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第二十九章
970 世界の受け皿
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( レンジュ )
「 そんなヨセフ司教が弱い事は今はどうでもいいです。
それより……何でソフィア様が戦う事になっているんですか?!
一応司教なのですから、事の重大さ、分かってますよね?! 」
ズイズイッ!!と迫る私を避ける様に、背中をしならせるヨセフ司教。
ヨセフ司教は「 あ───…… 」「 う────…… 」などと言い訳を考えている子供の様な動作を見せたが、最後は────────
「 やっちゃいました♡ 」
顎に手を当て、目をキラキラさせながらそう言った……。
それには全員が脱力してしまい、ガックリと肩を落とす。
「 聖女様の御心のままに。
そして聖女様は神の御心のままに……って事か。 」
ため息混じりにそう言うと、ヨセフ司教はフフッと笑った。
「 その通りで~す。
私もレンジュ達もこのまま自身の ” 正義 ” と ” 平等 ” のためにと、安らかな終わりを迎えるはずでしたのにね。
どうやら神はそれを許してくれないようだ。
神が我々に望むのは ” 足掻くこと ”
そして ” ハッピーエンドにすること ” らしいです。
これは随分と大変な事になってしまいましたね! 」
周りにいる街の人達や、まるでお祭りの様な騒ぎになっている避難所の方へ順番に視線を移し、ニッコリ笑うヨセフ司教。
私はとうとう抑えきれなくなった感情を両腕に抱える様に、自身の身体を抱きしめ身体を丸めると、リーン達が心配してくれてオロオロしだす。
しかし次の瞬間、バッッ!!!と空に顔を向けて大声で笑い出した。
「 アッハッハッハッ────────ッ!!!
全くっ!簡単に言ってくれるじゃないか!
神は我々に楽に終わるなと……そう言っているのか!
──────全てを受け入れ、やっとの思いで決意したというのにっ……!
両親にはお別れの手紙まで書いて送ったんだぞ?
なのに────……っそんなモノは捨てて ” 足掻いて ” ” ハッピーエンドにしろ ” だなんて、なんて情け容赦ない神様なんだ。 」
感極まってポロッと流れそうになった涙を必死に止め、組んだ手を額につけると「 ……神よ・・っ! 」と祈りを捧げる。
すると他の神官達もそれぞれ想うことがあったのか、同じ様に祈り始め、グスグスと鼻を鳴らす音まで聞こえてきた。
そんな私達をヨセフ司教は黙って見つめ、そのままポツリポツリと話し出す。
「 未来のためにと一度は決意したんですけどねぇ?
それが最善であり、それしか方法はなかったもんですから……。
ですが、我らが偉大なるイシュル神様はそれでは不服なんだそうですよ。
なら我々がすべきことは一つ。
我々──── 」
「 ……イシュル教会は──────── 」
ヨセフ司教は私達同様に祈りのポーズを取りながら言葉を口にすると、私がそれに続いて言葉を紡き、そしてまるで一本の線で繋がっていく様に神官達の口から口へとどんどん伝わっていく。
「 その者がどんな身分であろうとも──── 」
「 どの様な性を持とうとも──── 」
「 貧しくとも、裕福でも 」「 実力があろうともなかろうとも 」
「 平等に愛を与え救いましょう。 」
「「「「 ” 平等 ” こそがこの世界の真理である 」」」」
気がつけば、その場の人達は全員が祈る様に手を組み、同じ言葉を口にしていた。
” 教会は世界の受け皿である ”
以前ヨセフ司教に教えられた言葉だ。
人は生まれた瞬間から、周りが形成する価値観に当て嵌められてそこを中心として生きていく。
王族であれば王族の。
貴族であれば貴族の。
平民であれば平民の。
下民であれば下民の。
そこがスタート地点であり、自由なはずの個人という存在に初めての抑制が掛かる。
その後は自分の能力を磨きながら、沢山の価値観に邪魔をされつつそれぞれの居場所を探すわけだが…………全員がその居場所を上手く見つけられるわけではない。
生まれ持った性質と才能が合わない者。
自分の才能が見つからない者。
努力の仕方が分からなくて苦しむ者。
頑張っても頑張っても空回りしてしまう者。
居場所が見つからず、自分が否定される場所で苦しみながら生きている人々にとって、教会は最後の砦だ。
世の全てのモノは ” 平等 ” である
その信念の元、教会はそれぞれに合った生き方をしていく事を目指し万人を受け入れる。
そして我々教会で働く者達は、その ” 平等 ” に救われ、自分たちなりの ” 平等の正義 ” を貫こうとする者達だ。
ヨセフ司教は祈る我々神官たちと街の人達を見回し、嬉しそうに笑いながら懐から青いひし形の結晶体を取り出した。
< 魔道路ポインター >だ。
< 魔道路ポインター >
ダンジョンに潜る際に使う< セーブポインター >と原理は同じ魔道具だが、それよりも大型のモノで、誰でも通れる多次元の魔道路を創り出す特殊系大型魔道具
本体は青いひし形の結晶体の形をしている
繋ぎたい場所に予め< 魔道路の欠片 >と呼ばれる小さな青い結晶の欠片を設置し、チャージされたこの魔道具を作動させる事で一瞬で移動できる魔道路を創る事ができる
大きい街には大型戦闘時に使う想定で、既にこの欠片が各所に設置されている
ただし使用するにはかなりのチャージ魔力が必要であるため実際に使用されるのは大型戦闘時のみ
「 そんなヨセフ司教が弱い事は今はどうでもいいです。
それより……何でソフィア様が戦う事になっているんですか?!
一応司教なのですから、事の重大さ、分かってますよね?! 」
ズイズイッ!!と迫る私を避ける様に、背中をしならせるヨセフ司教。
ヨセフ司教は「 あ───…… 」「 う────…… 」などと言い訳を考えている子供の様な動作を見せたが、最後は────────
「 やっちゃいました♡ 」
顎に手を当て、目をキラキラさせながらそう言った……。
それには全員が脱力してしまい、ガックリと肩を落とす。
「 聖女様の御心のままに。
そして聖女様は神の御心のままに……って事か。 」
ため息混じりにそう言うと、ヨセフ司教はフフッと笑った。
「 その通りで~す。
私もレンジュ達もこのまま自身の ” 正義 ” と ” 平等 ” のためにと、安らかな終わりを迎えるはずでしたのにね。
どうやら神はそれを許してくれないようだ。
神が我々に望むのは ” 足掻くこと ”
そして ” ハッピーエンドにすること ” らしいです。
これは随分と大変な事になってしまいましたね! 」
周りにいる街の人達や、まるでお祭りの様な騒ぎになっている避難所の方へ順番に視線を移し、ニッコリ笑うヨセフ司教。
私はとうとう抑えきれなくなった感情を両腕に抱える様に、自身の身体を抱きしめ身体を丸めると、リーン達が心配してくれてオロオロしだす。
しかし次の瞬間、バッッ!!!と空に顔を向けて大声で笑い出した。
「 アッハッハッハッ────────ッ!!!
全くっ!簡単に言ってくれるじゃないか!
神は我々に楽に終わるなと……そう言っているのか!
──────全てを受け入れ、やっとの思いで決意したというのにっ……!
両親にはお別れの手紙まで書いて送ったんだぞ?
なのに────……っそんなモノは捨てて ” 足掻いて ” ” ハッピーエンドにしろ ” だなんて、なんて情け容赦ない神様なんだ。 」
感極まってポロッと流れそうになった涙を必死に止め、組んだ手を額につけると「 ……神よ・・っ! 」と祈りを捧げる。
すると他の神官達もそれぞれ想うことがあったのか、同じ様に祈り始め、グスグスと鼻を鳴らす音まで聞こえてきた。
そんな私達をヨセフ司教は黙って見つめ、そのままポツリポツリと話し出す。
「 未来のためにと一度は決意したんですけどねぇ?
それが最善であり、それしか方法はなかったもんですから……。
ですが、我らが偉大なるイシュル神様はそれでは不服なんだそうですよ。
なら我々がすべきことは一つ。
我々──── 」
「 ……イシュル教会は──────── 」
ヨセフ司教は私達同様に祈りのポーズを取りながら言葉を口にすると、私がそれに続いて言葉を紡き、そしてまるで一本の線で繋がっていく様に神官達の口から口へとどんどん伝わっていく。
「 その者がどんな身分であろうとも──── 」
「 どの様な性を持とうとも──── 」
「 貧しくとも、裕福でも 」「 実力があろうともなかろうとも 」
「 平等に愛を与え救いましょう。 」
「「「「 ” 平等 ” こそがこの世界の真理である 」」」」
気がつけば、その場の人達は全員が祈る様に手を組み、同じ言葉を口にしていた。
” 教会は世界の受け皿である ”
以前ヨセフ司教に教えられた言葉だ。
人は生まれた瞬間から、周りが形成する価値観に当て嵌められてそこを中心として生きていく。
王族であれば王族の。
貴族であれば貴族の。
平民であれば平民の。
下民であれば下民の。
そこがスタート地点であり、自由なはずの個人という存在に初めての抑制が掛かる。
その後は自分の能力を磨きながら、沢山の価値観に邪魔をされつつそれぞれの居場所を探すわけだが…………全員がその居場所を上手く見つけられるわけではない。
生まれ持った性質と才能が合わない者。
自分の才能が見つからない者。
努力の仕方が分からなくて苦しむ者。
頑張っても頑張っても空回りしてしまう者。
居場所が見つからず、自分が否定される場所で苦しみながら生きている人々にとって、教会は最後の砦だ。
世の全てのモノは ” 平等 ” である
その信念の元、教会はそれぞれに合った生き方をしていく事を目指し万人を受け入れる。
そして我々教会で働く者達は、その ” 平等 ” に救われ、自分たちなりの ” 平等の正義 ” を貫こうとする者達だ。
ヨセフ司教は祈る我々神官たちと街の人達を見回し、嬉しそうに笑いながら懐から青いひし形の結晶体を取り出した。
< 魔道路ポインター >だ。
< 魔道路ポインター >
ダンジョンに潜る際に使う< セーブポインター >と原理は同じ魔道具だが、それよりも大型のモノで、誰でも通れる多次元の魔道路を創り出す特殊系大型魔道具
本体は青いひし形の結晶体の形をしている
繋ぎたい場所に予め< 魔道路の欠片 >と呼ばれる小さな青い結晶の欠片を設置し、チャージされたこの魔道具を作動させる事で一瞬で移動できる魔道路を創る事ができる
大きい街には大型戦闘時に使う想定で、既にこの欠片が各所に設置されている
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