上 下
1,062 / 1,315
第三十二章

1047 戦えないのは?

しおりを挟む
( ニコラ )


「 ニコラ王よっ!!

そもそもなぜ真っ先に王を守るべき第二騎士団がグリモアにいるのですかっ!!

これは立派な職務怠慢ではありませんか!?

私は以前より第二騎士団は王族や貴族をないがしろにした行動が目立つと思っておりました。

この未曾有の大厄災、王宮も危険に晒される可能性だってあるというのに……。

今直ぐ呼び戻し、王宮の周りを固めましょう!! 」


その声にエドワードと周りのエドワード派閥の者達はハッ!我に帰り、その通りだと強く主張したが、私はそれを鼻で笑う。


「 何を言う。忘れたのか?

第二騎士団の全権限は私にはなく、アーサーにある。

彼らはアーサーの命に従い、今最も危険だと判断した戦地へと向かったのだ。

それの何処に問題があるのだ?  」


「 そういう問題ではありません!!

彼らが王族や貴族を軽く見ている事が問題なのですよ。

王族や貴族は真っ先に守らねばならぬ存在なのに、それを放って末端の平民達を助けに行く事事態が間違っているのです。

なぜ国のトップである王がそれに気づかぬのか……私には理解しかねます。 」


続いてエドワードが怒鳴る様にそう言うと、エドワードの周りを固める者達はヒソヒソと不満を口にし始めた。

それを耳にしながら、得意げな顔で私を見るエドワードを見てもう一度鼻で笑う。


「 ────なるほど?

つまりお前は現在お前の言う ” 正しい ” 対応をしている第一騎士団だけでは力不足であると……そう言いたいのだな? 」


「 ────────んなっ!!!!?? 」


予想外の反論にエドワードが言葉を失くすと、私は不満を漏らしていたエドワード派閥の者達を一瞬で見渡した。


「 そうであったか!それは気づかずにすまなかった。

第一騎士団は高い身分と実力を兼ね備えた ” 完璧 ” な者達で構成されている ” 完璧 ” な存在であると聞いていたのだが、どうやら ” 完璧ではない ” 第二騎士団がいなければ戦えないらしいな!!

しかし……王宮を満足に守れぬ者達に、果たして存在意味があるのだろうか?

どう思う?エドワードよ。 」


「 ………お、王宮の守りは我が第一騎士団にお任せを……。 」


悔しげに唇を噛みしめるエドワードと睨みつけてくるカール達。

そんな姿に失笑したのはエドワード派閥でない者達と────────エドワード派閥の一部の者達であった。


人数でいえば最多のエドワード派閥。

しかし実は全員が全員喜んでその派閥に入っているわけではない。


貴族社会、身分制度、家業や抱えている事業のため、家族のため────……従わざるを得ない者達も多い。

巨大な ” 悪 ” を憎めど、それに従うしかない者達を責めるわけにはいかない。


私はこの状況で怒りを隠しきれていないエドワードやカール達、そしてそんな彼らに心から賛同し支持する者達を睨む。


” 悪 ” を単体で裁く事は難しい。

その難しさを私はずっと感じている。


エドワード達から視線を外し、今度は動き出したスタンティン家やそれを支えし子爵達を見て、何かを言いたげな者達へと視線を移した。


恐らく罪悪の気持ちと心の奥底に隠した正義の心が痛くて堪らないのだろうと思う。

本当は今にも動き出したいと願っているのだろうが、動けば愛する家族も自身が守らなければならない領民達も全て犠牲にしなければならない。


そんな苦しい思いが伝わってきて、私は困った様に笑う。


確かに子供の頃は良かったかもしれんな。

父が国を治めていた時は、もう少し自由に動けたのに……。


自分とて簡単に選択できない不自由さを感じ、目線を僅かに下げると、突然またバタバタと騒がしい様子でここへ駆け込んできた者が。


どうやら遠くを見通す ” 遠見視 ” の能力を持っている情報収集班の男の様だ。

彼はハァハァと息を大きく乱しながら、入口付近で直ぐに跪く。


「 緊急で申し上げますっ!!!

伝言シャボンによって大量の情報がコチラに向かっていたため、急ぎ遠隔回収いたしました!! 」


「 何と……。一体どこからの情報か……

急ぎ確認せよ。 」


私の言葉を受けたその男は、スキルを発動し宙に小さな小窓を出現させた。



<情報師の資質>(ユニーク固有スキル)

< 囁きの窓 >

小さな多次元道路を作り、情報をそこから入手することができる空間系情報収集スキル

宙に窓を創り出し、そこから情報を手にすることができる


(発現条件)

 一定以上の魔力、魔力操作、情報処理能力、情報収集能力を持つこと

 一定回数以上情報を入手し、それが元で周りがアクションを起こす事


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?

バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。 嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。 そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど?? 異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート ) 途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m 名前はどうか気にしないで下さい・・

勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話

バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】 世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。 これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。 無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。 不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜

7ズ
BL
 異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。  攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。  そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。  しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。  彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。  どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。  ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。  異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。  果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──? ーーーーーーーーーーーー 狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛  

【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話

バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。  そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……?    完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公   世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m

奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。

拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ 親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。 え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか ※独自の世界線

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

処理中です...