上 下
1,081 / 1,372
第三十三章

1066 人の手に余るモノ

しおりを挟む
( マリオン )


「 ─────っなっ!! 」


《 なんだとっ!!!! 》


俺と父様が同時に叫び、その場で戦う者達全員に衝撃が走った。


「 えっ、Sランク……。 」


「 嘘だろう……? 」


ザワッ!とざわつくその場をものともせず、おぞましいまでに主張するゾッとするような魔力が、ドンドンとこちらに向かって近づいてくる。


地響きの様な足音により揺れる大地。

更にそれに合わせる様に何百もの赤子?の泣き声や笑い声……。


この場に似つかわしくないその声に、全員が震え上がっていると、やがて姿を現したのは─────……


「 な……何なんだ……あの不気味な姿は……。 」


「 あ、あんなやつ見たことないっすよ……。 」


モルトとニールがブルブルと震えながら後ずさりをすると、それが合図かの様にフリック達も僅かに後ずさりをした。


体長20mほどはありそうな、全体的にはどっしりと大きな木の形をしているその体には、まるでミイラの手の様な気味の悪い沢山の樹木の枝が生えていて、何かを掴もうとしているのか?バラバラに蠢いている。


そしてそれ以上にゾッとしたのは、本来葉がついている樹冠の部分に埋め尽くす程の大小様々な赤ん坊の首がくっついている事だ。

赤ん坊の鳴き声や笑い声はこの沢山の首がバラバラに口を開いているかららしい。



【 Sランクモンスター 】


< ダーク・ツリー・フェイス >

巨大な木の形をしている樹木型モンスター

樹冠部分を埋め尽くす程の数の赤子の顔がついており、それがそれぞれ別々の魔法の詠唱を歌い、全属性魔法を駆使して攻撃してくる

また樹体部分から生えている枯れた人の手の様な枝からは物理属性の強烈な攻撃を繰り出してくるため、近づくのは困難

更に物理、魔法共に耐性バリアを持っているため、殆どダメージは一切通らない

高火力、広範囲攻撃、多種多少の攻撃パターンが見られ、以前姿を現した時には、一瞬で一個体の大部隊が全滅した

( 人型種未討伐モンスター )




誰も彼もが言葉もなく立ち尽くしていると、赤ん坊達はスッ……と目を一斉に開ける。

そして大きな目で俺達を見回すと、突然大人の様にゲラゲラと笑い出し、そのまま魔法の詠唱を始めた。


《 ダーク・ツリー・フェイスの各顔面部位、魔法の詠唱に入りました!

全属性のランダム攻撃が来ます!! 》


解析班がそう告げた瞬間、防御スキルを持った盾班や前衛班が直ぐに前に出てスキルを展開。

父様も直ぐに魔法耐性シールドをその場に張ると、フリックの召喚獣が俺達の前に飛び出し、防御態勢をとった。



─────が……



──────────カッ!!!!


一瞬強い光が爆発したように辺りを照らすと、一瞬で凄まじい魔法の砲撃が周りを襲う。


「 ───クッ!コロちゃん!持ちこたえて! 」


「 キュ……キュ─────ッ!!! 」


後ろに飛ばされそうになったが、召喚獣のお陰でなんとか耐えきり、慌てて周囲の状況を確認したが、なんとたったそれだけで、ほぼ全員が吹き飛ばされて陣形が見事に崩されていた。

しかし流石は戦闘のプロ。

直ぐに立ち上がり形勢を立て直す。


「 ソフィア様のスキルで弱体化しているはずなのに……! 」


「 これがSランクですか……。 」


形勢が崩れそうになった事で、チャンスとばかりに襲ってくる小型モンスターを剣で倒しながらロダンが呟き、同時に弾かれそうになった盾を構えたルナリーが汗を掻きながらそう言った。


Sランク─────恐ろしいほどの圧倒的な力!


そもそもSランクモンスターは、基本は魔素が濃い場所から滅多に降りては来ず、お目にかかる事事態がないが、稀にフラッと人里に姿を現す事がある。

その主な目的は酸素によって生きている ” 人 ” や ” 動物 ” を食らう事であると言われていて、その際には沢山の犠牲者を出しながら、彼らを元いた場所に帰してきた。


─────では、何故酸素で生きる生き物達を捕食したがるのか?


そこで有力とされている説としては魔素の特性 ” 違う物質を取り入れる事によって新たな力を手に入れているのではないか? ” が有力な説になっている。

しかしそこで新たな疑問……。


 ‘ だったら何故、積極的に襲ってこないのか? ‘ 


これは全くの不明。


” 魔素が濃い場所から一定期間しか離れられないのでは? ”

そう考える学者もいるが、人里に降りてきた時ピンピンしている様子からそうとも思えないため、もしかしたら彼らなりのルールが存在しているかもしれない。


なんにせよ人型種は、そんな ” ルール ” に助けられ、今のところはフラリとたまにやって来るSランクモンスターが現れた際には、各名門貴族達や騎士団総出で出陣し、何とか魔素領域へ帰す……という処置をとってきた。


そんな幻に近い最強モンスターが今、前の前に……。


ジッと睨みつける様に、そのモンスターを観察すると、楽しんでいるのか、やはりゲラゲラと大人の様な声を上げて笑いながら俺達を見ている。

しかし目はギラギラと欲に塗れ、口からは絶えずよだれを垂らしている事から、完全な< 捕食モード >に突入している事が分かる。

しおりを挟む
感想 264

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

ゆい
BL
涙が落ちる。 涙は彼に届くことはない。 彼を想うことは、これでやめよう。 何をどうしても、彼の気持ちは僕に向くことはない。 僕は、その場から音を立てずに立ち去った。 僕はアシェル=オルスト。 侯爵家の嫡男として生まれ、10歳の時にエドガー=ハルミトンと婚約した。 彼には、他に愛する人がいた。 世界観は、【夜空と暁と】と同じです。 アルサス達がでます。 【夜空と暁と】を知らなくても、これだけで読めます。 随時更新です。

処理中です...