくとなんとなく面白くないような気持ちになったが……リーフ様に ” あとすべきはお父さん達をいかにぶっ飛ばすかだ。 ” と言われた時の事を思い出し、気持ちはス~ッと晴れていく。


そんな自分の気質に非常にマッチしたその復讐方法を伝授された私は、その直後まずはクラークへ決闘を申し込んだ。

するとクラークは相変わらずの嫌な笑みを浮かべ「 何を馬鹿な事を……。 」と馬鹿にしながら無視しようとしてきたので、すかさず私は「 怖いのか? 」と言ってやる。


────ピタリ……。


動きを止めたクラークが睨みつけてきたので、そのままバチバチと睨みあえば、一緒にその場にいるソフィア様とジェニファー様が同時にため息をついた。

それに気付いたクラークがプイッ!と顔を背けてきて、直ぐにジェニファー様と共に去ろうとしたのだが……私はヤツの背中に向かってボソッと呟く。


「 ……リーフ様が戦えと言った。 」


その瞬間、ソフィア様が ” えっ!!? ” と驚いた様子で私を見たが、ニュアンスは間違っていないため、フルフルと首を横に振ってニコリと笑いかけた。


するとそんな私を見てソフィア様は汗を掻いていたが、止めるつもりはない様だ。

そのためそのまま動きを止めたクラークを見つめていると────クラークは直ぐにギラギラした目で私の方を睨みつけてきた。


「 ……闘技場でいいな? 」


「 勿論。

< 仮想幻石 >をつけた一本勝負だ。行くぞ。 」


私達は同時に自分の主に了承をとると、ソフィア様とジェニファー様は ” 好きにして ” と言わんばかりに手をひらひらと振ってくれたので、そのままクラークと睨み合いながら闘技場へ。


それから私達は激しい戦いを繰り広げた。

スピードで翻弄して切り込んでは防がれ、魔法を打たれればそれを避ける!斬る!反撃する!反撃される!反射、防御────……!!


一瞬の隙が命取りとなりそうな激闘の末、体力も魔力も限界に近くなった私達は最後、私は固く握った拳を、クラークは魔力を纏った拳をお互いの顔へ向かって打ち込み、クロスカウンター!

その結果、物理に歩があった私が勝ち。

クラークは私の拳を受けて場外まで吹っ飛び、そのまま瀕死状態になった様だ。


────勝った!!


ピクピクと痙攣して倒れているクラークを見下ろしガッツポーズをしたのだが────その直後足元に仕掛けられていたトラップ魔法が発動し、ボボンッ!!と大きな音を立ててリング上は大爆発!


それに巻き込まれた私も場外へ吹き飛ばされて、瀕死になってしまう。

その後は< 仮想幻石 >を使うまでもないかと、判断したらしいお互いの主が回復魔法を掛けてくれた。


「 蛮族女、刀ゴリラ、戦闘狂。 」


「 ゴキブリ男、コバエ男、ハチドリチビ。 」


お互いブツブツと罵りながら、とりあえずは目的を果たし、スッキリしたわけだが……その時私は全てを悟る。


こいつは性格が元から悪い。

そして絶望的に性格も気質も合わない。


つまり私の中のクラークという存在は────

” 恨みはないが、一生相見えぬ性格の悪い男 ” 

……という微妙な立ち位置にいる存在なわけだ。


う~む……?

私は腕を組み悩みながら、またチラッと戦っているクラークを覗き見た。


今奴は< テンペスト・モンキー >三体を相手している様だが、特に問題はなく倒せそうなので、他の聖兵士達が応援に来るまで、恐らく持つのではないかと思われる。


遺恨はない。

だから加勢しても良いのだが、どうせ────

” 何しに来た? ”

” 魔法が使えぬ役立たずは消えろ。 ”

” レイモンド家の恥知らずめ! ”

……などと顔を大きく歪めて言ってくるに違いない。

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