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第三十二章

1051 それぞれの思惑

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( ニコラ )

ライロンド家の保持する最高戦力である【 飛竜隊 】は、現在第一から第三までの部隊に分かれている。


< ヒューイ >が隊長を務める第一部隊は一番槍の特攻部隊で、敵の発見から偵察、そして相手の実力を測る事に特化している。


続いて< バン >が隊長を務める第二部隊はスピード特化の敵の陣営を崩す撹乱する役割を。


そして< サンサ >が隊長である第三部隊は、特に攻撃に特化した部隊であり、陣形が崩れた敵を一網打尽にする役割がある。


そしてその3つの部隊を纏め上げ、司令塔かつ攻撃役も担っているのが総隊長を務める< ダリオス >で、彼らの活躍により今まで国境付近に侵入してきた敵は全て問題なく撃破されているのだ。


そんなライロンド家の総戦力を投入する事に焦ったエドワードは、急いで去ろうとするダリオスに待ったを掛けた。


「 ダリオス!!落ち着いて考え直せ!!

ニコラ王よ!私は【 飛竜隊 】まで参戦するのは反対です!!

【 飛竜隊 】は現在国境付近の警備についております。

たかが街一つ……僅かな犠牲で事が足りるというのに、他国の侵入を許してしまうかもしれないという大きなリスクを抱えるおつもりですか?!

そんな事にでもなれば国の一大事!

国民全てを危険に晒すかもしれません!! 」


「 その通りです!!

一時の感情で国を滅ぼすおつもりですか?

ダリオス、貴方は低位貴族にしては賢き男だと私は評価していましたが、違った様ですね。

ここで動けば……後悔しますよ? 」


エドワードに続きカールまで、まるで脅す様に言ったが、それを遮る様に宙に突然現れたスクリーンから声が聞こえた。


《 ご心配には及びませんよ~。エドワード様にカール様。 》


ニコニコと気が抜ける様な笑顔でスクリーン上に現れたのは、諜報ギルド総長の< エルビス >だ。


「 ……エルビス。 」


眉を潜めてエドワードが呟くと、エルビスはニコニコ~!と満面の笑みを浮かべながら、苦々しい表情をしているカール達や他のエドワード派閥の者達を見回した。


《 皆様もどうかご安心を!

ドロティア帝国には勿論この事は耳に入っていますが、これを機に動くつもりはない様です。

何と言ってもかつて自国を壊滅寸前まで追い詰めた因縁の化け物ですからね~。

慎重にもなるでしょう。 》


「 なるほど……。呪い相手では、流石のドロティア帝国も警戒しているという事か。 」


私が納得した様子で呟くと、エルビスはその通り!と言わんばかりに頷いた。


《 敢えて危険を犯してまで攻撃するより、大量の兵士達が犠牲となって戦力が低下するのを待つ事にしたようですね~。

フフッ!そのためドロティア帝国は ” 聖令浄化 ” が終わり次第総攻撃するつもりで動いています。

おやおや、これはこのまま ” 聖令浄化 ” 使っちゃったら不味いですねぇ~?

呪いの蝶の次は人間がお相手だ。

これはもう ” 救世主様 ” が勝たないと沢山の人間達が犠牲になるでしょうね~。


まさに国を救うために降り立った神のお使い様! 》


エルビスはわざとらしく、お~いおいと泣き出し、ハンカチで涙を拭く。

そんなエルビスにフッと笑った後、沢山の犠牲に対し何とも思ってないであろうエドワード達を睨みつけた。


これは想定されていた未来の一つ。

ドロティア帝国は、これを機に一気に総攻撃を掛けてくるだろうと思っていた。

呪いの化け物によって大量の犠牲を出した後、まずは援軍を望めぬガンドレイド王国の侵略を開始し、忌まわしき歴史をなぞるように、無理やり奪ったガンドレイド王国の技術を使ってアルバード王国へ攻撃を仕掛けてくるはず。


そんな恐ろしい未来に顔色を悪くしている者達がいる中、エドワード達には焦りも恐怖もない。


誰が犠牲になろうがどうでもいいからだ。

自分の目的が叶えば。


私はそれが心底恐ろしいと思う。


恐怖を逃がす様に大きく息を吐き出すと、焦りが隠せなくなってきたエドワード達に今度は、滑稽さを感じフッと笑う。


誰が犠牲になっても良いが、ドロティア帝国の総攻撃はなんとしてでも防ぎたい。

そう考えている彼らとしては、一刻も早く ” 聖令浄化 ” を行い、戦力を削らない様にケリを付けたいはずだ。

そんな中で、スタンティン家を初めとする実力高き子爵家、そしてライロンド家の飛竜隊まで参戦し、万が一呪いにより全滅してしまえば自分たちを守る要塞が削られてしまう。

その事に、現在彼らは酷く焦っていると思われる。

そして、それを分かっているエルビスはそんな彼らを煽るように言った。


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