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第三十章

1016 ハッキリと見たらしい

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( レイナ )

「 私はその時点でもう君は駄目だと判断したが、最大の被害者であるトマスが君を庇ったんだ。

” レイナのせいではない。自分が嫌がるレイナにしつこく迫ったからだ ” ────とな。


それから彼は口を閉ざしたまま故郷に帰り、その後は同じく家族を失った女性と家族になったよ。

今は生まれた子供達と君の弟、妹達と共に幸せに暮らしている。 」


「 ────あっそ。そんなどうでもいいこと言わなくて結構よ。 」


トマスが生きていたのは最大の失敗であったが、あの偽善者は私の事は言わないでいたらしい。

なんて優しくて────……






馬鹿な男♡




心の中でほくそ笑んでいたが、じゃあどこから情報が漏れたのか、そしてどいつを消せば今回の事をもみ消せるか考えていると、カルパスはいつの間にか視線を上げてまた私を真っ直ぐ見ていた。


「 そうしてその後も誰にもその事を言わずにいたトマスだったが────突然彼にあるスキルが発現したそうだ。

それが非常に貴重なスキルである事を知った彼は、意を決して ” 君に殺されそうになった事 ” と ” 今回の事件の事 ” を我々諜報ギルドにリークしてきた。

それからずっと君は私に張られていたというわけだな。 」


「 ────っなっ……なんですってぇぇぇ────っ!!! 」


あんなゴミみたいな男に、何故私の計画がバレたのか?!!

本気でわからずワナワナと震える私に、カルパスはあっさりとその答えを教えてきた。


「 【 予知夢の一夜 】

どうやら命の危機に晒されそれを回避した回数だけ、自分の危険予知夢を見ることのできるとても稀有なスキルだった様だな。

彼はハッキリと夢でみたそうだ。

君が盗賊達を操り、家族や故郷の人々を全員殺す夢を。 」


「 そ…そんな事が……。 」



< 眠り人の資質 >( シークレットユニークスキル )

< 予知夢の一夜 >

自分に死の危険が迫った未来を、夢という形で見ることのできる特殊予知スキル

ただし自分が九死に一生を得た回数分だけしか発動する事ができない


( 発現条件 )

先天スキル< 眠り人の死眠フィールド >を発動済である事

一定以下の精神汚染度、ステータス値である事

死にかけた経験をする事



あの目障りなゴミ男めぇぇっ!!!


今まで何一つ役に立つ様なスキルを一つも発現した事がなかったトマスに、そんなスキルが隠れていたとは……完全に誤算であった。

私の中には激しい怒りと憎しみが溢れ出し、それは全て手短にいる目の前のカルパスに向く。


メルンブルク家の真のパートナーであるこの私が、気持ち悪い正義感で人生を棒に振る様な男にしてやられた。


それは耐え難い憎しみと怒りを天井知らずに生み出していく。


プライドをズタズタにされた私は立ち上がり、その激しい怒りのまま近くにあった花瓶をカルパスに思い切り投げつけた。


「 こそこそと人の周りを嗅ぎ回ってんじゃねぇよっ!!!気持ち悪い陰湿野郎がっ!!!

これで勝ったつもり?……ふっざけんなよ。

私はアンタのように落ちぶれた負け犬なんかじゃなく選ばれた人間なの。

掃いて捨てるほどいる下層の人間を始末して何が悪いの?! 」


投げつけた花瓶はカルパスにあっさり避けられ、そのまま背後の壁に激突し木っ端微塵になる。

その破片が光に照らされキラキラと輝くのを見ながら、私はやはり自分は間違っていないと考えそのままフッと笑った。


「 あんなクソみたいな生活を ” 幸せ ” だなんて言う ” 不幸 ” なゴミを始末する事は、世界の淘汰を手伝っているって事でしょう?

いらない存在なんて世界中にゴロゴロいる。

” 幸せ ” のために邪魔なモノを消し去って何が悪いっていうのよ。 」


カルパスは私の話を最後まで聞きながら、表情を変える事なく私を正面から見つめる。

その視線がまたうっとおしくて、あ~あ!と心底めんどくさそうに言いながら顔を逸らしてやると、カルパスはゆっくり話し始めた。


「 何故今、このタイミングでお前の悪事がバレたのか分かるか? 」


「 まだくだらないお喋りが続くの?────うざっ。

どうせエルビスが無能で私が優秀だったからでしょ。

ちょっと今回は予想外の事が続いてたまたまこうなったけど、私の仕事はいつも完璧だもの。 」


馬鹿にしたようにそう言うと、カルパスはフゥ……と呆れた様にため息をつく。


「 何とも傲慢でおめでたい頭だな。

エルビスは最初から全て知っていてお前を見張っていたというのに……。

お前が今まで始末してきた人間は全て ” エルビス ” だ。

そんな事にも気づかなかったのか? 」


「 ……はっ??? 」


今まで始末してきた者達のおぼろげな記憶を思い出したが、そんなはずはない。

完璧にリサーチした上で事に及んだのだから。


あり得ない……嘘……。


ブツブツと呟きながら、必死に思い出していると、カルパスは憐れみを込めた目で私を見つめた。


「 エルビスは最後まで君を信じたかったんだ。

だからギリギリまで見張る事にしたのだろう。


しかし……今回の事でもう駄目だと判断を下した。

表向きに与えられるはずであった諜報ギルド副総長の座は返上。

そしてその身分は犯罪奴隷となり財産も全て没収される事になったよ。


────残念だ。 」

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