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第三十章

991 やってられない

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ここからグロ注意です~m(__)m


( 冒険者の男 )

「 て、てめぇっ!!アイツに何しやがったっ!!!

何かの攻撃系スキルか??!

いつそいつの腕を斬りやがったんだよ!! 」


「 お、おい!こいつの腕の切り口、どうもおかしくねぇか?

まるで引きちぎられた様にズタズタだ……。

それに……こいつの腕、どこにいった?? 」


痛みに暴れるそいつの腕を冷静に観察したらしい仲間がそう言うと、全員がハッ!として訝しげな目をヨセフ司教へ向ける。

ヨセフ司教はそれを余裕そうに見返し、困った様にゆるく首を振った。


「 嫌ですねぇ、攻撃スキルなんてモノを持っているわけないじゃないですか~。

私、Gランクモンスターにも負けちゃう最弱司教ですよ?

戦闘のプロ相手に腕を切るだなんてそんな事、とてもとても…… 」


ヨセフ司教はわざとらしく顔を手で覆い、ヨヨヨ……と泣き崩れたが、俺はダンッ!!と思い切り足踏みをして大地を揺らす。


「 ふざけんじゃねぇぞっ!!

じゃあ何でこいつの腕がねぇんだよっ!!?

てめぇが何かしたに決まってんじゃねぇかっ!ぶっ殺してやるっ!! 」


剣を強く握りそのまま叩き切ってやろうとしたが、ヨセフ司教はパッ……と手を顔から外しニコニコと満開の笑顔を見せてきたので、ゾッとして一旦動きを止めた。

他の仲間達もいい知れぬ気味の悪さを感じたらしく一旦動きを止めたが、奴はマイペースに今度はう~ん?と考え込む様な仕草を見せる。


「 いえいえ~本当に私、腕なんて切ってないですよ?

う~む……強いて言うならば沈みゆく事が分かった船の乗客と一緒……なのではないでしょうか?
・・
彼らは貴方達に日々酷使されしたくもないお仕事をさせられて、多分ウンザリしているでしょうから。

更にもうすぐ一緒に沈まないといけないなんて、そりゃ~逃げ出すのも無理はないのでは? 」


「 はぁ??てめぇ、何を言って──── 」


わざとらしく嘆き悲しむヨセフ司教に我慢ならなくなったのか、仲間の一人が奴に詰め寄ろうと前に出たが、次の瞬間────自らの悲鳴によって言葉がブツッ!と途切れてしまった。


「 いてぇぇぇぇっ────!!!!

いてぇ!いてぇ!!いてえよぉぉぉ────!!!!

ぎゃあああぁぁぁぁぁ!!!!! 」


尋常ではないその苦しみっぷり。

そいつは左目あたりを抑えて身を捩り、ピクピクと痙攣までし始めた。


何が起きたのか分からない俺達は青ざめながら「 おいっ!!何があった!? 」「 左目がどうしたんだだよっ!! 」と恐怖を払うかの様に大声で怒鳴る。

すると悲鳴をあげている男が、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で俺達の方を振り返り………


「 なぁ……俺の目ぇぇ……どうなってる? 」


そう言いながら左目を押さえてる手をパッ………と外したが────俺達はそこに広がる光景に血の気が引いて息を飲んだ。


そいつの目はあり得ない程外に飛び出していて、既に半分以上飛び出ている左目にはよく見ると小さな二本の手が生えていた。

そしてその手で一生懸命そいつの左眼窩から出ようと、必死に藻掻いているようであった。


よいしょっ……よいしょっ……。

どっこいしょ~………。


そんな言葉が聞こえてくる様なその動きに俺達は黙って震えたが、当の本人であるその男は、左目が動く度に神経に直に痛みが走るらしく、また大声で叫びだした。


誰もが動けずその恐ろしい光景を眺めていると、やがてもう8割型飛び出してしまった目から、ニュニュ~と小さな口が伸びてくる。


『 あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”~~~……… 』


その口からはゾッとする様なガラガラ声が聞こえ、更にそのままペラペラと喋りだした。


『 あ”あ”~やってられねぇよぉぉぉ~……やってられねぇよなぁぁ~!!

なぁぁぁ~んで、俺がこんな奴が勝手にやったツケを一緒に払わないといけねぇんだよぉぉ?

毎回毎回見たくもねぇ拷問みたいな映像を見せられて、あげく一緒にあの世行き。

ふっざけんなよなぁぁぁ~!! 』


怒りを含んだその言葉に震え、そいつはわざと男を苦しめようと、エイッ!エイッ!をその身を左右に振る。

それにその男が痛みに悲鳴を上げると、多少気が済んだらしく、カラカラと笑いながら続けて言った。


『 こいつさぁ~女寝取るのが大好きで、よく仲睦まじい恋人同士を攫って男の眼の前で女を無理やりやんの。

────で、結局女殺して、その後は男に突っ込んで遊ぶんだぜ~?

そんなの見たくねぇっつ──の!

しかも ” あへぇぇぇ~ ” とか間抜けな声も上げんだぜ、キモッ!!

もう、毎回ゲロ吐きそう!────まぁ、俺 "  目  "  だから吐けないけどねぇ~! 』


不満をたらふくぶちまけたその左目はとうとう……


────────ブチブチブチ~~ッ!!!


何かを引きちぎる様な嫌な音を立てて男の眼窩から飛び出ると、大絶叫して地面を転がりまわる男には目もくれず、また生えてきた二本の足でペタペタと去って行った。

それをガタガタ震えながら見ていた俺と仲間たちであったが、突然────

「 ぎぃっ………ぎ…ぎいやぁぁぁぁ────!!!! 」

「 ぎゃぁぁぁぁ────っ!!!! 」

まるで伝染していく様に悲鳴が上がりだし、左目を失くした男同様、体の一部分を抑えて絶叫し始める。



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