1,044 / 1,315
第三十一章
1029 大事なモノはそこに
しおりを挟む
( カルパス )
「 以前我が主人の邸に、捨て駒の傭兵たちをけしかけただろう?
その時にお前の偵察用虫型モンスターとこいつをこっそり替えておいた。
約1年弱掛かったが、こいつがお前の内部を少しづつ食い荒らしてくれたお陰でもう身体の自由は……きかないだろう? 」
「 そ、そんな……馬鹿なっ……っ!!
そんな前から私の中に……そんな虫をっ……!?
だから最近私の虫たちの動きがおかしかったのかっ……! 」
動揺しながらレイナが後ずさろうとすると、後ろの方の足もボロボロと崩れ、そのままズド────ンッ!!と大きな音を立てながら地面に倒れてしまう。
「 ぐ…ぐぅぅぅ~っ!! 」
呻きながら私を憎々しげに睨むつけるレイナだったが、新たに自身の胸元から飛び出した< カメレオン・カブト >が持っている、赤いビー玉の様な玉を見て目を大きく見開いた。
「 あ……あ……っ…!!! 」
サァァァーーと顔から血の気が引き、それを凝視するレイナ。
その視線の中、その赤い玉は直ぐに私の手に渡され、私はそれをレイナに見せつける様に前に差し出した。
「 お前のそのスキルは人の身を捨てるモノだ。
だからその身体は最も力の溢れていた20代の姿で止まっているのだろう?
本体は虫の魂と同化し、この玉になってしまっているというわけだ。
これがなければその仮初の姿は保てない。
そうだろう? 」
「 か……返せっ返せっ返せっ────────!!!
それは私の……大事なっ────っモノだっ!!!
とっととその薄汚い手から離せぇぇぇぇぇ────────っ!!!! 」
最後の力を振り絞り、レイナは私の方へと足を伸ばしたが────
バキィィィ────ン………
私はそれをあっさり握りつぶす。
無惨にも砕け散ったその赤い玉は、砕け散りそのままサラサラと砂の様に崩れていった。
「 ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ────────────っ!!!!!!! 」
その瞬間、レイナの身体もその玉同様にサラサラと崩れていき、その痛みにレイナは叫びのたうち回ったが………最後にその場に残るのはレイナの上半身だけで、それすらも少しづつ崩れていく。
私はそんなレイナの姿を見て、今までの思い出が一瞬で頭の中を通り過ぎていった。
かつては同志としてお互い切磋琢磨してきた仲間が、欲望に負けてこんな最後を迎える事になった事。
まさにエルビスの言った通り、今の私の心にあるのは怒りも憎しみもなくただ ” 悲しい ” であった。
その感情に支配された私の顔は、現在どんな顔になっているかは知らないが、レイナは私を虚ろな目で見上げグッ……と顔を歪ませる。
「 ……ちっ…ちくしょ……う……。私は……あんたに……ま……けたの……??
い……一体何が……駄目だった……の……?
私の……何……が────っ…… 」
「 駄目……とは言わないさ。
お前の生き方も、きっと ” 人 ” の元々もっている気質の一つなんだろうと思う。
それは誰もが持つ欲望の一つだ。
だが────…… 」
パクパクと口を動かし続けるレイナを見下ろし、困った様に笑った。
「 それに従えば、最後はこうなる。
人はずっと頂点ではいられない。
” 寿命 ” という終わりがある限り、人を使って叶えてきた欲望は残酷な終わりをその者に与えるだろう。 」
「 く……そぉぉ……死にたく……な……い……。
何でも手に入る……最高の……世界から……消えたく……な……い……。
今までの……人生に後悔なんて……して……な……いっ。
役に立たない……ゴミ……を使って……幸せに……っ!クソ田舎じゃ……こんな幸せ……は……手に入らなかったっ!! 」
ゴボッ!!と大きく咳き込んだレイナは最後は大声で叫び、自身の正当性を語る。
それについて無言で返事を返すと、レイナは大きく息を吸い虚ろな目で、口をゆっくりと開いた。
「 …………でも……何故かしら……ね……?
今、私の頭の中……に浮かぶの……は……キラキラ光る……世界じゃ……ない……の。
クソ田舎……での……辛い日々……。
何もない……広いだけ……畑…………老いぼれ……た両親と、甘ったれ……妹と弟……それに────。 」
レイナの目からは小さな水滴が流れ落ち、それは地面に静かにポタッと落ちる。
「 ……優しい……だけ……が……取り柄……の…………トマ……ス…………。 」
それだけレイナは呟くと、目は光を失いそのまま二度と口を開く事はなかった。
私は防御を失った< 聖浄結石 >を手に取り、そのまま粉々に砕くと、物言わぬレイナの身体を見下ろし、眉を僅かに下げる。
・・
「 それはお前にとって最も大切だったモノがそこにあったからだろう。
この愚かな者め。 」
< 傭兵ギルド前 >
カルパス VS レイナ
カルパスの勝利
「 以前我が主人の邸に、捨て駒の傭兵たちをけしかけただろう?
その時にお前の偵察用虫型モンスターとこいつをこっそり替えておいた。
約1年弱掛かったが、こいつがお前の内部を少しづつ食い荒らしてくれたお陰でもう身体の自由は……きかないだろう? 」
「 そ、そんな……馬鹿なっ……っ!!
そんな前から私の中に……そんな虫をっ……!?
だから最近私の虫たちの動きがおかしかったのかっ……! 」
動揺しながらレイナが後ずさろうとすると、後ろの方の足もボロボロと崩れ、そのままズド────ンッ!!と大きな音を立てながら地面に倒れてしまう。
「 ぐ…ぐぅぅぅ~っ!! 」
呻きながら私を憎々しげに睨むつけるレイナだったが、新たに自身の胸元から飛び出した< カメレオン・カブト >が持っている、赤いビー玉の様な玉を見て目を大きく見開いた。
「 あ……あ……っ…!!! 」
サァァァーーと顔から血の気が引き、それを凝視するレイナ。
その視線の中、その赤い玉は直ぐに私の手に渡され、私はそれをレイナに見せつける様に前に差し出した。
「 お前のそのスキルは人の身を捨てるモノだ。
だからその身体は最も力の溢れていた20代の姿で止まっているのだろう?
本体は虫の魂と同化し、この玉になってしまっているというわけだ。
これがなければその仮初の姿は保てない。
そうだろう? 」
「 か……返せっ返せっ返せっ────────!!!
それは私の……大事なっ────っモノだっ!!!
とっととその薄汚い手から離せぇぇぇぇぇ────────っ!!!! 」
最後の力を振り絞り、レイナは私の方へと足を伸ばしたが────
バキィィィ────ン………
私はそれをあっさり握りつぶす。
無惨にも砕け散ったその赤い玉は、砕け散りそのままサラサラと砂の様に崩れていった。
「 ぎゃああああぁぁぁぁぁぁ────────────っ!!!!!!! 」
その瞬間、レイナの身体もその玉同様にサラサラと崩れていき、その痛みにレイナは叫びのたうち回ったが………最後にその場に残るのはレイナの上半身だけで、それすらも少しづつ崩れていく。
私はそんなレイナの姿を見て、今までの思い出が一瞬で頭の中を通り過ぎていった。
かつては同志としてお互い切磋琢磨してきた仲間が、欲望に負けてこんな最後を迎える事になった事。
まさにエルビスの言った通り、今の私の心にあるのは怒りも憎しみもなくただ ” 悲しい ” であった。
その感情に支配された私の顔は、現在どんな顔になっているかは知らないが、レイナは私を虚ろな目で見上げグッ……と顔を歪ませる。
「 ……ちっ…ちくしょ……う……。私は……あんたに……ま……けたの……??
い……一体何が……駄目だった……の……?
私の……何……が────っ…… 」
「 駄目……とは言わないさ。
お前の生き方も、きっと ” 人 ” の元々もっている気質の一つなんだろうと思う。
それは誰もが持つ欲望の一つだ。
だが────…… 」
パクパクと口を動かし続けるレイナを見下ろし、困った様に笑った。
「 それに従えば、最後はこうなる。
人はずっと頂点ではいられない。
” 寿命 ” という終わりがある限り、人を使って叶えてきた欲望は残酷な終わりをその者に与えるだろう。 」
「 く……そぉぉ……死にたく……な……い……。
何でも手に入る……最高の……世界から……消えたく……な……い……。
今までの……人生に後悔なんて……して……な……いっ。
役に立たない……ゴミ……を使って……幸せに……っ!クソ田舎じゃ……こんな幸せ……は……手に入らなかったっ!! 」
ゴボッ!!と大きく咳き込んだレイナは最後は大声で叫び、自身の正当性を語る。
それについて無言で返事を返すと、レイナは大きく息を吸い虚ろな目で、口をゆっくりと開いた。
「 …………でも……何故かしら……ね……?
今、私の頭の中……に浮かぶの……は……キラキラ光る……世界じゃ……ない……の。
クソ田舎……での……辛い日々……。
何もない……広いだけ……畑…………老いぼれ……た両親と、甘ったれ……妹と弟……それに────。 」
レイナの目からは小さな水滴が流れ落ち、それは地面に静かにポタッと落ちる。
「 ……優しい……だけ……が……取り柄……の…………トマ……ス…………。 」
それだけレイナは呟くと、目は光を失いそのまま二度と口を開く事はなかった。
私は防御を失った< 聖浄結石 >を手に取り、そのまま粉々に砕くと、物言わぬレイナの身体を見下ろし、眉を僅かに下げる。
・・
「 それはお前にとって最も大切だったモノがそこにあったからだろう。
この愚かな者め。 」
< 傭兵ギルド前 >
カルパス VS レイナ
カルパスの勝利
192
お気に入りに追加
1,993
あなたにおすすめの小説
聖女召喚!……って俺、男〜しかも兵士なんだけど?
バナナ男さん
BL
主人公の現在暮らす世界は化け物に蹂躙された地獄の様な世界であった。
嘘か誠かむかしむかしのお話、世界中を黒い雲が覆い赤い雨が降って生物を化け物に変えたのだとか。
そんな世界で兵士として暮らす大樹は突然見知らぬ場所に召喚され「 世界を救って下さい、聖女様 」と言われるが、俺男〜しかも兵士なんだけど??
異世界の王子様( 最初結構なクズ、後に溺愛、執着 )✕ 強化された平凡兵士( ノンケ、チート )
途中少々無理やり的な表現ありなので注意して下さいませm(。≧Д≦。)m
名前はどうか気にしないで下さい・・
勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん< 山野 石郎 >改め【 イシ 】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中・・俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない< 覗く >という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【 完結 】お嫁取りに行ったのにキラキラ幼馴染にお嫁に取られちゃった俺のお話
バナナ男さん
BL
剣や魔法、モンスターが存在する《 女神様の箱庭 》と呼ばれる世界の中、主人公の< チリル >は、最弱と呼べる男だった。 そんな力なき者には厳しいこの世界では【 嫁取り 】という儀式がある。 そこで男たちはお嫁さんを貰う事ができるのだが……その儀式は非常に過酷なモノ。死人だって出ることもある。 しかし、どうしてもお嫁が欲しいチリルは参加を決めるが、同時にキラキラ幼馴染も参加して……? 完全無欠の美形幼馴染 ✕ 最弱主人公 世界観が独特で、男性にかなり厳しい世界、一夫多妻、卵で人類が産まれるなどなどのぶっ飛び設定がありますのでご注意してくださいm(__)m
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる
風見鶏ーKazamidoriー
BL
秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。
ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。
※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる