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第三十章

1017 No.1対決

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( レイナ )


” 犯罪奴隷 ” 

その言葉に大きなショックを受け、一瞬目の前が真っ白になった。

私の今まで築き上げてきた ” 幸せ ” がガラガラと崩れていく。


「 そ……そんな……馬鹿なっ……!! 」


────────────嘘だ嘘だ嘘だっ!!!

こんな事、あり得ないっ!!!


今まで手にしてきた栄光が、頭の中で完膚なきまでに壊されるのを感じながら、私はとにかくどうやってこの場を切り抜けようかと必死に考えた。


そして瞬時に答えを出した私は、カルパスに視線を合わせ、ニヤリと笑う。


ひとまずカルパスを殺す。

そしてその後はメルンブルク家に逃げ込み、どうにかこの件をもみ消して貰うしかない。


そう思った私はスキルを発動しようと右手をピクリと動かした、その時────


「 ぎ、ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁ────────っ!!!!! 」


突然自身の左目に激痛を感じ、悲鳴を上げながら押さえると、そこからは大量の血が流れていた。


な、何が……!?


慌てて周りを見回すと、私の影から音もなく< ダーツ・エアー >が大量に飛び出し、私を狙っていた事に気づく。



< ダーツ・エアー >

鋭くダーツの様な口を持つ体長10cm程の小鳥型Fランクモンスター

物陰から飛び出してくるスピードは早く、一撃必殺型のハイスピード体当たりが非常に厄介だが、花の蜜が主食で近づきすぎなければ攻撃してくる事はないので、そこまで脅威的ではない



「 く……クソがぁぁぁぁぁ────────っ!!!! 」


すっかり油断していた!!

激痛に叫びながらカルパスを睨みつけたが、相変わらず憎たらしい余裕顔。

どうにかしなければ!!

そう思っているのに、攻撃された目の痛みで判断能力がどんどん低下していく。


どうする!?

どうする!!?

どうすればいい!!?


ほとんどパニックになりながら、自分を囲んでいる< ダーツ・エアー >達を睨みつけていると、突然黒いモヤの様なモノが現れ、私の体を包みこんでいった。


これもカルパスのスキル……!!?


ギョッと目を見開き、直ぐに脱出しようとしたが……眼の前で黒く薄れていく視界にボンヤリとカルパスの驚く様な表情が見えたので、どうやらヤツの能力ではない様だ。


一体これは何??


警戒を解かずにそう思っていると、一瞬で周りは真っ暗闇に。

そして突然目の前に光る一本道が現れた。


これが何なのかは分からない。

しかし助かる可能性が少しでもあるならば、私はそれにしがみついてやるっ!!


覚悟を決めた私はその光る道に沿って走り出した。


そのままひたすら走り続けると、やがて出口らしき光る扉が現れたのでそこへ飛び込む。

すると、たどり着いたのはどこかの部屋の様で、眼の前には黒光りする机と後ろを向いた椅子の長い背もたれが。

そして周りは本がぎっしり詰まった本棚と、一昔前に流行った様なゆったり目の音楽が流れている魔道具が設置されていた。


作り的には各ギルドのギルド長室に似ている……。


そんな事を思いながらこちらに背を向けたまま椅子に座っている人物を睨みつけた。


「 ────で?貴方が私を助けてくれた人……であってる? 」


そう問うと、足に小さな車輪がついていた椅子はそのままクルリッと回って私の方を向く。

そこに座っていたのは随分とボンヤリした感じのメガネを掛けた男で、そいつは私を見てニコリと笑った。


「 やぁ、はじめましてレイナ。

私は一応これでも【 暗殺ギルド 】の総長をやらせてもらっている< ルノマンド >だ。

エドワード様の命令で君を助けたんだが……やはりエルビスは手強いな。

それにカルパスという男も随分と厄介な奴の様だ。

ギリギリ助けが間に合って良かったよ。 」


「 < ルノマンド >……?

貴方がシークレット情報の暗殺ギルド総長……? 」


【 暗殺ギルド 】はその特殊性故に、中々情報が入らない機関であり、その総括者ともあればその情報はシークレットレベル。

まさかこんな普通の男がそのトップだったとは……。


一瞬ポカンと見つめてしまったが、左目に走る激痛を思い出し、思わずうめき声を上げると、一瞬でその驚きはカルパスへの激しい怒りと憎しみに塗りつぶされてしまった。


「 ────クッソぉぉぉっ!!!!カルパスっ!!!

あのクソ野郎っ!!!

こんなはずじゃ……こんなはずじゃあなかったのにっ!!! 」


叫ぶ私に対し、ルノマンドはニコニコと笑いながらパチンッと指を弾くと、外の扉から二人程の医術師らしき女が入ってきて私の左目の治療を始める。

その様子をルノマンドは静かに見つめた。


「 まずはその怪我を治し、仕切り直すといい。

そして当分はこの【 暗殺ギルド 】が君の隠れ宿になる。

ここは身を隠すなら一番最適な場所だ。

その後の働きに期待しているよ。

ようこそ、レイナ。 」


そのまま拍手をするルノマンドを睨み、大きな舌打ちをすると、私は自分をここまで陥れたカルパスやエルビス、そして自分の過去達全てを恨む。

そして濁ってしまった世界を、またあの光り輝く世界に戻すため、私は復讐の道へと大きく一歩踏み出したのだ。




私はそんな屈辱的な過去の記憶を思い出し、眼帯の上からかつてカルパスに奪われた左目を擦る。

そして最大の憎き敵であるカルパスを睨みつけて、ニヤッ~と笑った。


「 あんたにやられたこの左目のお礼、今この場で返してやるわ。

毎回毎回邪魔してきやがって、本当に目障りなクソ野郎ね。

今回もどこで嗅ぎつけたんだか。

目的はコレでしょ?


でも、ざ~んねん!コレ、私を倒さないと壊せないわよ。 」


窓枠に置いてあった< 聖浄結石 >を、私の虫が即座に持ってきて、私の手の上にポンッと乗せてくる。

それを見てカルパスはピクリと目元を動かした。


「 石の周りについている黄色い膜……まさか< 孤情虫の卵膜 >か。 」



< 孤情虫 >

体長20cm程の細いミミズ型Gランクモンスター

ヌルヌルした外皮を持ち、自分に危険が迫ると粘液を使って攻撃してくるため、商品を運搬中の商人にとって天敵とも言える害虫モンスターの一匹

繁殖の仕方は自己分裂型の卵を出産するが、その際特殊な卵膜で卵を包み込む

自身の命が尽きるまでその卵膜は破る事ができない



「 御名答~♡

この膜は親虫が死ぬまで壊れない。

つまり< 聖浄結石 >を壊したいなら私を殺すしかないってわけ。

まぁ、できたらの話だけど────ねっ!! 」


私は一瞬でカルパスの間合いに入り、その身体に回し蹴りを食らわしてやると、生意気にも両手でガードしたカルパスだったが、その勢いのまま窓の外に吹き飛んでいった。


────パリィィ──ンッ!!


窓が壊れガラスが周囲に飛び散るとカルパスはそのまま建物の外へ落ちていく。

それを見て私は声を出して笑った。


「 私こそがNO・1。

今度こそそれを証明してやる。


ぶっ殺してやるよ、カルパスっ!!! 」




( 傭兵ギルド前 )


レイナ VS カルパス



────────開戦

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