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第三十一章

1020 そう上手くはいかないぞ

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( カルパス )

「 レイナ、実は昔から思っていたのだが、お前はよく私に ” 見下す ” や ” 勝とうとしている ” と言ってくるが、それは一体何だ? 」


「 は?そんなの当たり前の事でしょ?

実力ある私はあんたにとって最大の邪魔者なんだから。

なんといってもカール様やマリナ様に認められている私は世間的にも格上。

だからなんとかしてこの私に勝ちたい、見下して気持ちよくなりたい。

それって人間として当たり前の感情じゃない。

ま、私からしたら不甲斐ない自分を恨めば~って感じだけど。 」


フッ……と見下す様な笑みを漏らすレイナに対し、私は非常に納得する。


「 ほぉ……?なるほど……そうなのか…。

────ふっ……ふふふっ……それは、なんとも……。 」


思わず笑いを堪えきれずに笑う私をレイナは睨んできた。


「 ……何?悔しくて壊れちゃったの? 」


「 ふ……ふふっ。いや、昔から随分と執着してくるなと思っていたが、そういう事か。


────ではレイナ、一つ訂正しておこう。

私はお前に実力があろうとなかろうとどうでもいい。

なぜならそれによって私の存在は何一つ変わりはしないからだ。 」


「 ……はっ??? 」


言っている意味が分からないと言わんばかりに目を見開くレイナに、私は一つ一つ丁寧に説明し始める。


「 己を高める努力をせずに歩みを止めた者達がそのプライドを守るために行う行為。

それが他者との ” 比較 ” と ” 蹴落とし ” だ。

少しでも人より優れている事を見つけて誰かを見下し優越感を、そして前に進む者達に嫉妬し蹴落としては安堵する。

それをした所で自分の立ち位置など変わりはしないのに、ご苦労な事だ。 」


「 な……っ!!! 」


レイナは徐々に不思議そうな顔から怒りへと顔を変えていくが、私はハッキリと告げるため、スッと静かにレイナを指さした。


「 つまりだ。

私に ” 勝った ” ” 負けた ” ” 見下す ” などと言っている時点で、お前の足はとっくの昔に止まっているんだ。

私と何を比べようとも、もう私達は同じ土俵にすらいない。

だからもう無駄な事はやめるんだな。 」


「 は?は?はぁぁぁぁぁ────────???!! 」


レイナは大激怒し、まるで悪夢の様な恐ろしい顔で私を睨みつける。

そして────


「 ふっ、ふざけるなぁぁぁぁ────っ!!!! 」


大声で怒鳴ってきたかと思えば、突然自身の胸の穴に手を突っ込み、そこから何かのスイッチの様なモノを取り出した。


「 黙って聞いていれば人を馬鹿にしやがってっ!!

────もう頭に来たわ。

これから楽しいショーを見せてやるから有り難く思いなさい。 」


レイナの手に握られているスイッチ……。

あれは────……?


私が慎重にそれを見つめていると、レイナは私の様子を見てニヤリと笑う。


「 ふふっ。これはモンスターを誘導するため各方面に仕込んでおいた< 魔引力珠 >を一斉に作動させるためのスイッチなの。

これを作動させれば感覚が鋭い一部のモンスター達が各方面に向かって行進し始めるわ。

もう少しモンスター達が増えてから向かわせる予定だったんだけど……ま、いっか~♡

グリモアは完全防衛体制だからいいけど、他の周辺の街はどうかしらね~?♡

フフッ!カルパスがこの私の気分を害したせいでた~くさんの関係ない人達が御臨終~。


は~い!さようなら~♡ 」


「 ………。 」


レイナは笑いながら見せつけるようにボタンを押す。

そしてニヤニヤと三日月の様な目で私を見たが、私は無言で返した。


「 あらぁぁ~?

正義のヒーローカルパス様は、罪なき人々が自分のせいで命を落とすというのに、随分落ち着いていらっしゃるのねぇ~? 」


「 レイナ……。 」


私は怒りも憎しみもなく、ただ悲しい思いでレイナを見返し、そのまま笑い続けるレイナを見つめる。


「 ……お前は本当に変わったよ。

私はお前の様な人間を見ると、人の欲というモノに心底恐怖を感じてしまう。 」


「 フフッ!そうよぉ~?私は変わったの!

過去の汚らしい醜いイモムシから、こ~んなに美しく価値がある蝶の様な女に。

これが私、レイナの本当の姿。 」


レイナは嬉しそうにクルクルとその場で回ると、宙に中継映像体のスクリーンが複数出現し、それぞれの各所の場所を映し出す。


それには一部のモンスター達が、大群となってグリモアではない方向に向かって行進し始めた映像が映し出されていた。


「 あ──はっはっ!!どの街に到達するのが早いかしらねぇ~?

ここから一番早い街だと10分かからないんじゃない?

フッ……フッフッ!!や~っとあんたのすまし顔を崩せる時が来た!

その顔、昔からだ~~いきらいだったの!! 」


顔を大きく崩して笑うレイナに、私は呆れてため息をつくと、レイナ曰くムカつくお澄まし顔とやらを浮かべる。


「 ……はぁ。期待するのは勝手だが、そう上手くお前の思い通りにはいかないぞ。

なにせ我がリーフ邸の従業員達は優秀だからな。 」

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